洋楽ロック&ポップス名曲1001:1980, Part.3

Talking Heads, ‘Once in a Lifetime’

トーキング・ヘッズのアルバム「リメイン・イン・ライト」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高14位を記録した。

ブライアン・イーノをプロデューサーに迎えたアルバムはニューウェイブ的なロックミュージックにアフロビートからの影響を取り入れた点において、当時としてはひじょうにエポックメイキングであった。

説教師をモデルにしたというデヴィッド・バーンのボーカルパフォーマンスは、会衆とのコール&レスポンスを思わせるようなところもあり、高度消費社会における中年の危機について歌っているようである。

ミュージックビデオにおける痙攣的なダンスパフォーマンスもひじょうに印象的だが、監督はデヴィッド・バーンと後に「ミッキー」を大ヒットさせるトニー・バジルである。

全米シングルチャートにはライブアルバム「ストップ・メイキング・センス」に収録されたバージョンが後にランクインして、最高91位を記録した。

Bruce Springsteen, ‘Hungry Heart’

ブルース・スプリングスティーンのアルバム「ザ・リバー」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高5位、全英シングルチャートでは最高44位だったが、1995年にベストアルバムに合わせて再リリースされたときに最高28位を記録した。

ジョーイ・ラモーンに依頼され、ラモーンズへの提供曲として書かれたが、プロデューサー兼マネージャーのジョン・ランドーからのアドバイスによって、ブルース・スプリングスティーン自身の楽曲としてリリースすることになった。

マンフレッド・マン「光に目もくらみ」、パティ・スミス・グループ「ビコーズ・ザ・ナイト」、ポインター・シスターズ「ファイア」とブルース・スプリングスティーンの楽曲を他のアーティストが歌ったバージョンがヒットしていたのだが、ブルース・スプリングスティーン自身にはまだトップ10ヒットがなく、ジョン・ランドーはその状態が続くことを望んでいなかったと思われる。

安定した家庭生活への願望と放浪癖との間で揺れ動く男の心情を歌ったこの曲において、ブルース・スプリングスティーンのボーカルは若干スピードアップした状態でレコーディングされている。

Bruce Springsteen, ‘The River’

ブルース・スプリングスティーンのアルバム「ザ・リバー」のタイトル曲で、全英シングル・チャートで最高35位を記録した(アメリカではシングルカットされていない)。

ハーモニカの音色が印象的なフォークソング的な楽曲で、庶民の経済的な困難や夢と理想が現実の前で崩れ落ちる様などが歌われているが、ブルース・スプリングスティーンの妹と義理の弟の実話がモチーフになっている。

ブルース・スプリングスティーンがストーリーテリング的な楽曲にチャレンジし、高く評価された最初の楽曲であり、大きくヒットしたわけではないのだが代表曲の1つとして知られている。

Motörhead, ‘Ace of Spades’

イギリスのヘビーメタルバンド、モーターヘッズのアルバム「エース・オブ・スペーズ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高15位を記録したが、2016年にフロントマンのレミーが亡くなった後で最高位を13位に更新した。

レミーによるベースのイントロからヘビーなロックサウンドが続き、カードやサイコロといったギャンブルのたとえを用いた歌詞が歌われている。

ジャケットでメンバーがサンタクロースのコスプレをした、クリスマスピクチャースリーブ版もリリースされた。

John Lennon, ‘(Just Like) Starting Over’

ジョン・レノンとヨーコ・オノのアルバム「ダブル・ファンタジー」からリードシングルとしてリリースされた楽曲で、イギリスやアメリカのシングルチャートで1位に輝いた。

音楽アーティストとしての活動を休止していたジョン・レノンにとって、1975年以来の新作であり、新しい出発を感じさせる大人のロックンロールである。

自宅マンション前でファンを名乗る男に殺害されたことによって、この曲はジョン・レノンにとって生前最後のシングルとなった。

Grover Washington Jr. feat. Bill Withers, ‘Just the Two of Us’

グローヴァー・ワシントン・ジュニアのアルバム「ワインライト」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高2位、全英シングル・チャートで最高34位を記録した。邦題は「クリスタルの恋人たち」である。

アーティスト名のグローヴァー・ワシントン・ジュニアはサックス奏者であり、この曲を歌っているのはR&Bシンガーのビル・ウィザースである。

この曲のコード進行は様々なポップソングに使われるようになり、「Just the Two of Us進行」と呼ばれたりもするのだが、J-POPにおいては椎名林檎「丸ノ内サディスティック」から「丸ノ内進行」「丸サ進行」などと呼ばれる。

Yarbrough & Peoples, ‘Don’t Stop the Music’

ヤーブロウ&ピープルズのアルバム「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高19位、全英シングルチャートで最高7位を記録した。

実生活ではカップルで後に結婚もするデュオによるエレクトロファンク的なディスコクラシックで、クラブで最後の曲が流れた後で何が起こるかについて歌われている。

イヴ「ギャングスタ・ラヴィン」、コモン「オール・ナイト・ロング」、ビヨンセ「クレイジー・イン・ラヴ」のロックワイルダー・リミックスをはじめ、後にいろいろな楽曲でサンプリングされることになる。

日本では本田技研工業のスクーター、タクトのテレビCMで使われ、オリコン週間シングルランキングで最高15位のヒットを記録した。

Blondie, ‘Rapture’

ブロンディのアルバム「オートアメリカン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高5位を記録した。

デビー・ハリーの妖艶なボーカルとセクシーなムードを感じさせるサウンドが特徴的な、ニューウェイブとディスコのクロスオーバー的な楽曲で、ラップをフィーチャーした最初の全米NO.1ヒットとしても知られる。

ブロンディにとっては「コール・ミー」「夢見るNO.1」に続いて、直近の約1年間で3曲目の1位となった。

歌詞はグランドマスター・フラッシュに言及していたりもするのだが、トータル的には火星から来た男が車を食べるというような、わりとナンセンスな内容である。