邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1984, Part.2

ト・レ・モ・ロ/柏原芳恵(1984)

柏原芳恵の17作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、「ザ・ベストテン」いずれも最高8位を記録した。

アイドルポップス全盛の当時、新曲を出せば必ずヒットチャートの10位以内にランクインしていた女性アイドルの1人である。中島みゆきが提供した卒業ソング「春なのに」など、一般的によりメジャーな楽曲は他にもあるのだが、この曲はテクノ歌謡的なサウンドが当時の感覚ではかなり斬新だったことなどもあり、ここに挙げておきたいと思う。

作詞・松本隆、作曲・筒美京平の黄金コンビによる楽曲なのだが、最もインパクトが強いのは当時における最先端のデジタルシンセサイザー、フェアライトCMIを駆使しまくった船山基紀のアレンジである。

コーラスはテレビアニメ「みゆき」の主題歌「想い出がいっぱい」をヒットさせたことでも知られる、男性デュオのH2Oである。絶妙な色香を漂わせる柏原芳恵のボーカルもとても良い。

渚のはいから人魚/小泉今日子(1984)

小泉今日子の9作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで初の1位、「ザ・ベストテン」では最高4位を記録した。

「渚のはいから人魚 キュートなヒップにズキンドキン」というわけで、当時のKYON2こと小泉今日子が体現するポップなスピード感のようなものがフルに発揮されたとても良い曲である。

夏を待ちきれないテンション上がりまくりな心理状態にフィットする勢いがとても良く、ソウルフルなコーラスやシンセ音も楽しい。それでいてさらに「大きくNG 小さくOK 男の子ってすこし悪い方がいいの」なのだから、もはや言うことはない。

ペパーミント・ブルー/大滝詠一(1984)

大滝詠一のアルバム「EACH TIME」収録曲でシングルカットはされていないのだが、ラジオではわりとよくかかりがちであった。

1981年の大ヒットアルバム「A LONG VACATION」はとてもよく売れたのだがオリコン週間アルバムランキングでは最高2位だったのに対し、このアルバムは1位に輝いた。

約3年のブランクの間には途中までつくりかけていた作品の内容に不満があり、最初からやり直したりということもあったようである。音楽的にはいわゆるナイアガラサウンドというか、「A LONG VACATION」の延長線上にはあるのだが、よりふくよかになっているような気はなんとなくしていた。

「斜め横の椅子を選ぶのは この角度からの君がとても綺麗だから」など、マイルドな気障っぽさもとても良い。

もう一度/竹内まりや(1984)

竹内まりやのアルバム「VARIETY」から先行シングルとして「本気でオンリーユー(Let’s Get Married)」との両A面でリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録した。

1981年以降、アイドル歌手などへの楽曲提供は行っていたもののアーティストとしては休業していた竹内まりやのカムバックシングルでもある。それまでの竹内まりやの代表曲には他のソングライターから提供されたものも多かったのだが、「VARIETY」では全曲を作詞・作曲していた。

また、休業期間中に山下達郎と結婚したことも大きなトピックだったのだが、編曲・プロデュースやコーラスなどでがっつり関わっている。

当時、ラジオでよくかかっていたのだが、カムバックシングルに相応しい爽やかさと新しいスタートというような気分も感じられてとても良かった。

雨音はショパンの調べ/小林麻美 with C-POINT(1984)

小林麻美の8作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

1970年代にはアイドル歌手として活動していた小林麻美だが、この頃には大人のいい女的なポジショニングで認知されていて、8年ぶりのシングルとなるこの曲もそういったイメージに沿っているように思える。

イタリアのアーティスト、ガゼボ「アイ・ライク・ショパン」のカバーバージョンで、日本語詞は友人でもある松任谷由実によって提供されている。B面は90年代にカヒミ・カリィも歌うことになるジェーン・バーキン「ロリータ・ゴー・ホーム」のカバーで、日本語詞は小林麻美自身によるものである。

ファースト・デイト/岡田有希子(1984)

岡田有希子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録した。

竹内まりやが提供した楽曲で、グリコカフェゼリーのCMソングでもあった。「クラスで一番目立たない私」は、愛知県内でトップクラスの優等生だった岡田有希子のイメージにも合っていたような気がする。

初めてのデートを前にした不安な気持ちと夢見心地な気分との両方を歌詞のみならずメロディーによっても表していて、それを初々しくも正確に表現する岡田有希子のボーカルも素晴らしい。

竹内まりやによる楽曲提供はこれ以降も続き、3作目のシングル「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」で「第26回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞することになる。

プラスティック・ラヴ/竹内まりや(1984)

竹内まりやのアルバム「VARIETY」収録曲で、リミックスバージョンが12インチシングルでリリースされるが、オリコン週間シングルランキングでの最高位は88位と大きくヒットしたわけではない。

「VARIETY」はオリコン週間アルバムランキングで1位に輝くヒットアルバムとなったのだが、モノクロームのジャケット写真があらわしているように、全体的にオールディーズ的な印象が強い作品であった。

A面2曲目に収録された「プラスティック・ラヴ」はアルバムの中でもやや異色の楽曲という感じだったのだが、これが2020年代後半になるとYouTubeに非公式的にアップロードされた音源がきっかけで海外の音楽ファンの間で話題となり、シティポップリバイバルを象徴する楽曲として知られるようになる。

恋に傷ついた女性がそれを忘れるためにカジュアルでゲーム的な恋愛を繰り返すという内容の楽曲で、あえて無機質な感じで歌われているようにも思えるのだが、山下達郎が1989年にリリースしたライブアルバム「JOY」ではとてもエモーショナルにカバーされていた。

2021年にはオリジナルバージョンを収録したシングルがリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録するに至った。

COMPLICATION BREAKDOWN/佐野元春(1984)

佐野元春のアルバム「VISITORS」のA面1曲目に収録され、シングルカットされるとオリコン週間シングルランキングで7インチ盤が最高86位、12インチ盤が最高42位を記録した。

1980年のデビュー以降、ライブハウスを中心に人気を得て、大滝詠一のナイアガラ・トライアングルに参加したこともきっかけとなって、3作目のアルバム「SOMEDAY」がオリコン週間アルバムランキングで最高4位のヒット、さらにベストアルバム「No Damage(14のありふれたチャイム達)」が同ランキングで1位に輝くなど大ブレイクを果たすが、そのタイミングで単身ニューヨークに旅立つ。

約1年後、届いたアルバム「VISITORS」は現地で知り合ったミュージシャンたちとレコーディングしたもので、音楽性も大きく変わっていた。当時はまだそれほどメジャーではなく、ニューヨークのストリートカルチャーというようなイメージだったラップを取り入れているのが最も大きな特徴である。

オリコン週間アルバムランキングでは1位に輝くのだが、ファンの間でも賛否両論で、これがきっかけで離れていってしまったり、泣き出してしまう人たちまでいたようである。

それだけ新しいことをやっていたわけであり、完全に理解されてはいなかったとは思うのだが、それでも商業的に成功していたというのがとにかくすごい。先行シングルはそれでもまだそれまでの音楽性から近い方ともいえる「TONIGHT」で、オリコン週間シングルランキングで最高32位を記録していた。

夢伝説/スターダストレビュー(1984)

スターダストレビューの5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高40位を記録した。

根本要のハイトーンで澄んだボーカルとナチュラルなシンセサウンドが特徴的で、カルピスのCMソングとしても使われていた。

マイルドにシティポップ的でもあるところが当時のトレンド感に合ってはいたのだが、より人間的な温もりが感じられ、ニューミュージックにも通じるようなところがとても良い。