洋楽ロック&ポップス名曲1001:1999, Part.1
Eminem, ‘My Name Is’
エミネムのアルバム「ザ・スリム・シェイディ・LP」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高36位、全英シングルチャートでは最高2位を記録した。
コマーシャルなポップソングに対する批評的なパロディーでありながら、実際にヒットしてポップソングとして機能もしてしまうという痛快な楽曲である。
当初はよりホモフォビックな歌詞を含んでいたが、イギリスのシンガー・ソングライター、ラビ・シフレが自身の楽曲のサンプリング使用を許可する条件として、変更を要求した。
歌詞ではナイン・インチ・ネイルズ、スパイス・ガールズ、パメラ・アンダーソンに言及し、ミュージック・ビデオでは当時のビル・クリントン大統領やその他、話題の人物たちに扮するなど、トリックスター的なエンターテイメントを提供するポップ・アイコンとして、エミネムの存在を大衆に知らしめた楽曲である。
TLC, ‘No Scrubs’
TLCのアルバム「ファンメイル」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートでは最高3位を記録した。
タイトルにも入っている「scrub」とは、自分ではイケていると思って自惚れているようだが、実は何も持っていない男のことだとまずははじめに説明された上で、いろいろ痛烈に批判されていく。この曲がリリースされた頃には一部で通じるスラングだったのだが、この曲が大ヒットしたことにより広く知られるようになったようだ。
ハイプ・ウィリアムスが監督したミュージックビデオも未来的にクールでとても良い。
Blur, ‘Tender’
ブラーのアルバム「13」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
デーモン・アルバーンがエラスティカのジャスティーン・フリッシュマンと破局したことによるダウナーな気分を反映した、哀切きわまるバラードであり、ゴスペル隊によるソウルフルなコーラスやギタリスト、グレアム・コクソンのソロボーカルパートなども印象的である。
Moloko, ‘Sing It Back (Boris Musical Mix)’
モロコのアルバム「アイ・アム・ノット・ア・ドクター」からシングルカットもされた楽曲をドイツの音楽プロデューサー、ボリス・ドクルゴッシュがリミックスし、全英シングルチャートで最高4位のヒットを記録した。
ニューヨークのクラブで開催されていたDJパーティー「ボディ・アンド・ソウル」の熱気にインスパイアされた楽曲で、クラブミュージック的な感覚とポップソングとしての強度が高いレベルで両立しているように感じられる。イケイケ気味でもありながら、ボーカルとメロディーに切なさがにじんでいるようなところがとても良い。
レーベルはトッド・テリーによってリミックスされたバージョンをリリースしようとしていたのだが、メンバーがこちらの方を熱望し、リスナーも支持するという結果になった。
Aphex Twin, ‘Windowlicker’
エイフェックス・ツインのシングルで、全英シングルチャートで最高16位を記録した。
アンビエント・テクノやドラムンベースなど様々なタイプの電子音楽を生み出す天才アーティストであり、契約金で装甲車を購入するなどユニークな行動で知られるが、この曲ではヒップホップ的なブレイクビーツやセクシーなボイスサンプルのようなものを再構築するなどして、またしても新境地を切り拓いている。
アートワークでは水着を着た女性の体にエイフェックス・ツインの顔を合成するなどインパクトがひじょうに強いことをやったり、ミュージックビデオはやはり同じ路線で当時のギャングスタラップのビデオをパロディー化したようなものになっている。
Backstreet Boys, ‘I Want It That Way’
バックストリート・ボーイズのアルバム「ミレニアム」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高6位、イギリスなど25カ国以上のシングルチャートで1位を記録した。
このミッドテンポのラブバラードによって、バックストリート・ボーイズの人気はアイドル的なものからより一般大衆的なものへと広がっていった。
様々なアーティストによってカバーされている他に、ミュージックビデオもパロディー化されがちである。
アコースティックギターのアルペジオリフはレコーディングセッションの最後の方になって付け加えられたようだが、メタリカ「ナッシング・エルス・マターズ」にインスパイアされているという。
Basement Jaxx, ‘Red Alert’
イギリスのエレクトロニックミュージックデュオ、ベースメント・ジャックスのデビューアルバム「レメディ」から最初のシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高5位、アメリカではビルボードのホットダンスミュージック/クラブプレイチャートで1位を記録した。
パーラメントやファンカデリックといったPファンクグループからの影響をモダンにアップデートしたかのようなファンキーなサウンドが大いに受けて、批評家から高く評価されがちだったのみならず、アルバムが全英チャートで1位を記録するなど、大衆音楽としても広く支持されていた。