邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1981, Part.4

悪女/中島みゆき(1981)

中島みゆきの11作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、1982年の年間シングルランキングでは6位、「ザ・ベストテン」では最高4位を記録した。

「マリコの部屋へ電話をかけて」といきなり固有名詞からはじまる歌詞が印象的なのだが、その目的というのは「男と遊んでる芝居」であり、それ以降も恋人だと信じている男性に浮気の影がちらついているのだが去られるのが怖くて真相に迫れないなど、マイルドでカジュアルな不幸が絶妙に都会的なサウンドにのせて歌われていて素晴らしい。喫茶店のことを「サ店」と表しているようなところもかなり良い。

センチメンタル・ジャーニー/松本伊代(1981)

松本伊代のデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで最高9位、「ザ・ベストテン」では最高6位を記録した。

キャッチコピーは「瞳そらすな僕の妹」で、デビューは1981年だが音楽賞レースでは1982年の新人扱いとなったため、中森明菜、小泉今日子、早見優、堀ちえみ、石川秀美らと共に「花の82年組」の1人とされる。

フォトジェニックなビジュアルと鼻にかかったユニークなボーカルが特徴で早々に人気者になるのだが、この曲では声質がやや低めであり、「何かに誘われて」などと歌われた後に小さな「ん」が入っているように聴こえるところなどもとても良い。

そして、歌詞に「伊代はまだ16だから」と自身の名前が入っているところも印象的だった。NHKの番組に出演した際には、個人の宣伝になるという謎の理由から「伊代」のところを「わたし」に変えて歌っていた。

ダウンタウン・ボーイ/佐野元春(1981)

佐野元春の5作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングにはランクインしていない。都会で生活する若者の孤独や寂しさのようなものを、独特な言語感覚で表現した楽曲である。

アルバム「SOMEDAY」やベストアルバム「No Damage」には別アレンジのバージョンが収録された。お笑いコンビのダウンタウンが結成当時、この曲を出囃子として使っていたようだ。

個人的にはマーヴィン・ゲイの名前をこの曲の歌詞によって初めて知ったことなどが思い出される。

ラムのラブソング/松谷祐子(1981)

松谷祐子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高50位を記録した。テレビアニメ「うる星やつら」の主題歌である。

マイルドにセクシーなささやき声やくすくす笑いなどは、松谷祐子ではなく作曲・編曲者の小林泉美によるものである。ポップでキャッチーなメロディーとテクノ歌謡的なサウンドがとても良く、当時のテレビアニメ主題歌の中でも特に80年代初めの軽さを反映していたように思える。浜崎あゆみが携帯の着信メロディにこの曲を設定していたことでも知られる。

完全無欠のロックンローラー/アラジン(1981)

アラジンのデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで最高7位、「ザ・ベストテン」で最高5位のヒットを記録した。

ポプコンことヤマハポピュラーソングコンテストのグランプリ獲得曲らしからぬ、コミックソング的な作品であり、矢沢永吉のようなビッグスターを気取った自称ロックンローラーを揶揄する内容となっている。

この曲で描かれているような人たちの動機というのはおそらく女にモテたいということだと思うのだが、「完全無欠のロックンローラー」と歌われた後で、「あたいら女に無視されて」などと歌われる切なさも良い。阿波踊りからもんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」までもが引用されていたりもして、なかなか楽しい。

この曲以降はヒット曲が出ずにアラジンは解散するのだが、中心メンバーの高原茂仁はニッポン放送「ヤングパラダイス」のパーソナリティーに抜擢されたのを機に高原兄に改名し、島田紳助との交流を深め、後にヘキサゴンファミリーの羞恥心やPaboなどに提供した楽曲をヒットさせたりもする。

ウェディング・ベル/シュガー(1981)

シュガーのデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位のヒットを記録した。

洒落た感じのサウンドにのせて歌われる歌詞はかつての恋人の結婚式に招待された女性の心境をユニークに描写した内容で、特に「くたばっちまえ アーメン」のくだりにはかなりのインパクトがあった。

