アークティック・モンキーズの名曲ベスト10 【Artist’s Best Songs】

アークティック・モンキーズは2002年にイギリスのシェフィールドで結成され、デモ音源を焼いたCD-Rをライブ会場で無料で配布したり、インターネットでの配信を有効に使うなどして知名度を上げていった。ドミノ・レコーズと契約し、2005年にシングル「アイ・ベット・ユー・ルック・グッド・オン・ザ・ダンスフォロア」をリリースすると、全英シングル・チャートで初登場1位に輝き、大いに話題になった。続くシングル「ホエン・ザ・サン・ゴーズ・ダウン」、これら2曲も収録したデビューアルバム「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」も初登場1位、イギリスでは最も速く売れたデビューアルバムの記録を更新する。その後、音楽性は変化していくのだが、「フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー」「ハムバグ」「サック・イット・アンド・シー」「AM」「トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ」と2018年までにリリースしたオリジナルアルバム計6作はすべて全英アルバム・チャートで1位に輝いている。そして、2022年10月21日には約4年ぶりとなる待望のアルバム「ザ・カー」がリリースことになっている。今回は「トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ」までのアークティック・モンキーズの楽曲から、これは特に名曲なのではないかと思える10曲をカウントダウンしていきたい。

10. Four Out of Five (2018)

アークティック・モンキーズの6作目のアルバム「トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高18位を記録した。アルバム自体がそれまでのいわゆるギターロック的な音楽性から大きくかけ離れたものであり、収録曲はアレックス・ターナーによってピアノで作曲されたという。ロックバンドとしての新境地を見せつけたアルバム「AM」の次がこれということで、戸惑いを覚えるリスナーも少なくはなかったが、ソングライティングのクオリティーはひじょうに高いうえに、他のバンドがほとんどやっていないユニークな音楽性でありながら、メインストリームでしっかり売れてしまうというところがかなりすごいと感じさせた。この曲はアルバム収録曲の中でもそれまでの作品に近いタイプであり、それだけにユニークさが際立っているともいえる。

9. The Hellcat Spangled Lalalala (2011)

アークティック・モンキーズの3作目のアルバム「ハムバグ」はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムがプロデュースしたこともあり、サウンドがよりハードでヘヴィーになったような印象もあった。これはロックバンドとしての進化でもあったのだが、一方でそれまでの良いところがやや失われもしたのではないか、という意見もあった。そして、次のアルバム「サック・イット・アンド・シー」には原点回帰的な感じもあって、後にあの素晴らしい「AM」を生み出すプロセスにおいて、必要不可欠な作品だったようにも思える。アルバムアートワークもとてもシンプルであり、音楽の中身で勝負という感じがしてとても良かった。アルバムから2作目のシングルとしてカットされたこの曲は全英シングル・チャートにはランクインしなかったが、キャッチーなインディーポップという感じでとても良い。

8. Fake Tales of San Francisco (2005)

アークティック・モンキーズがドミノ・レコーズと契約する以前から、ライブではひじょうに人気があった曲で、自主制作のEP「ファイヴ・ミニッツ・ウィズ・アークティック・モンキーズ」の後で、デビューアルバム「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」にも収録された。バンドが活動の初期において、いかにイメージを形成していくかというようなことについて、皮肉も交えて歌われていて、バンドとしてのアイデンティティー確立についてのメッセージ性も感じられる。

7. Cornerstone (2009)

アークティック・モンキーズの3作目のアルバム「ハムバグ」から2作目のシングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートでは最高94位を記録した。サウンドがよりハードでヘヴィーになったような印象もあったアルバム「ハムバグ」において、この曲はわりとメロディアスであり、アレックス・ターナーのソングライターとしての成長が特に感じられた。アレックス・ターナーがカセットレコーダーとマイクを持ちながらカメラに向かって歌うミュージックビデオも印象的である。

6. When the Sun Goes Down (2006)

アークティック・モンキーズのデビューアルバム「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで2曲連続1位に輝いた。当時、こういったタイプのシンプルなインディーロックが全英シングル・チャートの上位にランクインすること自体が快挙ともいえ、アルバムに対しての期待はひじょうに高まっていった。勢いのある若手インディーロックバンドではあるのだが、売春婦と客がいる風景などを楽曲のテーマにしているというあたりが、只者ではなさを感じさせもした。

5. Fluorescent Adolescent (2007)

アークティック・モンキーズの2作目のアルバム「フェイヴァリット・ワースト・ナイトメア」から2作目のシングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高5位を記録した。アレックス・ターナーが当時の恋人であったジョアンナ・ベネットと一緒に宿泊していたホテルの部屋で書いたというこの曲は、年を取った女性が若かりし頃を思い出し、ノスタルジーに浸るというセンチメンタルな内容になっている。当時まだ20歳そこそこのアレックス・ターナーがこのような叙情的な楽曲をつくっていた、というのもまたすごいことである。

4. R U Mine? (2012)

アークティック・モンキーズのデジタル・ダウンロード・シングルとして2012年2月27日にリリースされ、全英シングル・チャートで最高23位を記録した。それまでの音楽性よりもより骨太なサウンドになり、ロックバンドとしてのサウンドでありながらヒップホップやR&Bからの影響も感じられる。アークティック・モンキーズの音楽はこれからどのようになっていくのだろう、と期待をいだかせた楽曲であり、後にアルバム「AM」にも収録された。

3. A Certain Romance (2006)

アークティック・モンキーズのデビューアルバム「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」は2006年1月23日にリリースされると、全英アルバム・チャートで初登場1位に輝き、音楽雑誌のレヴューなどでも大絶賛されていることがひじょうに多かった。全英NO.1ヒットシングルを2曲収録もしているのだが、相当数のファンやリスナーが最も良い曲と評価しがちなのが、アルバムの最後に収録されたこの曲であった。生まれ育った地元に対する様々な感情と、大人になることなどについて歌われてもいるこの曲には、この当時のアークティック・モンキーズのヴィヴィッドにモダンでもありながらオーセンティックでもあるような魅力が凝縮されているように感じられる。


2. Do I Wanna Know? (2013)

アークティック・モンキーズの5作目のアルバム「AM」からの先行シングルで、全英シングル・チャートで最高11位を記録した。通常、アークティック・モンキーズのデビューアルバム「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」ぐらい衝撃的かつ素晴らしいアルバムをリリースしたバンドは、そのキャリアにおいてそれに匹敵するレベルのアルバムを二度とは出せない場合がほとんどだと思うのだが、このアルバムによってアークティック・モンキーズは数少ない例外の1つになったともいえる。他のジャンルのサウンドやリズムを取り入れたのではなく、あくまでもロックバンドというフォーマットのまま、この時代ならではの必然性が感じられる最新型を実現したように思える。

1. I Bet You Look Good on the Dancefllor (2005)

アークティック・モンキーズのデビューシングルで、全英シングル・チャートで初登場1位に輝いた。ミュージックビデオの冒頭で、アレックス・ターナーはカメラに向かって「Don’t believe the hype」、つまり誇大広告を信じるなというようなことを言うのだが、それからバンドはカッコいいとしか言いようがない演奏を披露する。ミュージックビデオではあるのだが、ライブ音源で収録されている。この時点ですでに話題にはなっていたのだが、どんなものかといざミュージックビデオを見てみたところ、派手なギミックも仕掛けもない、良い意味でただのロックバンドである。それがとにかくとても素晴らしく、これこそが現在のポップなのだと強く感じさせられたのであった。