洋楽ロック&ポップス名曲1001:1989, Part.3

Janet Jackson, ‘Rhythm Nation’

ジャネット・ジャクソンのアルバム「リズム・ネイション1814」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高2位を記録した。

1980年代半ばあたりまではマイケル・ジャクソンの妹というイメージぐらいしかなかったような気もするのだが、ジミー・ジャム&テリー・ルイスがプロデュースにかかわったアルバム「コントロール」のヒットによって、ソロアーティストしても人気が確立された。

その路線をさらに推し進めたようなアルバム「リズム・ネイション1814」は大ヒットし、ジャネット・ジャクソンはトップアーティストの仲間入りを果たした。

スライ&ザ・ファミリーストーン「サンキュー」をも思わせるポップでファンキーなサウンドにのせて、人種間の調和などのメッセージも含んだコンシャスな内容が歌われる。

Biz Markie, ‘Just a Friend’

ニューヨーク出身のラッパー、ビズ・マーキーのアルバム「ビズは眠らない」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高9位を記録した。

フレディ・スコット「(ユー)ガット・ホワット・アイ・ニード」をベースに、追いかけている女性が「ただの友達」だと言い張る他の男性とどう見てもそれ以上の関係にある、という悲しい恋のストーリーが自虐的かつコミカルに語られているところがとても良い。

当時はサンプリング元の著作権などについてまだおおらかだったからか、この楽曲は明らかにフレディ・スコットも楽曲を引用しているのだが、ソングライターのケニー・ギャンブルとレオン・ハフはクレジットされていなかった。

しかし、ビズ・マーキーが次のアルバムでギルバート・オサリバン「アローン・アゲイン」を無断でサンプリングして訴えられ敗訴した件は、当時のシーンに衝撃をあたえた。

Lisa Stansfield, ‘All Around the World’

リサ・スタンスフィールドのデビューアルバム「アフェクション」からのリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高3位のヒットを記録した。

ソウル・Ⅱ・ソウル的でもあるコンテンポラリーなリズムと美しいストリングス、ソウルフルなボーカルが相まって、この時代を象徴する感じもありながらエバーグリーンでもあるポップソングに仕上がっている。

「Been around the world and I, I, I…」という印象的な歌いまわしはリサ・スタンスフィールドがスタジオで適当に冗談ぽく歌ってみたところ笑いが起こったのだが、実はこれはかなり良いのではないかということになって採用されたようだ。

バリー・ホワイトを意識したところもあり、それで初めにセリフが入っていたりもするのだが、後にシングル「タイム・トゥ・メイク・ユー・マイン」のカップリング曲として、この曲でのバリー・ホワイトとのデュエットが実現している。

The Stone Roses, ‘Fools Gold’

ザ・ストーン・ローゼズが「ワット・ザ・ワールド・イズ・ウェイティング・フォー」との両A面でリリースしたシングルで、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

この楽曲の最も大きな特徴はダンスビートの導入であり、イアン・ブラウンはジェームス・ブラウン「ファンキー・ドラマー」にのせて書いたと語っているが、実際の引用元はボビー・バード「ホット・パンツ」のようである。

インディーロックとダンスミュージックの融合と説明されることもあるマッドチェスタームーブメントを代表する楽曲の1つであり、イギリスの人気音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」でハッピー・マンデーズが「ハレルヤ」、ザ・ストーン・ローゼズがこの曲をパフォーマンスした回はこのムーブメントを一般大衆的にも印象づけた。

歌詞はナンシー・シナトラ「にくい貴方」やマルキ・ド・サドの引用を含み、1948年の映画「黄金」の金のない3人の男が金塊を発掘するために金を出し合うのだが、結局はお互いを裏切り合ってしまうという話にもインスパイアされている。

808 State, ‘Pacific State’

ローランドのリズムマシン、TR-808にグループ名が由来する808ステイトのシングルで、全英シングルチャートで最高10位を記録した。

サックスのサウンドや鳥のさえずりなどが印象的なこの楽曲はEP「クアドラステイト」の収録曲として発表されたが、後に数多くのリミックスが制作されることになる。マッドチェスタームーブメントの聖地、ザ・ハシエンダでは一時期ずっと最後にかかっていたといわれる。

後のアンビエントハウスシーンに大きな影響をあたえた楽曲として知られる。

Orbital, ‘Chime’

イギリスのハートノル兄弟によって結成されたテクノユニット、オービタルのデビューシングルで、全英シングルチャートで最高17位のヒットを記録したが、当初はカセットテープに録音されていて、制作費は1ポンド以下だったともいわれる。

BBCテレビの人気音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」にも出演を果たすが、生演奏を希望したにもかかわらず放送局からは許可されなかったため、ステージ上で軽く体を揺らしたり途中で少しだけ機材をさわるぐらいで、他の出演者のように演奏しているふりなどほとんどしないという尖り具合であった。