洋楽ロック&ポップス名曲1001:1993, Part.1

Belly, ‘Feed the Tree’

アメリカのオルタナティブロックバンド、ベリーのデビューアルバム「スター」からリードシングルとしてリリースされ、ビルボードのモダンロックトラックチャートで1位、全英シングルチャートで最高32位を記録した。

スローイング・ミュージズやブリーダーズのメンバーとして活動していたタニヤ・ドネリーが新たに結成したバンドで、ジャングリーでフォークロック的でありながらポストパンク的な要素も入った音楽性が高く評価された。

この曲についてタニヤ・ドネリーは献身と尊敬の比喩であり、木は大きな農場で家族が埋葬される場所をあらわしている、と説明している。

Suede, ‘Animal Nitrate’

スウェードのデビューアルバム「スウェード」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートでは最高7位とバンドにとって最初のトップ10ヒットとなった。

タイトルは亜硝酸アミルという薬物の名前とかかっていて、ドラッグの服用を含む淫靡な世界観が展開されている。スウェードは当時のイギリスのインディーロック系メディアの話題を独占していて、デビュー・アルバムは全英アルバムチャートで初登場1位に輝き、史上最も速く売れたデビューアルバムといわれていた。

スウェードのブレイクをきっかけになんとなくイギリスのインディーロックがまた盛り上がっているという感じになり、翌年にはオアシスのデビューやブラー「パークライフ」の大ヒットなどによって、ブリットポップが本格的にムーブメント化していくことになる。

Beck, ‘Loser’

ベックのメジャー・デビューアルバム「メロウ・ゴールド」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高10位、全英シングルチャートで最高15位を記録した。

ラップとフォークやカントリーをかけ合わせたようなユニークな音楽性はもちろんなのだが、オレは負け犬なのだから殺してはどうか、というような自暴自棄的なフレーズが当時のジェネレーションXというかスラッカージェネレーション的な感覚ともマッチしていたように思える。

当初はインディーレーベルで500枚しかプレスされていなかったが、カレッジラジオを中心に評判となり、メジャーレーベルとの契約後に再リリースされた。

New Order, ‘Regret’

ニュー・オーダーのアルバム「リパブリック」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高4位、全米シングルチャートで最高28位のヒットを記録した。

サッカーワールドカップのイングランド代表公式応援ソング「ワールド・イン・モーション」をイングランド・ニュー・オーダー名義でリリースし、全英シングル・チャートで初の1位に輝いた後、メンバー個々のユニット活動やファクトリーレコードの破産などを経て、久々にリリースされた新曲であった。

いかにもニュー・オーダーらしいシンセポップなのだが、円熟味がやや増しているようにも感じられた。とはいえ、バーナード・サムナーのボーカルもピーター・フックのベースもニュー・オーダー以外の何物でもなく、シングルがヒットした上にアルバムは全英1位を記録した。

しかし、そのレコーディング中にメンバー間の関係性は確実に悪化してもいったのだった。

Blur, ‘For Tomorrow’

ブラーのアルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高28位を記録した。

マッドチェスターやインディーダンスのフォロワー的なヒット曲「ゼアズ・ノー・アザー・ウェイ」で注目されるようになったブラーだが、その後は大きなヒットも生まれず、このまま一発屋的に終わってしまうのではないか、と予想されることもあった。

そして、あえてデフォルメしたイギリスらしさを前面に押し出した、この曲および収録アルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」が高く評価されることになった。当時のグランジロックやアメリカのオルタナティヴロックブームに対するカウンター的なところもあり、それはアメリカツアー中にメンバーが味わったホームシックにも起因している。

この少し後にひじょうに盛り上がったブリットポップを振り返るうえでも、とても重要な楽曲でありアルバムである。

PJ Harvey, ‘Rid of Me’

PJハーヴェイのアルバム「リッド・オブ・ミー」の1曲目に収録されたタイトルトラックなのだが、シングルではリリースされていない。そのためもあってヒットチャートにはランクインしていないのだが、代表曲の1つとして知られる。

スティーヴ・アルビ二がプロデュースしたサウンドはひじょうに生々しく、ボーカリストのポリー・ジェーン・ハーヴェイは実際に体験した関係の終わりをも反映しているのではないかといわれる。

プライマルな怒りと情念が渦巻く素晴らしい楽曲で、その圧倒的なエネルギーは多くのリスナーや批評家に衝撃をあたえた。