洋楽ロック&ポップス名曲1001:1998, Part.4
Jay-Z, ‘Hard Knock Life (Ghetto Anthem)’
ジェイ・Zのアルバム「vol.2...ハード・ノック・ライフ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高15位、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
ミュージカル「アニー」の挿入歌「ハードノックライフ」をベースにしていて、オリジナルは孤児が困難な状況を乗り越えていく内容だが、この曲ではジェイ・Zがゲットーでの生活からいかに大成功を収めるに至ったかについて語っている。
ヒップホップファンの間ではすでにひじょうに人気があったジェイ・Zだが、この楽曲はより幅広いリスナーにまでアピールし、その知名度を上げていくことになった。
Britney Spears, ‘…Baby One More Time’
ブリトニー・スピアーズのデビューシングルで、アメリカやイギリスをはじめ各国のシングルチャートで1位を記録した。
個性的でエモーショナルなボーカル、キャッチーでありながらマイルドにエッジが効いているサウンド、ティーンエイジャーの苦悩というポップミュージックの定番ともいえるテーマなどを特徴とする、完璧なポップソングである。
タイトルや歌詞に「hit me」というフレーズが入っていることからドメスティックバイオレンスを連想させるという指摘もあるのだが、実際には精神的な状態を表現したものであり、作詞作曲者のマックス・マーティンがスウェーデン人だったことにより、ニュアンス的な齟齬が生まれたのではないかともいわれたりはしている。とはいえ、これがまたフックとして効果的に機能したということもできる。
ハイスクールの制服を着て歌い踊るミュージックビデオには他の案もあったのだが、ブリトニー・スピアーズ自身のアイデアによってこうなったようである。
Cher, ‘Believe’
シェールのアルバム「ビリーヴ」からリードシングルとしてリリースされ、23カ国以上のシングルチャートで1位を記録した。アメリカやイギリスでは年間1位にも輝く大ヒットとなった。
オートチューンを効果的に使用したアップリフティングなダンスポップで、失恋の痛手から立ち直ろうとするポジティブな歌詞も特徴である。
オートチューンは元々、ボーカルを修正することを目的とするソフトウェアだが、これをエクストリームな設定にすると独特な効果をもたらすことがこの曲の大ヒットによって広く知られるようになり、このような使用法がポピュラーになっていった。
この曲がヒットした時点でシェールは52歳であり、アメリカとイギリスにおいてシングルチャートで1位を記録した最年長の女性アーティストだったのだが、後にアメリカではブレンダ・リー「ロッキン・アラウンド・ザ・ツリー」、イギリスではケイト・ブッシュ「神秘の丘」といういずれもリバイバルヒットによって、記録が破られることになる。
Fatboy Slim, ‘Praise You’
ファットボーイ・スリムのアルバム「ロングウェイ・ベイビー!!」からシングルカットされ、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高36位を記録した。
カミール・ヤーブロウ「テイク・ヨー・プレイズ」をはじめ、オーディオメーカーのデモンストレーション用アルバム、ディズニーの「イッツ・ア・スモール・ワールド」、アニメシリーズ、スティーヴ・ミラー・バンド、トム・フォガティなど、様々なレコードからのサンプリングが使用されている。
スパイク・ジョーンズとロマン・コッポラによるミュージックビデオは架空のダンス集団によるフラッシュモブ的なパフォーマンスをフィーチャーしたユニークなもので、MTVビデオ・ミュージック・アワードではいくつかの賞を受賞している。
New Radicals, ‘You Get What You Give’
ロサンゼルス出身のオルタナティヴロックバンド、ニュー・ラディカルズの唯一のアルバム「ブレインウォッシュ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高36位、全英シングルチャートで最高5位を記録した。
音楽的にはビリー・ジョエルやダリル・ホール&ジョン・オーツといった当時のオルタナティブロック的な価値観からするとそれほどクールではないと見なされがちなタイプのアーティストたちのヒット曲にも通じる、ポップでキャッチーなところが特徴ではあるのだが、それでいて歌詞にはシニカルなメッセージが込められてもいる。
U2のジ・エッジが最も嫉妬する曲として挙げ、アメリカ大統領に就任したジョー・バイデンが脳腫瘍で亡くなった息子が生前によく口づさんでいた曲として思い入れがあり、就任式で演奏してもらったことなどでも知られる。また、状況に応じて友人だったり敵だったりするような相手を意味する「フレネミーズ」という単語が初めて使用されたヒット曲でもある。
ショッピングモールのペットショップから動物を逃がしまくるミュージックビデオも印象的である。