洋楽ロック&ポップス名曲1001:1990, Part.2

Bell Biv Devoe, ‘Poison’

ベル・ビヴ・デヴォーのデビューシングルで、全米シングルチャートで最高3位、全英シングルチャートで最高19位を記録した。

ニュー・エディションで主にバックシンガーを務めていた3名によって結成されたグループで、この楽曲はドクター・フリーズとしても知られるエリオット・ストレイトの別れた恋人への個人的な手紙がベースになっている。

ソウルミュージックやR&Bにヒップホップの要素を組み合わせたニュージャックスウィングを代表する楽曲の1つで、全米チャートでの最高位は3位だったものの、ロングヒットとなったこともあり、年間シングルチャートでウィルソン・フィリップス「HOLD ON」、ロクセット「愛のぬくもり」、シンニード・オコナー「愛の哀しみ」に次ぐ4位を記録した。

Madonna, ‘Vogue’

マドンナのアルバム「アイム・ブレスレス」から先行シングルとしてリリースされ、アメリカやイギリスをはじめ、様々な国のシングルチャートで1位に輝いた。

ポップミュージック界における当時の最新トレンドであったハウスミュージックを、メインストリームのポップソングに取り入れた大成功例として知られる。当時のクラブシーンにおいてもコアにリスペクトを集めていたシェップ・ペティボーンとマドンナとの共作、共同プロデュース曲である。

ニューヨークのゲイクラブシーンなどで流行していたヴォーギングというダンススタイルを取り入れ、歌詞ではマリリン・モンローやマーロン・ブランドといった、歴代スター達の名前が次々と出てくる。

Happy Mondays, ‘Step On’

ハッピー・マンデーズが1990年3月にリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高5位を記録し、後にアルバム「ピルズ・ン・スリルズ・アンド・ベリーエイクス」にも収録された。

南アフリカ生まれのギリシャ系シンガー・ソングライター、ジョン・コンゴスが1971年にリリースし、全英シングル・チャートで最高4位を記録した「ヒーズ・ゴナ・ステップ・オン・ユー・アゲイン」のカバーバージョンだが、サウンドはマッドチェスターというかインディーダンス的なものになっている。

1980年代後半のイギリスでハウスミュージックなどを主にかけるレイヴパーティーが流行し、インディーロックにも影響をあたえていった。特にそのメッカといわれがちだったのが、マンチェスターにあったハシエンダというクラブで、ニュー・オーダーやハッピー・マンデーズが所属するファクトリー・レコードによって経営されていた。

ダンスビートを使用したインディーロックがインディーダンスなどと呼ばれ、マッドチェスターなるムーヴメントとして紹介されてもいた。当時のマッドチェスター御三家はストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ、インスパイラル・カーペッツで、オアシスのノエル・ギャラガーはインスパイラル・カーペッツのローディーとして働いていたこともある。

My Bloody Valentine, ‘Soon’

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのEP「グライダー」の1曲目に収録され、イギリスのインディーチャートで最高2位を記録した。後にアルバム「ラヴレス」(発売当時の邦題は「愛なき世代」)にも収録された。

グライダーと呼ばれる奏法を駆使したギターでありながらひじょうにユニークなサウンドと耽美的なボーカル、さらには当時のインディーダンス的なトレンドを反映するかのようなダンスビートの導入と、オリジナリティに溢れまくっている。

Kylie Minogue, ‘Better the Devil You Know’

カイリー・ミノーグのアルバム「リズム・オブ・ラヴ」からのリードシングルで、全英シングルチャートで最高2位を記録した。邦題は「悪魔に抱かれて」である。

デビュー当時の親しみやすい雰囲気からより大人でセクシーなイメージにシフトチェンジしていった頃のカイリー・ミノーグを象徴するヒット曲で、ミュージックビデオもそれを反映したトーンになっている。

ストック・エイトキン・ウォーターマンによる楽曲だが当初のバージョンはカイリー・ミノーグによって拒否されたため、大幅なリミックスと再構築が施された。

この頃からインディーロック系のアーティストやリスナーからもカイリー・ミノーグに対しての人気が高まり、イギリスの音楽雑誌ではプライマル・スクリームのボビー・ギレスピーと対談企画が組まれたりするようになった。

The Charlatans, ‘The Only One I Know’

ザ・シャーラタンズの2枚目のシングルで、全英シングルチャートで最高9位を記録した。

当時のトレンドであったインディーダンス的なサウンドを取り入れたバンドとしてブレイクし、この曲も収録したデビューアルバム「サム・フレンドリー」は全英アルバムチャートで1位を記録した。

ロブ・コリンズによる印象的なオルガンのリフはディープ・パープル「ハッシュ」から引用され、インディーロック的でありながら、ベースにはファンクやサザンソウルからも影響を受けている。

ティム・バージェスの淡いボーカルは、好意をいだいている相手がなぜ自分のことを愛してくれないのだろう、というような思春期の苦悩をテーマにしたような歌詞にマッチしている。

インディーロックのシーンにおいては後追い的な印象も強かったのだが、その後、ブリットポップ時代やそれ以降に至るまで長きにわたって人気を獲得するバンドに成長していった。