NewJeans ‘Get Up’ review
K-POP界でいま最も注目をあつめるガールズグループ、NewJeansが最新EP「Get Up」をリリースしたわけだが、これがとても良くて個人的にもiPhoneでリピート再生しまくっている。内容が良いのももちろんなのだが、全6曲で約12分なので聴きはじめてもわりとすぐに終わっている。それでまた頭から聴き直すことの繰り返しである。
ちなみにこのNewJeansなのだが、世間一般的に初めて楽曲が公開されてからまだ1年ぐらいしか経っていなく、にもかかわらず韓国のヒットチャートでいろいろな新記録を打ち立てたり、新人賞のようなものを獲りまくったりとかなりの活躍ぶりである。さらにはコカコーラやAppleをはじめてした国際企業やブランドの広告に起用されたり、メンバーそれぞれがシャネルなどの高級ブランドのアンバサダーに選ばれたりと、ポップ・ミュージック界のみにとどまらぬアイコン的存在として認知されがちである。
どこが特別なのかというと、楽曲とパフォーマンスがとても良いというのはもちろんのこと、なんとなくナチュラルで等身大的でありながら、個性を主張してもいるようなところがとても良いのではないかと感じられたりもしる。どこか懐かしさを感じさせもするのだが、いまどきのトレンド感がゴリゴリに抑えられてもいるようなところが様々な世代やリスナー層にアピールしているように思える。
要はコンセプトがかなりしっかりしていて、ビジュアルやSNS戦略などの点においても抜かりがなく、この辺りはK-POP業界で百戦錬磨のプロデューサー、ミン・ヒジンの手腕によるところが大きいともいえる。とはいえ、コンセプトを見事に具現化するメンバーがやはり素晴らしすぎることには間違いがない。
それで、たとえば2022年のデビュー曲「Attention」やその後の「Hype Boy」「Ditto」など、早くも名曲を生み出しすぎていて、その上、TikTokでのダンスチャレンジなども盛り上がったりするは、ファッション的にも注目されがちなど、まさしくトレンド最前線である。それで、日本でも昨年からすでに盛り上がってはいたものの、2023年に入ってやっとこさリリースされたデビューシングル「OMG」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝いている。
そして、デビューから1年目にしてリリースされたのがこの2作目のEP「Get Up」なのだが、ジャケットアートワークが「パワーパフガール」である。1990年代後半のカートゥーンネットワークでかなり盛り上がったのだが、その後でリバイバルもしていて、Z世代の間でもわりと知られてはいる。
これは単にジャケットアートワークに引用したというだけではなく、しっかりしたコラボレーションであり、EPの1曲目に収録された「New Jeans」のミュージックビデオにも、グループのメンバーが「パワーパフガールズ」化されたアニメーションが登場したりする。
1990年代のダンス・ミュージックを思い起こさせるような音楽性で、そこにいまどきのトレンド感もなんとなく反映されているのは相変わらずであり、そこが広く支持をあつめている要因でもあるのだが、今回のEPにおいては全体的によりライトでブリージィーで夏らしい感覚が強調されているようにも思える。
先行シングル的な位置づけでもあった「Super Shy」などはその特徴が生かされた最たるものであり、この絶妙な軽さがたまらなく良いな、と感じずにはいられないのである。歌詞の内容も好きな人がいるのだが、シャイすぎてうまく想いが伝えられない、というようなものでとても良い。
かと思えば次の「ETA」では心変わりであったり、恋愛感情というようなものがとても強いように思えて、実はいかに移ろいやすいかということについて歌われていたりもする。この曲はiPhone 14 Proのタイアップも付いているようで、YouTubeでNewJeans関連の動画を見ようとするとやたらと流れる。
ちなみに個人的に周囲にたまたまいるZ世代にあたる人たちはSpotifyやApple MusicよりもYouTubeプレミアムをサブスクリプションしている割合がひじょうに高く、YouTube視聴時に広告が入ることがかなり耐えられない感じにはなっているようである。
それはそうとして、この曲には「Samir’s Theme」という楽曲のホーンが効果的に引用されてもいる。これはアメリカのダンス・ミュージックのトレンドでもあるジャージー・クラブと呼ばれるジャンルのルーツにあたる、ボルチモア・ブレイクスのクラシックらしい。
NewJeansの現在までのところ最大のヒット曲である「Ditto」にもこの要素は取り入れられていて、UKガラージと共に、特に影響をあたえた音楽の1つとして認知されがちである。
「Cool With You」からはタイトルにもあるように、よりクールで大人なムードも漂いはじめ、タイトルトラックでもある「Get Up」はインタールード的な短い曲である。そして、EPの最後に収録された「ASAP」がまたとても良く、スマートフォンを通話を一旦は終わらせるのだが、またはじめてしまうようなタイプの夜の気分がヴィヴィッドに描写されている。
NewJeansは5人組のガールズグループで、メンバーの平均年齢は確か16、7歳だったはずなのだが、キュートなだけではなく、クールでトレンディーでもあるところが特徴であろう。
K-POPの歴史においては第4世代とされるわけだが、このライトでナチュラルな感じがかなり独特であり、それが間口を広くしていたり時代感覚に合っていたりもするような気はする。何はともあれ、今回のEPがNewJeansというグループの新機軸を打ち出したものであり、今後への期待をさらに高めるのみならず、2023年夏におけるポップ・ミュージックの最新型を象徴する作品であることには間違いがない。