邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1984, Part.3

愛・おぼえていますか/飯島真理(1984)

飯島真理の3作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。

アニメ映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の主題歌だが、飯島真理は歌手デビュー以前からテレビアニメ版の「超時空要塞マクロス」に、リン・ミンメイ役の声優として出演していた。

アイドル的な声優の元祖のように語られがちでもあるのだが、坂本龍一プロデュースのデビューアルバム「Rose」はテクノ歌謡の名盤として知られていたり、元々ファンであったTOTOのメンバーと後に共演したりもしていた。

ミス・ブランニュー・デイ/サザンオールスターズ(1984)

サザンオールスターズのアルバム「人気者で行こう」からの先行シングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高3位のヒットを記録した。

シンセサイザーを効果的に用いたサウンドはサザンオールスターズのシングル曲としてはなかなか新しく、歌詞の内容は流行りもの好きの女性たちの軽さを批評しているようでいて、実はただ好きで仕方がないというようなものである。

収録アルバムが売れまくった後にもヒットチャートの上位にランクインし続けていたことから、コアなファン以外にも幅広く支持されていたように思える。当初はAOR的な「海」が先行シングル候補だったということなのだが、こっちにしておそらく大正解である。

そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸(1984)

大沢誉志幸のソロアーティストとしては3作目のアルバム「CONFUSION」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では最高2位を記録した。

ロックバンド、クラウディ・スカイでの活動を経て印税を前借りしての単身渡米、その後は沢田研二や中森明菜への楽曲提供で注目され、鳴り物入りでのソロデビューであった。

アルバム「CONFUSION」からは資生堂のCMソングにもなった「その気xxx (mistake)」が先行シングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高23位のスマッシュヒットを記録していたが、人気を決定づけたのはこの曲であった。

ポリス「見つめていたい」にも影響を受けたと思える楽曲で、恋人に立ち去られた悲しみがハスキーなボーカルで歌われている。日清カップヌードルのCMに使われ、どんどん人気が高まっていき、リリース翌年の2月にヒットのピークを迎えた。作詞の銀色夏生は後に詩人、エッセイストとしても人気を得る。

六本木心中/アン・ルイス(1984)

アン・ルイスの24作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高12位を記録した。

当時、夜の盛り場でカラオケで歌われるのをよく耳にした記憶もあるのだが、それはリリースの翌年以降だったような気がする。

「だけど…こころなんてお天気で変わるのさ 長いまつ毛がヒワイねあなた」とはじまる湯川れい子の歌詞は、所属事務所の後輩でもあった吉川晃司をモチーフにしたものだという。後にアン・ルイスと吉川晃司は「夜のヒットスタジオDELUXE」に出演した際にこの曲で共演し、性愛を連想させるパフォーマンスが話題となった。作曲はNOBODYで、編曲が伊藤銀次である。

1985年5月からはテレビ朝日で火曜深夜に放送されていたテレビドラマ「トライアングルブルー」のテーマソングとしても使われるようになった。当時、ブレイクの真っ只中だったとんねるずや後に男闘呼組のメンバーとして人気を得る前田耕陽、川上麻衣子、可愛かずみ、樹本由布子らが出演し、六本木などを舞台にしたゆるめの感じがとても良かった。

六本木という舞台設定も含め、バブル景気突入直前の空気感のようなものが感じられもするロック歌謡である。

Woman “Wの悲劇”より/薬師丸ひろ子(1984)

薬師丸ひろ子の4作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、「ザ・ベストテン」で最高4位を記録した。

主演映画「Wの悲劇」の主題歌で、作曲は呉田軽穂こと松任谷由実である。映画もひじょうに評価が高いのだが、主題歌の方も壮大なスケール感やドラマティックなところが人気で、作曲をした松任谷由実も他の歌手に提供した楽曲で最も好きかもしれないと発言したりしている。

恋の終わりの不安定で悲しい気分が切実に歌われているのだが、その表現力は気品ある美の領域にまで達しているといえる。

愛しのロージー/松尾清憲(1984)

松尾清憲がソロアーティストとしてリリースした最初のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高56位を記録した。

ムーンライダーズの鈴木慶一がプロデュースしたニューウェイヴバンド、CINEMAでの活動を経てリリースしたこのソロデビューシングルは、同じくムーンライダーズの白井良明が編曲を手がけている。作詞は秋元康との共作である。

スズキセルボという自動車のテレビCMやニッポン放送のラジオ番組「三宅裕司のヤングパラダイス」のテーマソングとしても使われていたのだが、個人的に初めて聴いたのはNHK-FM旭川放送局の「夕べのひととき」で、邦楽ポップソングとは思えないブリティッシュポップ的なカッコよさに度肝を抜かれた。

翌年の春、高校を卒業して東京で一人暮らしをはじめるために着いたその日に六本木WAVEでザ・スタイル・カウンシルの12インチシングルなどと共にこの曲を収録したアルバム「SIDE EFFECTS-恋の副作用-」を買って帰ったことなども懐かしく思い出される。

2023年には待望のストリーミング配信もついに解禁され、アクセスすることが容易になってめでたい。欲をいえば個人的にイントロが短いシングルバージョンの方が好ましいのだが贅沢はいえない。

飾りじゃないのよ涙は/中森明菜(1984)

中森明菜の10作目のシングルでオリコン週間シングルランキングや「ザ・ベストテン」などで1位に輝き、1985年のオリコン年間シングルランキングでは6位を記録した。

井上陽水の楽曲提供がなんといっても話題になったのだが、その成果は素晴らしいもので、まさに2つの才能の幸福な出会いというのか、それまでとはまったく異なるタイプの名曲が誕生した。

井上陽水自身もこの翌月にリリースされたアルバム「9.5カラット」でセルフカバーしたのだが、1985年のオリコン年間アルバムランキングでワム!「メイク・イット・ビッグ」や安全地帯「安全地帯Ⅲ~抱きしめたい」、サザンオールスターズ「KAMAKURA」、チェッカーズ「もっと!チェッカーズ」などを抑えて1位に輝き、新たな人気のピークを迎えた。

ふられ気分でRock’n’Roll/TOM★CAT(1984)

TOM★CATのデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで最高4位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

ポプコンことヤマハポピュラーソングコンテストや世界歌謡祭でのグランプリ獲得曲としては、おそらく最後のトップ10ヒットである。

大きなサングラスをかけてキーボードを弾きながら歌うTOMのビジュアル的なイメージにもインパクトがあったが、音楽的にはテクノ歌謡的でもありながら「たかがRock’n Roll されどRock’n Roll」などとローリング・ストーンズ的なことを歌っているところも印象的であった。

俺ら東京さ行ぐだ/吉幾三(1984)

吉幾三の8作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高4位、「ザ・ベストテン」で最高7位を記録した。

田舎が嫌なので東京に出ていくというテーマのコミックソング的な楽曲なのだが、歌い方がラップのようでもあるところが特徴である。実際にアメリカのラップミュージックからヒントを得てつくったという発言もされているようである。

個人的には高校を卒業して上京しようかというタイミングでこの曲がヒットしていて、幼いいとこからこの曲のタイトルを用いて無自覚にいじられてもいて、なかなか絶妙に微妙な心境になっていたことなどが思い出される。シングルのジャケット写真も北海道の増毛町という個人的になじみがないわけでもないところで撮影されていたようである。