洋楽ロック&ポップス名曲1001:1988, Part.3
Eric B. & Rakim, ‘Follow the Leader’
エリックB&ラキムのアルバム「フォロー・ザ・リーダー」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートにはランクインしなかったが、ダンスクラブソングチャートで最高11位、全英シングルチャートで最高21位を記録した。
デビューアルバムの「ペイド・イン・フル」よりも音楽的に多彩になり、この曲ではジャズミュージシャンであるボブ・ジェームスの「ノーチラス」やファンクのベイビー・ヒューイ「リッスン・トゥ・ミー」などがサンプリングされている。
アンビエントでスペーシーなサウンドにのせたラキムのラップはスキルにさらに磨きがかかり、話題となったデビューアルバム以上の高評価を得た。
2019年にはジョナサン・ヘイ、ベニー・リード&マイク・スミスによるジャズカバーアルバムがリリースされ、全米ジャズアルバムチャートなどで1位を記録した。
Mudhoney, ‘Touch Me I’m Sick’
アメリカはワシントン州シアトル出身のオルタナティブロックバンド、マッドハニーのデビューシングルで、ニルヴァーナやサウンドガーデンも最初に契約した伝説のインディーレーベル、サブ・ポップからリリースされた。
何種類かのカラービニール盤7インチシングルとして合計1000枚ぐらいしか当初は発売されなかったこともあり、全米シングルチャートなどにランクインはしていないのだが、グランジロックアンセムとして知られ、後にシアトルをポップミュージックのトレンド中心地にするきっかけとなった。
ガレージロック的なヘビーでラウドなサウンドと激しくシャウトするボーカル、病気や自己嫌悪や不安、ダーティなセックスについて歌われていると思われる歌詞などが特徴であり、メインリフはザ・ストゥージズ「アイム・シック・オブ・ユー」にも影響をあたえたヤードバーズ「幻の10年」にインスパイアされている。
音楽アーティストとして成功する道をあきらめてストリッパーとして生活をしていたコートニー・ラヴはこの曲を聴いてやはり音楽をやっていこうと決意し、後にホールの中心メンバーとしてブレイクすることになる。
My Bloody Valentine, ‘You Made Me Realise’
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがクリエイション・レコードに移籍してから最初にリリースしたレコードで、全英シングルチャートにはランクインしていないが、インディーズチャートでは最高2位を記録した。
バンドのそれまでのリリースから大きく変化したノイズポップ的な楽曲であり、アメリカのソニック・ユースやダイナソーJr.などの音楽から影響を受けている。
ライブでは1つのコードが容赦なく繰り返されるホワイトノイズ的なセクションが数十分にもわたって演奏されることもあり、観客を混乱させたり恍惚とさせたりしたことでも知られる。
N.W.A., ‘Fuck tha Police’
N.W.A.のデビューアルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」に収録されたプロテストソングでシングルカットはされていないのだが、グループの代表曲であるのみならず、警察による人種差別的な暴力行為を批判する楽曲としてひじょうに有名である。
楽曲ではメンバーのドクター・ドレーが裁判官として警察による悪事を裁くのだが、アイス・キューブ、MCレン、イージー・イーは検察官として人種差別と暴力について証言していく。
この楽曲がリリースからしばらく経っても有効性を失わず、クラシックとして知られているのはテーマになっているような現実がまだそこにあるからにほかならない。
Inner City, ‘Big Fun’
インナー・シティのデビューアルバム「ビッグ・ファン」からシングルカットされ、全米ダンスクラブチャートで1位、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
デトロイトテクノのオリジネーターの1人として知られるケヴィン・サンダーソンが女性ボーカリストのパリス・グレイと組んだグループで、テクノ的なバックトラックとポップなボーカルやシンセサイザーのリフなどを組み合わせたところが画期的である。
エレクトリックダンスミュージックを初めてメインストリームでヒットさせたともいわれ、そういった意味でもポップミュージック史上においてひじょうに重要な楽曲だといえる。
Enya, ‘Orinoco Flow (Sail Away)’
アイルランドのシンガーソングライター、エンヤのアルバム「ウォーターマーク」からシングルカットされ、イギリス、ベルギー、アイルランド、オランダ、スイスなどのシングルチャートで1位、全米シングルチャートでは最高24位を記録した。
エンヤの透明感溢れるボーカルとシンセサイザーによって生成されたピチカートコードが印象的なニューエイジ的なサウンドがバブル景気真っ只中の日本でも大いに受けていた。
タイトルはこの曲がレコーディングされたスタジオの名称とベネズエラを流れる約1,700マイルの川に由来しているのではないかといわれている。
また、レーベルの代表であるロブ・ディケンズの名前が歌詞に入っていて、彼が舵を取ってくれるというように歌われているところもユニークである。