2024年間ベストソング50: 30-21

30. MJ Lenderman, ‘She’s Leaving You’

アメリカのシンガーソングライター、M・J・レンダーマンのアルバム「マニング・ファイアワークス」からリードシングルとしてリリースされたメランコリックでありながらアンセミックなインディーロックで、中年の危機を浮気によって乗り越えようとするのだが、それが発覚してしま窮地に立たされる男性の悲哀をテーマにしている。

29. Taylor Swift, ‘But Daddy I Love Him’

テイラー・スウィフトのアルバム「ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント」に収録されたカントリーポップ的なバラードで、自身のキャリアにおけるルーツに回帰したようでもあるのと同時に、絶妙なトレンド感も兼ね備えた楽曲である。ディズニーアニメ映画「リトル・マーメイド」から引用したタイトルを持つこの楽曲でテイラー・スウィフトは、私生活での恋愛についてとやかく言ってくるメディアなどに対して反撃を試みているようである。

28. Waxahatchie, ‘Right Back to It (feat. MJ Lenderman)’

アメリカのシンガーソングライター、ワクサハッチーのアルバム「タイガーズ・ブラッド」からリードシングルとしてリリースされたM・J・レンダーマンのデュエットソングで、長年の浮き沈みを経て熟成されていくタイプの恋愛観をテーマにしている。これはカントリーデュエットソングの伝統に則ったものでもある。ボートに乗りながら歌っているシーンが収録されたミュージックビデオは、レモンヘッズによるサイモン&ガーファンクル「ミセス・ロビンソン」のカバーバージョンのビデオにインスパイアされている。

27. Beyoncé, ‘Bodyguard’

ビヨンセのアルバム「カウボーイ・カーター」に収録された楽曲で、パートナーにとってのボディガード的な存在でありたいという深い愛情がフリートウッド・マックをも彷彿とさせるソフトロック的なdサウンドにのせて歌われている。「ボディガード」というタイトルから思い浮かべるのは1990年代のホイットニー・ヒューストン主演映画で、サウンドトラックから大ヒットした「オールウェイズ・ラヴ・ユー」のオリジナルはドリー・パートンである。「カウボーイ・カーター」でビヨンセはドリー・パートン「ジョリーン」をカバーしているのみならず、「ドリー・P」という楽曲ではドリー・パートン本人とコラボレートしている。

26. Fontaines D.C., ‘Starburster’

アイルランドのインディーロックバンド、フォンテインズD.C.のアルバム「ロマンス」からリードシングルとしてリリースされた楽曲で、インディーロックではあるのだがヒップホップの手法が用いられてもいる。中心メンバーのグリアン・チャッテンがロンドンのセントパンクラス駅でパニック発作に襲われた経験にインスパイアされていて、不安や恐怖の感覚が効果的に表現されている。

25. Mk. gee, ‘Alesis’

アメリカのシンガーソングライター、Mk. geeのデビューアルバム「トゥー・スター&ザ・ドリーム・ポリス」に収録された楽曲で、ローファイでありながら不思議なポップ感覚も感じられ、実存的な逡巡や現状から脱することへの希求のようなものがエモーショナルに歌われている。

24. GloRilla, ‘TGIF’

アメリカのラッパー、グロリラのデビューアルバム「グロリアス」からリードシングルとしてリリースされた楽曲で、最初にツアー中にメンバーと盛り上がっている断片的な動画を公開した時点で話題となり、TikTokのダンス動画でも広く使われた。タイトルは「Thank God It’s Friday」の略で、自身の成功を誇示したりアンチをマイルドに挑発したりもするご機嫌なパーティーチューンちおなっている。

23. Tyla, Gunna, and Skillibeng, ‘Jump’

南アフリカはヨハネスブルク出身のシンガー、タイラのデビューアルバム「タイラ」からシングルカットされたクラブアンセムで、アメリカのラッパー、ガンナとジャマイカのダンスホールアーティスト、スキルベリングをフィーチャーしている。アフロポップ、ダンスホール、R&Bといった様々なジャンルが融合した、とてもユニークなポップソングになっている。

22. FKA twigs, ‘Eusexua’

FKAツイッグスが2025年リリース予定のアルバムからリードシングルとして発表した楽曲で、タイトルは「すべてが邪魔をしなくなり、頭の中のすべてが完全に空っぽになり、心が高揚する」感覚を意味する。プラハのアンダーグラウンドレイブシーンでの体験にインスパイアされた楽曲であり、催眠的なシンセサウンドからダンスビートへと展開していく。

21. The Cure, ‘Alone’

ザ・キュアーの実に16年ぶりとなるアルバム「ソングス・オブ・ア・ロスト・ワールド」の1曲目に収録され、リードシングルとしてもリリースされた楽曲である。約3分半にわたる重苦しいのだがポップでもある演奏に続いて、ロバート・スミスは「これは私たちが歌うすべての歌の終わりです。火は燃え尽きて灰になり、星は涙で暗くなりました」などと歌いはじめる。孤独で荒涼とした心象風景が実に美しく表現されていて、このような楽曲はおそらくザ・キュアーにしかつくりえない。