洋楽ロック&ポップス名曲1001:1976, Part.3

Tom Petty and the Heartbreakers, ‘American Girl’

トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのデビューアルバム「アメリカン・ガール」からシングルカットされたが、全米シングルチャートにはランクインしていなく、全英シングルチャートでは最高40位を記録した。

つまりそれほど大きなヒットになったというわけではないのだが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズで最も有名な曲だともいえる。

音楽的にはブルース・スプリングスティーンやジョン・メレンキャンプなどと同様にハートランドロックなどとも呼ばれるアメリカンロックの典型的なアーティストとされがちなトム・ペティだが、この曲ではザ・バーズのロジャー・マッギン的なジャングリーな感じや後のザ・ストロークスになどにも通じるシャッフルビートなどなどが特徴的である。

歌詞はいろいろ精神的に不安定になっている少女を励ますような内容になっていて、「Oh yeah, alright. Take it easy baby」などと歌われている。

Sex Pistols, ‘Anarchy in the U.K.’

セックス・ピストルズのデビューシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高38位を記録した。パンクロックの初期の代表曲として広く知られるが、発売はダムド「ニュー・ローズ」の方が少し早かった。

タイトルに無政府主義を意味するアナーキーが入り、歌詞ではいきなりアンチクライストであることが宣言される。個性的なボーカルで歌っているのは、ジョニー・ロットン、つまり腐ったジョニーというボーカリストである。

エスタブリッシュメントに盾突く姿勢こそがパンクロックの骨子ではあるのだが、そこにマネージャーであるマルコム・マクラレンの炎上商法の元祖とでもいうべきプロモーション手法が加わってくる。

社会現象やムーヴメントとしての話題性が先行して語られがちではもちろんあるわけだが、ポップソングとしても単純にとても良い。

Eagles, ‘Hotel California’

イーグルスのアルバム「ホテル・カリフォルニア」からシングルカットされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

この曲で歌われる架空のホテルは物質主義の成れの果てともいえる自堕落さの象徴であり、アメリカンドリームの裏側にある暗さや空虚さが表現されているように感じられる。

約6分半もあるこの曲はイントロも最後のギターソロもひじょうに長く、けしてシングル向きとはいえないのだが、これが大ヒットしたのであった。

Fleetwood Mac, ‘Go Your Own Way’

フリートウッド・マックのアルバム「噂」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高10位、全英シングルチャートで最高38位を記録した。

「噂」はとにかく売れに売れまくったアルバムだが、バンド内のカップルや夫婦が別れたりという、ひじょうしんどい状況下で制作されたことでも知られる。しかも、それをそのままドキュメンタリータッチで楽曲化していたりもするのである。

この曲はリンジー・バッキンガムがバンド内で付き合っていたが別れたスティーヴィー・ニックスに宛てて書いたものであり、自分の道を行きなよ、というようなことが歌われている。そして、歌われている当の本人もバッキングボーカルで参加しているという、なかなか味わい状態になっている。

このような背景を知らずに聴いたとしても、もちろんとても良い。

Candi Staton, ‘Young Hearts Run Free’

キャンディ・ステイトンのアルバム「ハートのときめき」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高20位、全英シングルチャートで最高2位を記録した。

一緒にいるべきではない相手との虐待的な関係から抜け出すことができないという私生活での悩みをキャンディ・ステイトンがこの曲の作者であるデヴィッド・クロフォードに打ち明けたことが、この自由な感覚に満ち溢れたディスコポップを生み出すきっかけになった。

1996年にはバズ・ラーマン監督の映画「ロミオ+ジュリエット」のサウンドトラックでキム・マゼルがこの曲をカバーし、全英シングルチャートでは最高20位を記録している。