ベストサマーソング100:Part.8

71. ‘Heavy Metal Drummer’ by Wilco (2001)

ウィルコのアルバム「ヤンキー・ホテル・フォックストロット」からシングルカットされた、グルーヴィーでブリージィーな楽曲である。

ヘヴィメタルとパンクロックのファン同士はお互いに対立し合っていたとか、そういうイメージが持たれがちだが実はそういうわけでもなかったとか、いろいろな話があるわけだが、そういったこともふまえた内容になっているような気もする。

インディーロックリスナー向けのバンドという印象がなんとなくあるのだが、この曲はポップでキャッチーでより間口が広いようにも感じられる。

72. ‘Island in the Sun’ by Weezer (2001)

ウィーザーのアルバム「ウィーザー(ザ・グリーン・アルバム)」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高31位を記録したり、最もライセンスされたウィーザーの楽曲となっている。

とはいえ、メンバー自身は実はそれほど気に入っていなかったらしく、アルバムにも収録しないつもりだったのだが、プロデューサーであるリック・オケイセックの意見によって採用されたようだ。

73. ‘California Gurls’ by Katy Perry featuring Snoop Dogg (2010)

ケイティ・ペリーのアルバム「ティーンエイジ・ドリーム」から最初のシングルとしてリリースされ、アメリカやイギリスをはじめ、いくつかの国のシングルチャートで1位を記録した。

スヌープ・ドッグのラップをフィーチャーしたポップでキャッチーなサマーソングで、ニューヨークを讃えたジェイ・Zとアリシア・キーズの「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」に対してカリフォルニア賛歌でもある。

タイトルはケイティ・ペリーがリスペクトするビーチ・ボーイズのヒット曲にオマージュを捧げてもいるが、「ガールズ」の普通ではないスペルはマネージャーがファンであったビッグ・スター「セプテンバー・ガールズ」にちなんでいる。

74. ‘Hot in Here’ by Nelly (2002)

ネリーの2作目のアルバム「ネリーズヴィル」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで1位に輝いた。

暑くなってきたので服を脱いでしまおうという、シンプルかつストレートで本能的なメッセージが機能しまくるサマーアンセムとしても卓越している。

チャック・ブラウン&ザ・ソウル・サーチャーズ「バスティン・ルース」のフレーズが引用されているのもとても良い。

75. ‘Get Lucky’ by Daft Punk featuring Pharrell Williams and Nile Rodgers (2013)

ダフト・パンクの4作目にして最後のスタジオアルバム「ランダム・アクセス・メモリーズ」から最初のシングルとしてリリースされ、本国のフランスやイギリスなど多くの国々のシングル・チャートで1位に輝き、全米シングル・チャートでは5週連続2位のヒットを記録した。

シックのナイル・ロジャースが共作、共演し、ハウスミュージックとディスコクラシックの融合が実現しているのと同時に、後のフューチャーノスタルジックなトレンドにも影響をあたえたような気がする。

76. ‘Girls & Boys’ by Blur (1994)

ブラーの3作目のアルバム「パークライフ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高5位を記録した。これはこの時点においてブラーが記録した歴代最高位であり、トップ10にランクインするのは1991年の「ゼアズ・ノー・アザー・ウェイ」以来、約3年ぶり2曲目であった。

要はそれまでは停滞していたのと、もしかすると一発屋で終わるかもしれないとさえ思われていた。それが1993年のアルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」の誇張しすぎた古き良きイギリス路線が高評価を得て復活の兆しを見せた。そして、次にリリースされたのがこのシングルであった。

ニューウェイブとディスコポップの融合とでもいうべき音楽性はブロンディ「ハート・オブ・グラス」などを思わせもしたのだが、一年前にはスーツとドクターマーチンのブーツでノスタルジックなロマンティシズムのようなものを体現していたのが、スポーティでフットワークも軽快にカジュアルセックス推奨的なポップソングを歌っているところにたまらない良さを感じたりもした。

