洋楽ロック&ポップス名曲1001:1990, Part.4

Pet Shop Boys, ‘Being Boring’

ペット・ショップ・ボーイズのアルバム「ビヘイヴィアー:薔薇の旋律」からシングルカットされ、全英シングル・チャートでの最高位は20位と当時のペット・ショップ・ボーイズのシングルとしてはかなり売れていない方なのだが、評価や人気はひじょうに高く、名曲ランキング的なリストでも上位に挙げられがちである。

アナログシンセを用いた温もりのあるサウンドが、回想的でメランコリックな曲の内容にマッチしている。若かりし頃の夢や希望は失われたりかたちを変えてしまったりしがちであり、友人の中にはもうこの世にはいない者もいる、というようなことが歌われている。

タイトルはゼルダ・フィッツジェラルドの引用だとか、とある日本人がペット・ショップ・ボーイズのことを退屈だと評したことに由来している、などといわれている。

ファッション・フォトグラファーのブルースウェーバーによって撮影されたモノクロのミュージック・ビデオも、美しくてとても良い。

EMF, ‘Unbelievable’

EMFのデビューアルバム「シューベルト・ディップ」に先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高3位、全米シングルチャートで1位を記録した。

当時のトレンドであったインディーロックとダンスミュージックとを組み合わせたような音楽性にキャッチーさとアイドル性も加わって、イギリスやヨーロッパのみならずアメリカでも大ヒットした。

要求が厳しいのだが何もあたえてはくれないタイプの信じられない女性がテーマになっているのだが、バンドメンバーでソングライターのイアン・デンチを振ったガールフレンドがモデルになっているということである。

印象的な「Oh」というフレーズはアメリカのコメディアン、アンドリュー・ダイス・クレイの声をサンプリングしたものである。

Dream Warriors, ‘My Definition of a Boombastic Jazz Style’

カナダのヒップホップデュオ、ドリーム・ウォリアーズのシングルで、全英シングルチャートで最高13位を記録した。

クインシー・ジョーンズ「ソウル・ボサノヴァ」がサンプリングされていることで話題になったが、この曲はカナダでは「ディフィニション」というクイズ番組のオープニングテーマ曲として知られていたようである。

「ソウル・ボサノヴァ」はその後、映画「オースティン・パワー」でも使われ、よりポピュラーになっていくのだが、日本では深夜のテレビなどでよく放送されていたモード学園のCMのイメージが強いかもしれない。

C+C Music Factory feat. Martha Wash and Freedom Williams, ‘Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)’

アメリカのダンスミュージックグループ、C+Cミュージック・ファクトリーのアルバム「エヴリバディ・ダンス・ナウ!」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高3位を記録した。

ロバート・クリヴィリスが他のグループに提供したのだが却下された楽曲がベースになっていて、ウェザー・ガールズやブラック・ボックスにも参加していたマーサ・ウォッシュのボーカルをフィーチャーしている。

しかし、ミュージックビデオでは映像だけ他のボーカリストに差し替えられていたことが原因で、いろいろ訴訟沙汰にもなったようである。

ラップやソウルフルなボーカルとハウスミュージック的なサウンドをミックスしたこの楽曲は、新しいタイプのポップソングとして広く受け入れられ、大ヒットを記録した。

The Orb, ‘Little Fluffy Cloud’

イギリスのアンビエントハウスグループ、ジ・オーブのシングルで、デビューアルバム「アドヴェンチャーズ・ビヨンド・ジ・ウルトラワールド」にも収録された。何度か再リリースされ、1993年には全英シングルチャートで最高10位を記録した。

グループの中心人物であるアレックス・パターソンと元キリング・ジョークのマーティン・”ユース”・グローバーによってつくられた楽曲で、リッキー・リー・ジョーンズのインタビュー音源やスティーヴ・ライヒ「エレクトリック・カウンターポイント」のギター演奏をパット・メセニーがレコーディングしたもの、西部劇映画「ウエスタン」のエンリオ・モリコーネによるサウンドトラックからハーモニカの演奏などがサンプリングされている。