洋楽ロック&ポップス名曲1001:1973, Part.1

Roberta Flack, ‘Killing Me Softly with His Song’

ロバータ・フラックのアルバム「やさしく歌って」に先行してシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高6位を記録した。グラミー賞では最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀女性ボーカル賞の3部門を受賞している。

この曲を最初にレコーディングしたのはロリ・リーバーマンで、ロサンゼルスのクラブで見たドン・マクリーンのパフォーマンスに感銘を受け、書いた詩をチャールズ・フォックスとノーマン・ギンベルが曲に仕上げた。

ロリ・リーバーマンのバージョンはヒットしなかったが、搭乗していた飛行機の機内放送で偶然に聴いて気に入ったロバータ・フラックがカバーしたところ大ヒットした。

1996年にはヒップホップグループのフージーズがカバーし、全英シングルチャートで1位を記録した。

Iggy and The Stooges, ‘Search and Destroy’

イギー・アンド・ザ・ストゥージズのアルバム「ロウ・パワー」(当時の邦題は「淫力魔人」であった)からシングルカットされ、アルバムと同様にヒットはしなかったのだが、後のポップミュージックにあたえた影響はひじょうに大きい。

タイトルは「タイム」誌に掲載されたベトナム戦争に関する記事にインスパイアされている。ボーカルも演奏もひじょうに激しく攻撃的で、ガレージロック的でありながらパンクロックの原型としても評価されがちである。

当時の肥大化した音楽業界に対するアンチテージ的なアティテュードも暗に含まれていたことが、イギー・ポップによって後に明かされている。

Slade, ‘Cum On Feel the Noize’

イギリスのロックバンド、スレイドのヒット曲で、全英シングルチャートで4週連続1位を記録した。邦題はシンプルに「カモン!!」である。

バンドのライブでの雰囲気を表現したご機嫌なロックチューンで、冒頭の「ベイビー、ベイビー、ベイビー」のシャウトからしてすでにつかみはOKなのだが、実はこれはマイクチェック用に発したものがそのまま採用されたようである。

1983年にはアメリカのヘヴィメタルバンド、クワイエット・ライオットによるカバーバージョンが全米シングルチャートで最高4位を記録し、1990年代にはオアシスのライブレパートリーとしても知られるようになった(カバーバージョンはシングル「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」にカップリング曲として収録された)。

T. Rex, ‘20th Century Boy’

T・レックスが1973年3月にリリースしたシングルで、全英シングルチャートで最高3位を記録した。

イントロがとにかくとてもカッコよく、マーク・ボランのボーカルもポップにセクシーでとても良い。来日ツアー中に赤坂にあった東芝EMIのスタジオでレコーディングされたらしい。

2000年代の後半あたりには大阪の日本橋にあったDVDセル&買取店、ガッポリの店頭でこの曲の最高にカッコいいイントロが流れた後に、「ガッポリ買います」「ガッポリガッポリ!」などというイカしたPR音声が使用されていたことが懐かしく思い出される。

Wings, ‘Live and Let Die’

映画「007/死ぬのは奴らだ」のテーマソングとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高2位を記録した。

メロディーはいかにもポール・マッカートニーらしいキャッチーなものだが、オーケストラを効果的に用いたりもしたジョージ・マーティンのプロデュースによって、「007」シリーズのサウンドトラックっぽくもちゃんとなっている。

1991年にはガンズ・アンド・ローゼズがカバーして、全英シングルチャートではウイングスの最高9位を上回る5位を記録している(全米シングル・チャートでは最高33位)。

New York Dolls, ‘Personality Crisis’

ニューヨーク・ドールズのデビューアルバム「ニューヨーク・ドールズ」の1曲目に収録され、シングルカットもされていたようだ。プロデューサーはトッド・ラングレンで邦題は「人格の危機」である。

グラムロック的なルックスではあるが、その音楽性は後のパンクロックにも通じるといわれがちである。若かりし頃のモリッシーがこのバンドに強い衝撃を受け、ファンクラブまで立ち上げてしまったことでも知られる。

映画「ベルベット・ゴールドマイン」のサウンドトラックでは、エラスティカのドナ・マシューズをフィーチャーしたティーンエイジ・ファンクラブがこの曲をカバーしていた。

Ann Peebles, ‘I Can’t Stand the Rain’

アン・ピーブルズが1973年7月にリリースしたシングルで、全米シングルチャートで最高38位、全英シングルチャートで最高41位を記録した。

雨が窓に打ちつける音は失くした恋を思い出させるので聴きたくはない、ということが歌われた失恋ソングである。この曲の印象を強いものにしているのは、ソウルフルなボーカルももちろんなのだが、ティンバレスという打楽器で奏でられる雨音に似たサウンドである。

後にエラプションというグループがディスコポップ的にカバーしてヒットさせたり、ティナ・ターナーもアルバム「プライヴェート・ダンサー」でカバーしたり、ミッシー・エリオットがこの曲をベースにした「レイン」をリリースしたりした。ジョン・レノンもこの曲をかなり気に入っていたようである。