ベストサマーソング100:Part.3
21. ‘若草の頃’ by カヒミ・カリィ (1995)
カヒミ・カリィのミニアルバム「LEUR L’EXISTENCE~「彼ら」の存在」に収録された楽曲である。
架空の映画サウンドトラックがコンセプトで、プロデューサーならぬ音楽監督は小山田圭吾である。「渋谷系」的なクールでスタイリッシュなムードでありながら、絶妙にオーガニックにも感じられるところが特徴である。
「私達が手をつなぐ時 すべての風景は理想へと変わる」「本当は私達 何でも出来るはずね あの虹だって飛び越えられる」といったカヒミ・カリィ自身によるわりとストレートな日本語の歌詞やハーモニカの音色、ムッシュかまやつとのデュエットであるところなどもとても良い。
22. ‘サマー・ソルジャー’ by サニーデイ・サービス (1996)
サニーデイ・サービスの5作目のシングルで、後にアルバム「愛と笑いの夜」にも収録された。
「愛しあうふたり はにかんで なんにも喋らず 見つめあう それは天気のせいさ」などと歌われる最高のサマーアンセムなのだが、発売されたのは10月25日で夏はもうすでにすっかり終わっていたのだった。
とはいえ、歌詞もメロディーも演奏も歌もとにかくすべてとても良いので、次の夏はもちろんその後もずっと聴き続けられる素晴らしい楽曲である。
「そこから先は Hey hey hey…」と結末をリスナーの想像力に委ねているところなどもとても良い。
23. ‘BABY BLUE’ by フィッシュマンズ (1996)
フィッシュマンズのとても良いアルバム「空中キャンプ」からシングルカットされ、オリコン週間シングルランキングで最高59位を記録した。
アルバムは当時のオリコン週間アルバムランキングで最高88位とそれほど売れまくったわけでもないのだが、後に邦楽ロック&ポップスの名盤として評価が定着していく。
レゲエやダブ的なトラックにのせて、「意味なんかないね 意味なんかない 今にも僕は泣きそうだよ」「このまま連れてってよ 僕だけを連れてってよ」などと切実な感じで歌われていて、それが聴く者の心を強く動かしたりもする。
24. ‘Waterfalls’ by TLC (1994)
TLCの2作目のアルバム「クレイジーセクシークール」から3作目のシングルとして1995年にカットされ、7週連続1位を記録した。年間シングルチャートではクーリオ「ギャングスタズ・パラダイス」に次ぐ2位で、3位もTLCの同じアルバムからカットされた「クリープ」であった。
1995年の夏を代表する大ヒット曲で、コンテンポラリーなヒップホップR&Bサウンドはひじょうにキャッチーでもあるのだが、歌詞は麻薬密売、貧困、エイズといったヘビーな題材を扱っていて、「激しく流れる滝を追いかけないで。慣れ親しんだ川や湖のそばにいて」と歌うメッセージソングになっている。
25. ‘It Was a Good Day’ by Ice Cube (1992)
アイス・キューブのアルバム「略奪者」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高15位、全英シングルチャートで最高27位を記録した。邦題は「サウス・セントラルの平和な日々」である。
アルバムがリリースされたのはロサンゼル市警の警官たちによる人種差別的な暴力行為とそれに対する不当な評決がきっかけで、ロサンゼル暴動が起こった年である。
激しい怒りに満ち溢れてもいるアルバムにおいて、レイドバックした感じが特徴のこの曲は、このような環境での生活における理想的な1日をテーマにしている。その条件の1つとして、仲間が誰ひとりとして死ななかったことも挙げられている。
26. ‘Be Thankful for What You Got’ by William DeVaughn (1974)
ウィリアム・デヴォーンのデビューシングルで、全米シングルチャートで最高4位、R&Bチャートでは1位を記録した。
公務員として勤務する傍らパートタイムで歌っていたということなのだが、自費でレコーディングした「ア・キャデラック・ドント・カム・イージー」という曲がスタジオのプロデューサーでMFSBのメンバーでもあったジョン・デイヴィスに見いだされ、タイトルを変えてフィラデルフィア・インターナショナルのスタジオで録音し直された。
1990年代にはマッシヴ・アタックがアルバム「ブルー・ラインズ」でカバーしたりして、日本でも「渋谷系」的な音楽リスナーなどから再評価されがちであった。
27. ‘Summer in the City’ by The Lovin’ Spoonful
夏をテーマにしたポップソングというのはひじょうに数多いわけだが、ラヴィン・スプーンフルのこの全米NO.1ヒットはけして快適ではない昼間の感じと、まったく別世界であるかのような夜の素晴らしさのコントラストをうまく用いているところがユニークである。
街の喧騒を効果音として使用しているところもとても良い。個人的には80年代半ばに偶然、FEN(日本に駐在しているアメリカ軍の人たちを対象にしたラジオ局で、日本の洋楽ファンにもひじょうに人気があった)でこの曲を聴いて、とてもカッコいいと思っていたところ、夏休みに札幌の玉光堂で買った「NOW THE SUMMER ALBUM」という2枚組コンピレーション・アルバムに収録されていて、得した気分になったことが思い出される。
28. ‘Hot Fun in the Summertime’ by Sly & The Family Stone (1969)
タイトルの通り暑い夏の楽しみについて歌われた楽曲で、全米シングルチャートでは最高2位を記録している。伝説の野外イベント「ウッドストック」に出演する少し前にリリースされたシングルであり、スライ&ザ・ファミリーストーンの存在をよりポピュラーにしたともいえる。
リラックスしたムードが特徴的で、夏の定番ソングとして挙げられることも多い。予定していたオリジナルアルバムが完成しなかったため、アルバムでは1970年の「グレイテスト・ヒッツ」に初収録された。
29. ‘Saturday in the Park’ by Chicago (1972)
シカゴのアルバム「シカゴV」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位を記録した。
バンドのメインソングライターでこの曲ではピーター・セテラと共にリードボーカルをとっているロバート・ラムはアメリカの建国記念日である7月4日にニューヨークのセントラルパークでスティールドラム奏者やシンガー、ダンサー、ジャグラーなどに囲まれ、ひじょうに楽しいひとときを過ごしたのだが、その時の体験がこの曲のベースになっている。
日本ではオリコン週間シングルランキングで最高22位を記録し、2001年にはトヨタ自動車の高級セダン、ブレビスのCMで使われたりもしていた。
30. ‘Groovin’’ by The Young Rascals (1967)
ガレージロックとリズム&ブルースを融合させたような音楽をやっていて、「グッド・ラヴィン」で全米シングルチャートの1位も記録していたヤング・ラスカルズがまったくスタイルを変えて、コンガドラム、ハーモニカ、鳥の鳴き声の効果音などをフィーチャーした楽曲で、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高8位のヒットを記録した。
メンバーのフェリックス・キャバリエールが当時のガールフレンドにインスパイアされ、彼女と過ごす日曜日の午後のリラックスしたムードを表現した楽曲である。レーベルは当初、音楽スタイルがそれまでと大きく変わっていることを危惧し、この楽曲をシングルでリリースすることに懐疑的だったのだが、結果的に大ヒットを記録し、サマーソングの定番としても聴かれ続けることになった。