洋楽ロック&ポップス名曲1001:1997, Part.3

Radiohead, ‘Paranoid Android’

レディオヘッドのアルバム「OKコンピューター」から最初のシングルとしてカットされ、全英シングルチャートで最高3位を記録した。

6分27秒とシングル曲にしては長めであり、レーベルは短縮したシングルバージョンの制作を要望したが、バンドはそれを拒んだ。

いくつかの楽曲のアイデアを繋ぎ合わせたような構成はビートルズ「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」を参考にしてもいるのだが、ギタリストのエド・オブライエンはクイーン「ボヘミアン・ラプソディー」とピクシーズの音楽をかけ合わせたようなものを狙ったとも語っている。

アルバムタイトルはSFコメディ小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」からの引用であり、全体的にテクノロジーの進歩と現代社会における人々の疎外感などがテーマになっている。

Radiohead, ‘Karma Police’

レディオヘッドのアルバム「OKコンピューター」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

前世での行いによって運命が左右されるという考えから、レディオヘッドのメンバー間で誰かが良くない行いをするとカルマ警察に捕まると警告し合うようになり、そこから発展した楽曲のようである。

ジョナサン・クレイザーが監督したミュージックビデオは乗っている車が燃やされてしまう過激な内容が高く評価されたが、元々はマリリン・マンソンに提供しようとして却下されたものだという。

現代人の疎外感の大きな要因の1つになっていると思われる、企業文化に対する批評を含んでいるともいわれる。

Radiohead, ‘No Surprises’

レディオヘッドのアルバム「OKコンピューター」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高4位を記録した。

ビーチ・ボーイズ「ペット・サウンズ」に影響されたというグロッケンの音色やイントロから繰り返されるインストゥルメンタルのフレーズがひじょうに印象的であり、仕事がゆっくりと私を殺していくというような暗い内容が優しいメロディーにのせて歌われている。

グラント・リーが監督したミュージックビデオは、トム・ヨークがかぶっているヘルメットの中にどんどん水が入っていき、息苦しくなっていくという現代社会の生きづらさを象徴するようなものになっていく。

Radiohead, ‘Let Down’

レディオヘッドのアルバム「OKコンピューター」収録曲で、シングルカットはされていないのだが、ひじょうに人気と評価が高い。実はこの曲が最初のシングルに予定されていたのだが、ミュージックビデオの出来が気に入らずに見送られたという経緯もあったようである。

プロモーション用のシングルは制作されたこともあり、全米モダンロックトラックチャートでは最高29位を記録している。

トム・ヨークがパブにいるときにボトルにしがみついている人々の姿を見て、そこに最も空虚な感情や失望感のようなものを感じたことがこの曲を書くきっかけになったようである。

ライブでの再現が難しいため、演奏される機会も少ないのだが、まったくされていないというわけでもない。

Spiritualized, ‘Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space’

スピリチュアライズドのアルバム「宇宙遊泳」の1曲目に収録されたタイトルトラックであり、アルバム全体と同様にスペースロックやネオサイケデリアなどと評される音楽性が特徴である。

タイトルはヨースタイン・ゴルデルの哲学小説「ソフィーの世界」に由来し、ジャケットアートワークは医薬品のパッケージを模したものであった。

元々はエルヴィス・プレスリー「好きにならずにいられない」の一部を含んでいたのだが、権利上の問題からその部分を省いたバージョンに差し替えられ、その後に和解が成立して元のバージョンが収録されるようになった。

レディオヘッド「OKコンピューター」、ザ・ヴァーヴ「アーバン・ヒムス」などと共に、この年の年間ベストアルバムのリストで上位に選ばれることが多く、イギリスのインディーロックオーディエンスがブリットポップの狂騒からよりシリアスな表現を求めはじめているようなムードを感じさせた。

The Verve, ‘Bitter Sweet Symphony’

ザ・ヴァーヴのアルバム「アーバン・ヒムス」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位、全米シングル・チャートで最高12位を記録した。

ブリットポップのバンドともされているが、当初はスウェードなどと共にネオ・グラムとしてくくられそうになり、見事に盛り上がらなかった。当初はザ・ヴァーヴではなくヴァーヴというバンド名だったが、ジャズの名盤の数々やヴェルヴェット・アンダーグラウンドのレコードなどを出していたレーベルのヴァーヴからクレームがついて、ザ・ヴァーヴになった。

1995年にメンバー間の確執から一旦は解散するが、やはりこのメンバーが良いということになり、再結成して最初のシングルである。美しいストリングスにのせて、かつてはマッド・リチャードなどと呼ばれることもあり、オアシス「キャスト・ノー・シャドウ」のモデルにもなったリチャード・アシュクロフトが人生について深いことを歌っていて、ヒットした上に評価もひじょうに高い。

このストリングスがローリング・ストーンズ「ラスト・タイム」をカバーしたインストゥルメンタルだったことから、この曲が売れたり使用されたりする度に多額の支払いが生じることになった。この曲においてリチャード・アシュクロフトは生計を立てるために金の奴隷になって死んでいく、というようなことも歌っている。

リチャード・アシュクロフトが人混みの中を気にせずどんどん歩いていくミュージック・ビデオも、ひじょうに印象的である。この曲とマッシヴ・アタック「アンフィニッシュド・シンパシー」はタイトルが少し似ていなくもないが、偶然なのかミュージックビデオも道を1人でずっと歩いていくという点においてよく似ているといえる。

Echo & the Bunnymen, ‘Nothing Lasts Forever’

エコー&ザ・バニーメンのアルバム「エヴァーグリーン」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

4年間の再結成を経て再結成してから最初のシングルとなったこの美しく壮大なバラードは、ヒットした上に批評家からも高く評価され、その健在ぶりを印象づけた。

隣のスタジオでレコーディングをしていたオアシスのリアム・ギャラガーがバッキングボーカルとハンドクラップで参加している。