洋楽ロック&ポップス名曲1001:1974

Joni Mitchell, “Help Me”

ジョニ・ミッチェルのアルバム「コート・アンド・スパークス」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高7位を記録した。

トム・スコット率いるL.A.エクスプレスによるジャズ/フュージョン的な演奏をバックに、束縛されるのを嫌いモテまくっている相手を好きになってしまった女性の心理が切実に歌われている。

後にプリンスのアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」に収録された「ドロシー・パーカーのバラッド」の歌詞で言及されることになる。

David Bowie, “Rebel Rebel”

デヴィッド・ボウイのアルバム「ダイアモンドの犬」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高5位を記録した。

グラムロック的なギターリフが繰り返されるのだが、演奏しているのはお馴染みのミック・ロンソンではなく、デヴィッド・ボウイ自身である。

また、これ以降、デヴィッド・ボウイはまた新たな音楽的な冒険を続けていくことになるため、グラムロック時代の総決算とでもいうべき楽曲であり、パンクロックのひな型のようなところもある。

Big Star, “September Gurls”

ビッグ・スターの2作目のアルバム「ラジオ・シティ」からシングルカットされたが、当時はまったくといっていいほどヒットしていない。

しかし、後にパワーポップと呼ばれるジャンルのクラシックとして知られることになるのだが、その過程においてはバングルズによるカバーバージョンや、強い影響を受けているであろうティーンエイジ・ファンクラブのブレイクなどがあった。

メンバーでソングライターのアレックス・チルトンが過去に付き合った何人かの女性のことが歌われているのだが、そのうちの1人が9月生まれだったこともタイトルには反映しているのと、ビーチ・ボーイズ「カリフォルニア・ガールズ」が意識されてもいたようである。

甘いメロディーとハーモニーが特徴のギターロックチューンとしてはおそらく最高の部類に属し、パワーポップとは一体どのような音楽のことをいうのかを知るには、この曲を聴いておけばとりあえずOKなのではないかというような気はする。

William DeVaughn, “Be Thankful for What You Got”

ウィリアム・デヴォーンのデビューシングルで、全米シングルチャートで最高4位、R&Bチャートでは1位を記録した。

公務員として勤務する傍らパートタイムで歌っていたということなのだが、自費でレコーディングした「ア・キャデラック・ドント・カム・イージー」という曲がスタジオのプロデューサーでMFSBのメンバーでもあったジョン・デイヴィスに見いだされ、タイトルを変えてフィラデルフィア・インターナショナルのスタジオで録音し直された。

1990年代にはマッシヴ・アタックがアルバム「ブルー・ラインズ」でカバーしたりして、日本でも「渋谷系」的な音楽リスナーなどから再評価されがちであった。

Sparks, “This Town Ain’t Big Enough for Both of Us”

スパークスのアルバム「キモノ・マイ・ハウス」からのリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位を記録した。

ロンとラッセルのメイル兄弟によって結成されたスパークスはアメリカ出身だが、そのエキセントリックな音楽性とヴィジュアルセンスはイギリスをはじめヨーロッパでの方がより受け入れられていた。

タイトルは西部劇の映画「The Western Call(原題)」のセリフからの引用で、そのためにBBCのライブラリーで探したという銃声の効果音が使われていたりもする。

Labelle, “Lady Marmalade”

ラベルのアルバム「ナイトバーズ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位に輝いた。

「Voulez-vous coucher avec moi?」という印象的なコーラスの歌詞は、フランスで「私と寝たい?」という直接的に性的な内容である。

2001年には映画「ムーラン・ルージュ」のサウンドトラックのために、クリスティーナ・アギレラ、リル・キム、マイア、ピンクによってカバーされたバージョンが、全米シングルチャートで5週連続1位を記録している。

ハッピー・マンデーズが1990年にヒットさせた「キンキー・アフロ」もおそらくこの曲から影響を受けている。

Kraftwerk, “Autobahn”

クラフトワークのアルバム「アウトバーン」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高11位、全米シングルチャートで最高25位を記録した。

ドイツ出身の音楽ユニットによるほとんどが電子音楽のインストゥルメンタル曲で、ヴォコーダーで加工されたボーカルも入っているのだがドイツ語であり、このような楽曲がイギリスやアメリカのヒットチャートにもランクインしたという点がなかなか画期的であった。

もちろん後のニューウェイブやテクノポップなどに多大な影響を及ぼしたことは周知の事実である。アルバムではA面いっぱいに収録された22分以上の楽曲がシングルバージョンでは約3分半に編集されていた。

Augustus Pablo, “King Tubby Meets the Rockers Uptown”

ジャマイカのレゲエアーティスト、オーガスタス・パブロによるダブのインストゥルメンタル曲で、ジェイコブ・ミラー「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」のダブバージョンである。

タイトルが表しているように、ダブという音楽を語るうえで欠かすことができない音楽エンジニアのキング・タビーとの共作となっている。

オーガスタス・パブロは学校教育用の楽器という印象が強かったメロディカを、ポピュラー音楽で用いたおそらく最初の人物なのではないかともいわれてもいるようだ。

後のクラブミュージックやポストパンク/ニューウェイブなどにも大きな影響をあたえた。