洋楽ロック&ポップス名曲1001:1990, Part.1

Sinead O’Connor, ‘Nothing Compares 2 U’

シニード・オコナーのアルバム「蒼い囁き」から先行シングルとしてリリースされ、イギリスやアメリカをはじめ17カ国のシングルチャートで1位に輝いた。邦題は「愛の哀しみ」である。

プリンスがザ・ファミリーというバンドに提供した曲だが、シニード・オコナーのバージョンがヒットするまでは、一般的にほとんど知られていなかった。ソウル・Ⅱ・ソウルのネリー・フーパーが共同プロデューサーとしてかかわっていることも話題になった。

ミュージックビデオはシニード・オコナーがカメラを見ながらこの曲を歌うところを撮影したシンプルなものだが、それだけに曲そのものの素晴らしさが伝わり、感きわまって思わず泣いてしまうシーンも印象的であった。

Digital Underground, ‘The Humpty Dance’

アメリカのヒップホップグループ、デジタル・アンダーグラウンドのデビューアルバム「セックス・パケット」に先がけてリリースされたシングルで、全米シングルチャートで最高11位を記録した。

グループのリーダー、ショックGの別人格であるハンプティ・ハンプを主人公にした楽曲で、スライ&ザ・ファミリーストーンやパーラメントの曲をサンプリングしているのだが、後にこの曲自体が100以上の楽曲でサンプリングされることにもなる。

Beats International, ‘Dub Be Good to Me’

ビーツ・インターナショナルのデビューアルバム「イート・ビンゴ」からのリードシングルで、全英シングルチャートで4週連続1位、全米シングルチャートで最高76位を記録した。

元ハウスマーティンズのメンバーで後にファットボーイ・スリムとしてブレイクするノーマン・クックを中心とする音楽ユニットで、リンディ・レイトンのボーカルをフィーチャーしている。

S.O.S.バンド「気分はジャスト・フィット」とザ・クラッシュのアルバム「ロンドン・コーリング」に収録された「ブリクストンの銃」を組み合わせ、セルジオ・レオーネ監督の西部劇映画「ウエスタン」のエンリオ・モリコーネによるテーマソングから印象的なハーモニカのフレーズなどをサンプリングしている。

Depeche Mode, ‘Enjoy the Silence’

デペッシュ・モードに先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高6位、全米シングルチャートで最高8位を記録し、1991年のブリットアワードでは最優秀ブリティッシュシングル賞を受賞した。

当初はメンバーのマーティン・ゴアによって書かれたバラードだったのだが、アラン・ワイルダーのアイデアによってアップテンポな楽曲になり、ダンスビートはハウスミュージック的な当時のトレンドをマイルドに感じさせるものであった。

言葉はときとして暴力でしかないから、沈黙をこそ楽しもうというような歌詞も高く評価されている。

MC Hammer, ‘U Can’t Touch This’

M.C.ハマーのアルバム「プリーズ・ハマー・ドント・ハーテム」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高8位、全英シングルチャートで最高3位を記録し、グラミー賞では最優秀R&Bソング賞と最優秀ラップソロパフォーマンス賞を受賞した。また、ラップの楽曲としては初めて主要部門の1つである最優秀レコード賞にノミネートされた。

リック・ジェームスの1981年のヒット曲「スーパー・フリーク」のオープニングリフが繰り返されるこの楽曲はM.C.ハマーの代表曲であるのみならず、この時代を象徴するヒット曲の1つとしても知られるが、全米シングルチャートでの最高位は同じアルバムからシングルカットされた「ハヴ・ユー・シーン・ハー」の4位、「プレイ」の2位より意外にも低い。

ミュージックビデオでのとんでもなくブカブカのパンツを履いての独特なダンスにはインパクトがあり、一躍ポップアイコン化した印象があり、アメリカではアル・ヤンコビック「アイ・キャント・ウォッチ・ジス」、日本ではコント赤信号の小宮孝泰が扮するM.C.コミヤ「ケンタイキ」「遣唐使です〜ちょっと目立たない〜」といったパロディソングもリリースされた。

Primal Scream, ‘Loaded’

プライマル・スクリームが1990年2月にリリースしたシングルで、全英シングルチャートで最高16位を記録した。後にアルバム「スクリーマデリカ」にも収録される。

アルバム「プライマル・スクリーム」に収録されていた「アイム・ルージング・モア・ザン・アイ・エヴァー・ハヴ」をDJのアンドリュー・ウェザウォールがリミックスしているうちに出来た楽曲である。

プライマル・スクリームのそれまでの音楽性とはかなり異なり、ダンスビートや映画からのサンプリングなどが特徴となっているが、これがインディーダンスやマッドチェスタームーヴメントともシンクロして、バンドにとって初のメジャーなヒット曲となった。

フリッパーズ・ギター「奈落のクイズマスター」などにも強い影響を与えていると思われる。

A Tribe Called Quest, ‘Bonita Applebum’

ア・トライブ・コールド・クエストのデビューアルバム「ヒップホッパーズQ軍団の大冒険」に先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高47位、全米シングルチャートにはランクインしていないのだが、全米ホットラップシングルチャートでは最高4位を記録した。

デ・ラ・ソウル、ジャングル・ブラザーズらと共に、ネイティヴ・タンというヒップホップでもよりコンシャスな一味の中心的な存在でもあった。

この曲のタイトルになっているボニータ・アップルバムは歌詞でも繰り返されている架空のキャラクター名だが、ヒップホップでは女性蔑視的な歌詞が流行りはじめていた時代に、女性の素晴らしさをジェントルに讃えているところが特徴でもある。

この曲は後にフージーズによるロバータ・フラック「やさしく歌って」の有名なカバーバージョンなどでサンプリングされた。

ア・トライブ・コールド・クエストのデビューアルバムからはルー・リード「ワイルド・サイドを歩け」をサンプリングした「キャン・アイ・キック・イット?」がヒップホップ以外のリスナーからも注目され、全英シングルチャートでは最高15位のヒットを記録している。