洋楽ロック&ポップス名曲1001:1997, Part.1
White Town, ‘Your Woman’
ホワイト・タウンのアルバム「ウィメン・イン・テクノロジー」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高23位を記録した。
イギリスの音楽アーティスト、ジョティ・プラカシュ・ミシュラのソロプロジェクトであり、この楽曲はビング・クロスビー「マイ・ウーマン」をベースにしていて、映画「黄金の雨」のサウンドトラックに収録されたレイ・ノーブル・オーケストラのボーカリスト、アル・ボウリーによるバージョンをサンプリングしている。
絶望的な恋の終わりがテーマになっているのだが、男性アーティストであるジョティ・プラカシュ・ミシュラが女性の視点から歌っているのが特徴であり、人間とは性的な存在であるため、愛や欲望が高尚な理想と混じり合ったときには偽善が生じがちである、というようなメッセージが込められてもいる。
Blur, ‘Beetlebum’
ブラーのアルバム「ブラー」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで1位に輝いた。
ブリットポップの狂騒が落ち着きはじめていた頃にリリースされたこの曲はダークでダウナーな気分に支配されていて、音楽的にはアメリカのオルタナティヴロックから影響を受けている。
ビートルズ的ともいえるメロディーが美しくもあるのだが、基本的にはデーモン・アルバーンが常用していたヘロインについて歌われていて、タイトルもカブトムシを追いかけると表現される特定の吸い方に由来している。
Daft Punk, ‘Around the World’
ダフト・パンクのデビューアルバム「ホームワーク」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高5位、全米シングルチャートで最高61位を記録した。
ギ=マニュエル・ド・オメン=クリストとトーマ・バンガルテルによって結成されたフランスの電子音楽デュオで、ロボットのようなヘルメットを被っているのが特徴である。ユニット名はかつてフェニックスのローラ・ブランコウィッツらと結成していたダーリンというバンドがステレオラブのオープニングアクトを務めた際に、「メロディ・メイカー」で「a daft punky thrash」と酷評されたことに由来する。
テクノポップとハウスミュージックとを融合したようなユニークなサウンドにのせて、電子的に加工されたボーカルがタイトルの「アラウンド・ザ・ワールド」を144回繰り返し、それが歌詞のすべてである。
ミシェル・ゴンドリーが監督したミュージックビデオでは、様々なサウンドを表現するキャラクターが登場して、曲に合わせて輪の中を動き回るという未来的なものであった。
Nick Cave & The Bad Seeds, ‘Into My Arms’
ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズのアルバム「ボートマンズ・コール」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高53位を記録した。
ピアノとベースのみを伴奏として歌われる大人のラヴバラードで、メランコリックな歌詞はニック・ケイヴの実生活における恋人との破局を反映しているともいわれる。
ニック・ケイヴはこの曲のメロディーをリハビリ中に教会からの帰り道で思いつき、施設に帰ってから歌詞を書いたという。
友人でもあったイン・エクセスのマイケル・ハッチェンスの葬儀でも歌われたが、その間は録画しているカメラを止めるよう要求をしていた。
Blur, ‘Song 2’
ブラーのアルバム「ブラー」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高2位、全米モダンロックトラックチャートで最高6位を記録した。
デーモン・アルバーンは当初、よりスローな楽曲として書いていたのだが、グレアム・コクソンのアイデアでスピードアップしてみたところ、「Whoo-Hooo」というフレーズも印象的なパンキッシュで即効性の高いモダンクラシックが誕生した。
アルバムに収録するかどうかさえ迷っていたということなのだが、結果的にブラーで最もポピュラーな楽曲の1つになった。
Elliott Smith, ‘Between the Bars’
エリオット・スミスのアルバム「イーザー/オア」の収録曲で、オーケストラバージョンが映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のサウンドトラックに収録された。
オーガニックなサウンドと暖かみのあるボーカルが美しいこの楽曲は、ラヴソングのように聴こえなくもないのだが、実際にはアルコール依存症の告白であり、それはエリオット・スミスのリアルな現実を反映してもいた。
オルタナティブロックバンド、ヒートマイザーで活動した後、ソロアーティストとして高い評価を得るのだが、重度のアルコール依存と抗うつ薬を服用してもいたエリオット・スミスは、2003年に胸に負った2箇所の刺し傷が原因で34歳の若さにしてこの世を去ることになる。
Bran Van 3000, ‘Drinking in L.A.’
カナダ出身の音楽グループ、ブラン・ヴァン3000のデビューシングルで、本国でヒットした後に全英シングルチャートで最高36位を記録するのだが、1999年にはローリングロックビールのCMソングとして使用されたのを機に再リリースされ、最高位を3位に大きく更新した。
中心メンバーのジェームス・ディ・サルヴィオがロサンゼルスで映画を撮ろうとしていたのだが、それに飽きてクラブに行ったりDJをやったりしているうちにレコードをつくることになった、というようなことが歌われている。
音楽的にはラウンジテイストも入ったクラブミュージックという感じであり、キッチュなリゾート感覚のようなものが心地よかったりもする。