洋楽ロック&ポップス名曲1001:1980, Part.2

Joy Division, ‘Love Will Tear Us Apart’

ジョイ・ディヴィジョンのボーカリスト、イアン・カーティスが自らの命を絶った翌月にリリースされたシングルで、全英シングルチャートで最高13位を記録した。

イアン・カーティスの破綻した結婚生活やてんかんとの闘い、日常的なストレスやプレッシャーを反映した楽曲だといわれ、タイトルはキャプテン&テニール「愛ある限り」を反対の意味にしたものである。

絶望的な暗さの中に絶妙なポップ感覚も感じられるこの曲は批評家や音楽ファンからの評価がひじょうに高く、歴代ベストソングのようなリストで上位に選ばれることが多い。

カリスマ的なボーカリストを失ったバンドメンバーたちは、この後、ニュー・オーダーを結成することになる。

Adam and The Ants, ‘Kings of the Wild Frontier’

ロンドンで結成されたニューウェイブバンド、アダム&ジ・アンツのシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高48位を記録するのだが、シングル「ドッグ・イート・ドッグ」「アント・ミュージック」、デビューアルバム「アントの王国」がヒットした後に再度シングルカットされると、最高位を2位に大きく更新した。邦題は「略奪の凱歌」である。

2人のドラマーによるアフリカのブルンジを取り入れたドラムビートと、海賊ルックなどとも呼ばれた独特のビジュアルイメージが大いに受けて、一時的なポップセンセーションを巻き起こした。

カウボーイ風のギターサウンドは映画「続・夕陽のガンマン」のエンリオ・モリコーネによるサウンドトラックから引用されている。

AC/DC, ‘Back in Black’

オーストラリア出身のハードロックバンド、AC/DCのアルバム「バック・イン・ブラック」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高37位を記録した。

バンドの元ボーカリスト、ボン・スコットが亡くなってから約5ヶ月後にリリースされたこの曲には追悼的な意味合いもあったのだが、印象的なギターリフをも含むこの楽曲やアルバムのヒットによって、新たなボーカリストとして加入したブライアン・ジョンソンの存在もすんなり受け入れられるようになった。

ニルヴァーナのカート・コバーンが14歳の頃に手に入れた生まれて初めてのギターで最初に弾けるようになった楽曲だといわれたり、2008年に公開されたマーベル・コミック・ユニバースの映画「アイアンマン」のオープニングをはじめ、多くの映画やドラマのサウンドトラックでも使われるようになった。

Daryl Hall & John Oates, ‘Kiss On My List’

ダリル・ホール&ジョン・オーツのアルバム「モダン・ヴォイス」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高33位を記録した。

ブルーアイドソウル的な音楽性に定評があるデュオの、よりポップでキャッチーな楽曲なのだが、これ以降、「プライベート・アイズ」「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」「マンイーター」「アウト・オブ・タッチ」によって、80年代前半の全米シングルチャートで最も多くの楽曲が1位を記録したアーティストとなる。

ピュアなラブソングとして共感されがちなこの曲なのだが、ダリル・ホールのインタビューによると、キスはリストにある項目の1つにすぎないという、反ラブソング的な意図があったのだという。

エディ・ヴァン・ヘイレンはこの曲のシンセサイザー部分をコピーして、バンドの大ヒット曲「ジャンプ」で使用したともいわれている。

David Bowie, ‘Ashes to Ashes’

デヴィッド・ボウイのアルバム「スケアリー・モンスターズ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで1位に輝いた。

「スペース・オディティ」の続きのようにもなっていて、架空のキャラクターであるトム少佐も再び歌詞に登場している。デヴィッド・ボウイ自身のドラッグからの脱却がテーマになっているのではないか、という解釈もある。

デヴィッド・ボウイがピエロに扮したミュージックビデオの制作には約25万ポンドという、当時としてはかなりの予算が投じられていたようだ。MTVが放送を開始するのはこの翌年であり、そういった意味ではひじょうに先駆的だったということもできる。

The Police, ‘Don’t Stand So Close to Me’

ポリスのアルバム「ゼニヤッタ・モンダッタ」からのリードシングルで、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高10位を記録した。邦題は「高校教師」である。

高校教師が女生徒の一人に不適切な欲望を抱くという内容の楽曲であり、ボーカリストでソングライターのスティングには教師の経験があるのだが、この曲の歌詞は実話に基づいていないことを強調している。

スティングがゲストとしてレコーディングに参加したダイアー・ストレイツの大ヒット曲「マネー・フォー・ナッシング」で、「I want my MTV」と歌われる箇所のメロディーはこの曲から引用されていて、スティングは特にそれを望んではいなかったのだが、弁護士が関与するようになったことによって、共作者としてクレジットされるようになった。

イギリスでは1980年に国内で最もよく売れたシングルとなり、1982年のグラミー賞では最優秀ロックパフォーマンス賞(デュオまたはグループ)を受賞した。

Orchestral Manoeuvres in the Dark, ‘Enola Gay’

リバプール出身のエレポップバンド、OMDことオーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークのアルバム「エノラ・ゲイの悲劇」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

サウンド的には軽快なシンセポップなのだが、タイトルは第二次世界大戦で広島に原子爆弾を投下するのに使用された爆撃機に由来し、歌詞は反戦ソング的なシリアスな内容になっている。

日本ではテレビ朝日系のニュース番組「CNNデイウォッチ」のオープニングで使用されていたことでも知られる。