シャンプー「トラブル」
シャンプーはロンドンの女子中等学校で同級生だったジャッキーとキャリーによって結成されたポップデュオで、デビューアルバム「ウィ・アー・シャンプー」からリードシングルとしてリリースされた「トラブル」は全英シングルチャートで最高11位のヒットを記録した。
元々はマニック・ストリート・プリーチャーズのファンジン「ラスト・エグジット」をつくったり、「リトル・ベイビー・ナッシング」のミュージックビデオに出演していたりとインディーシーンの出身であり、最初のシングルはセイント・エティエンヌのボブ・スタンレーとピート・ウィッグスが立ち上げたインディーレーベル、アイスリンクレコードからリリースしている。
ライオットガールのシーンからも影響を受けていて、パンキッシュなアティテュードとファッションセンスが特徴的であった。ブラーなども所属していたフードレコードに移籍してからは音楽性がよりキャッチーになり、そのサンプルともいえるのが「トラブル」であった。
パーティーは最高だったのだが地下鉄の終電を逃してしまい、タクシーに乗れるだけのお金もない。夜行バスを待っていても来る気配はなく、そのうち雨も降ってきた。車を盗もうかとも考えたのだが、そういえば誰も運転できなかった、というような内容がキャッチーなトラックにのせてシャウトされる。
日本では女子高校生を中心としたコギャルブームが時代をリードしていて、シャンプーは「ロンドンのコギャル」などと紹介されたりもした。「ウィ・アー・シャンプー」の全英アルバムチャートでの最高位は45位だが、オリコン週間アルバムランキングでは最高8位を記録した。1位がMr.Children「Atomic Heart」、2位がSMAP「COOL」の週である。
当時をリアルタイムで知っている人たちからしてみると、そういえばそんな人たちがいたな、というような懐古ネタレベルの可能性は高いのだが、たとえばチャーリー・XCXなどが大活躍する現在のポップシーンにその影響は受け継がれているということができる。
たとえばそのチャーリー・XCXなのだが、アルバム「サッカー」のリリース時にはシャンプーからの影響を公言していたり、MIAは「ダブル・バブル・トラブル」で「トラブル」の歌詞を引用していたり、マイリー・サイラスはグッチのキャンペーンでシャンプーの「デリシャス」をカバーしていたりもする。
スパイス・ガールズが有名にした「ガールパワー」というフレーズを、シャンプーはそれ以前からアルバムタイトルに使っていた。
そして、「トラブル」がヒットしたのと同じ年にデビューしたオアシスの再結成が大きな話題を呼んでいる2024年には、シャンプーの過去の楽曲や映像ををまとめたボックスセット「コンプリート・シャンプー」がチェリーレッドレコードからリリースされたり、46曲入りのコンピレーションアルバム「シャンプー」が配信されたりもしている。
これに際していくつかのメディアにはシャンプーの実に久々となるインタビューが掲載されていたりもするのだが、ジャッキーとキャリーが子育てを経た現在も仲良しであり、当時の日本での大人気ぶりをとても良い思い出として語っているところが好ましい。
シャンプーというデュオ名については、男の子からのデートの誘いを断る際に髪を洗っていると説明をしていたことから、学校でのあだ名がシャンプーガールだったことに由来するといわれていたのだが、最近のインタビューではでたらめだったと語られてもいる。