洋楽ロック&ポップス名曲1001:1982, Part.4

Malcolm McLaren and the World’s Famous Supreme Team, ‘Buffalo Gals’

マルコム・マクラレン・アンド・ザ・ワールズ・フェイマス・スプリーム・チームのシングルで、全英シングルチャートで最高9位を記録し、後にマルコム・マクラレンのアルバム「俺がマルコムだ!」にも収録された。

セックス・ピストルズのマネージャーだったことなどで知られるマルコム・マクラレンは当時、バウ・ワウ・ワウをマネージメントしていたのだが、ニューヨークでサポートアクトを探していたときにアフリカ・バンバータ・アンド・ユニヴァーサル・ズールー・ネイションのブロックパーティーと呼ばれる野外ライブでヒップホップに出会った。

ターンテーブルに載せたレコードを前後に動かし、その上を針が擦る音を楽器のように使ったスクラッチという手法もそこで知って、さっそくこの曲に導入している。

シーケンサーやドラムマシンといった当時の最新機材を所有していたトレヴァー・ホーンが制作にかかわり、このエポックメイキングなレコードは完成した。

その後、様々なアーティストによって引用されているが、特に有名なところではネナ・チェリー「バッファロー・スタンス」やエミネム「ウィザウト・ミー」などがある。

Michael Jackson, ‘Billie Jean’

マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」からシングルカットされ、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、スイス、ベルギーなどのシングルチャートで1位に輝いた。アメリカでは1983年の年間シングルチャートでポリス「見つめていたい」に次ぐ2位を記録し、1984年のグラミー賞では最優秀R&B楽曲賞と最優秀男性R&Bボーカルパフォーマンス賞を受賞した。

「スリラー」からは7曲のトップ10ヒットが生まれたが、この曲はそのうちの2曲目で、最初のNO.1ヒットであった。アルバムから最初にシングルとしてリリースされたのはポール・マッカートニーとのデュエット曲「ガール・イズ・マイン」で、全米シングルチャートでの最高位は2位であった。

自分の子供の父親はあなただと事実無根の主張をする女性について歌ったこの曲は、マイケル・ジャクソン自身にとってもかなり自信があり、出来上がった当初はこの曲のことばかり考えていて、乗っている車が燃えていることにすら気づかないほどだったという。

ヒューマン・リーグ「愛の残り火」のミュージックビデオを見て気に入ったマイケル・ジャクソンとプロデューサーのクインシー・ジョーンズが、監督のスティーヴ・バロンにこの曲のビデオを依頼した。

1981年の夏に開局したMTVはヒットチャートに大きな影響をあらえていたが、当時はまだ白人アーティストのビデオばかりがオンエアされていた。それを変えたのがこの曲のビデオであり、その後、プリンスなどのビデオもオンエアされるようになった。

この曲のビデオはマイケル・ジャクソンの個性的なダンスをフィーチャーしていたが、代名詞にもなるムーンウォークが披露されたのは「モータウン25周年記念コンサート」でこの曲をパフォーマンスしたときであった。

Michael Jackson, ‘Beat It’

マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高3位を記録した。グラミー賞では年間最優秀レコード賞と最優秀ロックボーカルパフォーマンス賞を受賞している。邦題は「今夜はビート・イット」である。

エディ・ヴァン・ヘイレンがギターソロを弾いていることがシングルカットされる前から話題になっていたが、この曲の大ヒットによってマイケル・ジャクソンはソウルやディスコミュージックのファンのみならず、ロックやポップスのリスナーにも聴かれるようになり、「スリラー」メガヒットを記録することにも繋がっていった。

リズムギターを弾いているのはスティーヴ・ルカサーだが、他にもスティーヴ・ポーカロ、ジェフ・ポーカロと、いずれもTOTOのメンバーがレコーディングに参加している。

ギャング同士の抗争をマイケル・ジャクソンが止めるという内容のミュージックビデオは大勢によるダンスをフィーチャーした見ごたえがあるもので、MTVでもヘビーローテーションされた。

この時点でミュージックビデオはヒットチャートに影響をおよぼす大きな要因となってはいたのだが、この後、「スリラー」の短編映画的なビデオが発表されたときには、ミュージックビデオを単なるプロモーションツールから芸術の域にまで到達させたなどといわれた。

アル・ヤンコヴィックが楽曲のみならずミュージックビデオまでパロディにした「今夜もイート・イット」も、全米シングルチャートで最高12位のヒットを記録した。

Orange Juice, ‘Rip It Up’

スコットランド出身のインディーポップバンド、オレンジ・ジュースのアルバム「キ・ラ・メ・キ・トゥモロー」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

初期のギターポップ的な音楽性から変化し、シックのディスコソングを思わせるギターやシンセベースが導入されているのが特徴である。

歌詞ではバズコックスのデビューEP「スパイラル・スクラッチ」に収録されていた「ボアダム」に言及すると共に、ギターリフも少しだけ引用されている。

Eddy Grant, ‘Electric Avenue’

ガイアナ系イギリス人アーティスト、エディ・グラントのアルバム「カリビアン・キラー」からシングルカットされ、イギリス、アメリカいずれのシングルチャートにおいても最高2位を記録した。

タイトルはロンドンのブリクストン地区にあるショッピングエリアに由来し、最初に電灯が設置されたことからそう呼ばれている。1981年には警察とデモ隊との間で暴動が起こり、この曲の歌詞でもそれに言及されている。

人種や平等についての深いメッセージも込められているこのポップソングは、特にアメリカではミュージックビデオの影響でヒットして、全米シングルチャートで5週連続2位を記録するのだが、ポリス「見つめていたい」とアイリーン・キャラ「フラッシュダンス〜ホワット・ア・フィーリング」(日本でもオリコン週間シングルランキングで1位に輝いた)に阻まれ、1位には届かなかった。