曲の内容が面白かったのみならず、美しいコーラスを含め、音楽性がひじょうに高かったこともヒットの要因だったかもしれない。2016年には大森靖子がシングルのカップリング曲としてカバーしたりもしている。

セーラー服と機関銃/薬師丸ひろ子(1981)

薬師丸ひろ子のデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで5週連続1位、1982年の年間シングルランキングではあみん「待つわ」に次ぐ2位、「ザ・ベストテン」では3週連続1位の大ヒットを記録した。

角川映画の女優としてすでにアイドル的な人気があった薬師丸ひろ子が赤川次郎の小説を原作とする主演作品の主題歌で満を持してレコードデビューという感じではあったのだが、元々は作曲者の来生たかおが歌う予定だったようだ。

薬師丸ひろ子が歌うことは映画の監督であった相米慎二が言い出したことらしく、来生たかおが歌ったバージョンも「夢の途中」としてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高4位のヒットを記録したものの、作詞者で来生たかおの姉でもある来生えつこは楽曲のタイトルが映画と同じ「セーラー服と機関銃」に変更されたことも含め、かなり激怒していたということである。

意識的にエモーショナルではないボーカルスタイルが当時としては新鮮であり、それが楽曲に含まれる切なさのようなものを効果的に表現しているようでもありとても良い。

2016年には続編にあたる映画「セーラー服と機関銃 -卒業-」に主演した橋本環奈によってカバーされ、オリコン週間シングルランキングで最高11位を記録している。

Soul Life/近田春夫&ビブラトーンズ(1981)

近田春夫&ビブラトーンズのとても素晴らしいアルバム「ミッドナイト・ピアニスト」に収録された楽曲である。シングルとしてリリースされた「金曜日の天使」と同じ曲だが、歌詞の内容とアレンジが少し変わっている。

「金曜日の天使」では知らない人なんか入れてもらえないぐらいの港区のディスコティックが舞台になっているのに対し、「Soul Life」ではガラ空きのディスコティックで流れているのは聴き飽きたテクノポップである。

少し前に社会現象的ともいえるレベルで巻き起こったテクノブームはこの時点ではすでに終息していて、その中心的存在であったイエロー・マジック・オーケストラは大滝詠一「A LONG VACATION」と同じ日にアルバム「BGM」をリリースするのだが、オリコン週間アルバムランキングで最高2位のヒットは記録するものの、音楽性がよりマニアックに深まっていたこともあってセールスは前作よりもかなり落ちて、オリコン年間アルバムランキングでは28位となっている(1980年の年間アルバムランキングでは2位の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」をはじめ、「増殖」「パブリック・プレッシャー」とトップ10内に3タイトルがランクインしていた)。

「金曜日の天使」「Soul Life」いずれの歌詞にも入っている「終電車だって終わっちまっただ もう始発を待つしかないだ」というフレーズは当時のディスコ通いする若者たちのリアリティーを反映していたように思える。

邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド篇)/山田邦子(1981)

山田邦子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高30位を記録した。

高校生の頃から様々な素人参加番組に出演したりしていたのだが、大学時代に出場したフジテレビ系「笑ってる場合ですよ!」の「お笑い君こそスターだ!」でチャンピオンに輝いたことがきっかけで一気にブレイクを果たした。

このシングルは明らかにその人気に便乗したものではあるのだが、シック「グッド・タイムス」を思わせる演奏にのせて、当時はまだそれほどメジャーではなかったラップを取り入れた日本のポップソングとして画期的だったような気もする。

ブレイクのきっかけとなったバスガイドネタをほとんど丸ごと盛り込んだ歌詞とスペクトラムが演奏していたというファンキーなサウンド、「かわい子ぶりっ子」というワードをポピュラーにするにあって、松田聖子の悪口をネタにしていた漫才コンビ、春やすこ・けいこと共に大いに貢献したことも含めて、とても良いレコードである。