77. ‘Alright’ by Supergrass (1995)

スーパーグラスのデビュー・アルバム「アイ・シュド・ココ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。

映画「クルーレス」のサウンドトラックにも使われた、ポップでキャッチーという形容がまさにピッタリな素晴らしい曲である。

ミュージック・ビデオにも若さがはち切れんばかりの魅力が満ち溢れていて、これを見たあのスティーヴン・スピルバーグ監督はスーパーグラスでモンキーズ的なテレビ番組を制作したいと考えオファーまでしたが、バンドはこれを断ったという。

78. ‘真夏の出来事’ by 平山三紀 (1971)

平山三紀の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録した。作詞は橋本淳、作曲・編曲の筒美京平はこの曲と朝丘雪路「雨がやんだら」で「第13回日本レコード大賞」作曲賞を受賞している。

モータウン調のソウルミュージック的なサウンドとハスキーで個性的なボーカルが絶妙にマッチした名曲で、アイドルポップスと呼ぶことができる最初のヒット曲かもしれない。

1980年代に廃盤ブームのようなものがあり、少し前にヒットした流行歌を再評価しようというようなムーブメントがあった。当時はCDではなく、まだアナログレコードの時代だったこともあり、ほんの数年前のヒット曲であってもレコードが廃盤になったまま、入手困難ということが少なくはなかった。

「真夏の出来事」はその廃盤ブームのようなものが起こった時にも、それらを代表する名曲として認識されたような気がする。個人的にも投稿した原稿を何度か載せていただいたことがある伝説のミニコミ雑誌「よい子の歌謡曲」の単行本が1983年に出版されているのだが(表紙は平山三紀、郷ひろみと共に筒美京平がそのボーカルを特に気に入っていたといわれる松本伊代!)、それに掲載「よい子の歌謡曲・名盤130選」は、「真夏の出来事」からはじまっている。

79. ‘ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマー・ビューティー計画’ by フリッパーズ・ギター (1990)

フリッパーズ・ギターのアルバム「カメラ・トーク」に収録されたボサノヴァ的な楽曲で、雑貨店のBGMにふさわしいおしゃれ感覚が特徴である。ルミネ新宿2の方にあった青山ブックセンターのすぐ近くにフリッパーズ・ギター(時々ピチカート・ファイヴなど)の音楽ばかりかけているブティックのよな店があり、そのことが「クイック・ジャパン」の読者欄に投稿されていたことなども懐かしく思い返される。

クロディーヌ・ロンジュ「フー・ニーズ・ユー」、ザ・スタイル・カウンシル「オール・ゴーン・アウェイ」などからの趣味の良い引用もさることながら、ひとりの日曜日に歯ブラシをくわえてオムレツを焼いているような男の子の日常を描写した歌詞が当時の日本のポップソングとしてはかなりエポックメイキングだったような気がする。アニエスベーのベレー帽やボーダーTシャツを好んで身につけているタイプの女子たちを中心にひじょうに人気があった。

80. ‘Got to Give It Up’ by Marvin Gaye (1977)

プライベートでの裁判費用などによって資金がひじょうに不足していたマーヴィン・ゲイは、この問題を解消するためにヨーロッパ・ツアーに出たりもしていたというのだが、ロンドンでのライブを収録した2枚組アルバムをもリリースした。この曲はそのアルバムに収録された唯一のスタジオ録音による楽曲であり、全米シングルチャートでは1位に輝く大ヒットになった。

当時、流行していたディスコミュージックをぜひというレーベルからの要望に応えた楽曲だともいわれ、ジョニー・テイラーの全米NO.1ヒット「ディスコ・レディー」に強く影響されているともいわれる。

当初のタイトルは「ダンシング・レディー」であり、実際にマーヴィン・ゲイによって何度もそう歌われてもいる。映画「ブギー・ナイト」やスパイク・リー監督のいくつかの作品など、サウンドトラックに使用されることもひじょうに多い。