邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1988, Part.2

これは恋ではない/ピチカート・ファイヴ(1988)

ピチカート・ファイヴのアルバム「ベリッシマ」収録曲で、当時はシングルカットもされていなかったのだが、この頃の代表曲の1つとして知られる。

デビュー当時とはメンバーも音楽性も変わっていて、ボーカリストはオリジナル・ラヴとの掛け持ちとなる田島貴男であった。そして、音楽的にはスウィート・ソウルである。

「これは恋ではなくてただの痛み」「きみは天使じゃなくてただの娘」というような聴き手によっては身に積まされまくるタイプのフレーズが甘く歌われ、サザンオールスターズ「いとしのエリー」までもが引用される。

Runner/爆風スランプ(1988)

爆風スランプの12作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高4位を記録した。

デビュー当時は「ロッキング・オン」の渋谷陽一がNHK-FMでやっていた「サウンドストリート」で大きく取り上げられたり、ユニークな批評性が注目されたりもしていたのだが、次第にシリアスな楽曲が多くなっていったような印象もある。

この曲は陸上競技の競争者をテーマにしているような青春熱血路線なところが広く共感を得たようなところがあり、この頃にバンドを脱退していったベーシストの江川ほーじんのことを歌ったものだともいわれる。

個人的には映画「バタアシ金魚」で高岡早紀が演じたソノコをはじめとする浜高水泳部の面々がキャンプファイアーを前にこの曲の替え歌を歌っていたところなども、とても良かった。

GET CRAZY!/プリンセス・プリンセス(1988)

プリンセス・プリンセスの6作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高13位を記録した。

三上博史、麻生祐美、工藤静香、大江千里、鈴木保奈美、布施博などが出演したトレンディードラマ「君が嘘をついた」の主題歌である。

後によりポップな楽曲でさらに大きくブレイクするプリンセス・プリンセスだが、この曲ではよりロックバンド的な勢いの良さが感じられてとても良い。

とんぼ/長渕剛(1988)

長渕剛の20作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで5週連続通算7週1位、1989年の年間シングルランキングではプリンセス・プリンセス「Diamonds(ダイアモンド)」「世界でいちばん熱い夏」に次ぐ3位を記録した。

主演テレビドラマ「とんぼ」の主題歌であり、地方から夢と憧れを抱いて上京したが挫折した青年の心情が魂をこめて歌われている。

JUST ONE MORE KISS/BUCK-TICK(1988)

BUCK-TICKの2作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。

洋楽ニューウェイブからの影響を感じさせながらも、ポップでキャッチーな日本語ポップスとしても成立しているところがとても良い。

CDラジカセのCMソングとしてお茶の間にも流れ、後のヴィジュアル系バンドたちにも大きな影響をあたえたファッション性も魅力の1つであった。

だいすき/岡村靖幸(1988)

岡村靖幸の8作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高42位を記録した。

ホンダのNEWトゥデイという軽自動車のCMソングだったことから、「かなり可愛い車さ 海辺が見えるよもうすぐ」などと歌われたりもする。

ポップでキャッチーなラブソングなのだが、「もう劣等感ぶっとんじゃうぐらいに熱いくちづけ」といったフレーズにらしさをかなり感じる。

TRAIN-TRAIN/ザ・ブルーハーツ(1988)

ザ・ブルーハーツの6作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高5位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

テレビドラマ「はいすくーる落書」の主題歌である。「見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる」あたりの身も蓋もなさもとても良いのだが、この曲といえばやはり「弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく その音が響きわたればブルースは加速していく」であろう。

リフレインが叫んでる/松任谷由実(1988)

松任谷由実のアルバム「Delight Slight Light Kiss」収録曲でシングルカットはされていないが、プロモーションなどに取り上げられがちであった。

バブル景気でよく分からない純愛ブーム、松任谷由実も「純愛3部作」と呼ばれるアルバムをリリースしていて、この曲の「どうしてどうして僕たちは出逢ってしまったのだろう」というところなどもかなりよく知られていた。

ミュージックビデオには爽やかな美男美女のカップルが多数出演し、それらとあまり関係がない日常を送っているようなタイプの人たちにとっては、疎外感を感じさせもしていたかもしれない。

恋愛の教祖的にも語られがちだった当時の松任谷由実のすごみを実感させるにはじゅうぶんな楽曲である。