洋楽ロック&ポップス名曲1001:1975, Part.1

Bob Dylan, ‘Tangled Up in Blue’

ボブ・ディランのアルバム「血の轍」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高31位を記録した。邦題は「ブルーにこんがらがって」である。

私生活における結婚生活の破綻などが強く影響した楽曲であり、ボブ・ディランはジョニ・ミッチェル「ブルー」を繰り返し聴いた後でこの曲を書いたともいわれている。

あまりにもカリスマ的な存在であるがゆえにボブ・ディランの音楽を聴くきっかけがなかなかつかめないポピュラー音楽リスナーも意外といるような気がしなくもないのだが、「血の轍」はシンガー・ソングライターアルバムとしてわりととっつきやすいのでとても良い。

Led Zeppelin, ‘Kashmir’

レッド・ツェッペリンのアルバム「フィジカル・グラフィティ」に収録された楽曲である。演奏時間は約8分30秒あり、シングルカットもされていないのだが、代表曲の1つとして知られ、メンバー自身も特に優れた楽曲であることを自負している。

プログレッシブな音楽性からロック以外の音楽リスナーからもわりと高く評価されがちだが、弦楽器とホーンセクションにはセッションプレイヤーを起用していて、レッド・ツェッペリンとしては数少ない外部ミュージシャンを起用した楽曲であることも特徴である。

1997年にはパフ・ダディが映画「GODZILLA」のテーマソングとして発表した「カム・ウィズ・ミー」で、この曲をサンプリングした。

10cc, ‘I’m Not in Love’

イギリスのロックバンド、10ccのアルバム「オリジナル・サウンドトラック」からシングルカットされ、全英シングルチャートで2週連続1位、全米シングルチャートで3週連続2位を記録した。この年のアイヴァー・ノヴェロ賞では最優秀楽曲賞を受賞している。

メンバーのエリック・スチュワートが妻からどうしてもっと愛していると言ってくれないのか、などと問われたことが歌詞のモチーフとなっていて、当初はボサノバ調の楽曲でメンバー間でもわりと不評だったのだが、スタッフが口ずさんでいるのを聞いて実はわりと良いのではないかという気にもなってきてちゃんとレコーディングすることになったようである。

この曲の特徴といえばなんといってもおそらくオーバーダビングを重ねたであろう重厚なコーラスであり、これによって不思議な魅力を持つ音響空間が実現しているといえる。

イギリスではアルバムに収録された約6分10秒のフルバージョンがそのままシングルカットされたが、アメリカでは約3分42秒に編集されたバージョンがリリースされた。

メンバーのケヴィン・ゴドレイとロル・クレームは後に映像作家チームとしても成功をおさめる。

Kiss, ‘Rock and Roll All Nite’

アメリカのハードロックバンド、キッスのアルバム「地獄への接吻」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高12位を記録した。

スレイド「クレイジー・ママ」にインスパイアされたロックンロール賛歌的な楽曲で、ライブではラストで演奏されるようになった。

白塗りのフェイスペイントや奇抜な衣装でキャラクターが立っているうえに、音楽性もしっかりしていたことなどから、日本でも大人気になった。

Bruce Springsteen, ‘Born to Run’

ブルース・スプリングスティーンのアルバム「明日なき暴走」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高23位を記録した。ブルース・スプリングスティーンにとって、この曲が初の全米トップ40ヒットである。

夢をつかむために田舎を抜け出すのだという若者の野心が歌われると同時に激しいラヴソングにもなっているのだが、ロックンロールのフォーマットを取りながらフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドを思わせる臨場感もあって、ひじょうにドラマティックな楽曲である。

この曲が完成はしていたが、まだレコードとしてはリリースされていなかった頃、ライブでの演奏を見た音楽ライターのジョン・ランドーが「ロックンロールの未来を見た。その名はブルース・スプリングスティーン」とコラムで書くことになる。

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドが1984年にリリースしたデビュー・アルバム「ウェルカム・トゥ・プレジャードーム」でディオンヌ・ワーウィック「サン・ホセへの道」、エドウィン・スター「黒い戦争」と共にこの曲もカバーしていたのだが、どこまでが本気かよく分からずとても良かった。