洋楽ロック&ポップス名曲1001:1970, Part.1

Simon and Garfunkel, ‘Bridge Over Troubled Water’

サイモン&ガーファンクルのアルバム「明日に架ける橋」に先がけてシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで7週連続1位、年間シングルチャートでも1位、全英シングルチャートで3週連続1位の大ヒットを記録した。グラミー賞では最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を含む5部門を受賞した。

ポール・サイモンがゴスペル音楽に影響を受けてつくった楽曲で、困難に直面したときに慰めとなるような内容がドラマティックに歌われている。美しいストリングスと最後の部分でクライマックスを迎えるドラムスの演奏が効果を高めている。

当初はポール・サイモン自身がファルセットで歌うことを試みたがなかなかうまくいかず、アート・ガーファンクルがリードボーカルを歌うことになった。

1971年にアレサ・フランクリンによるカバーバージョンが全米シングルチャートで最高6位、R&Bチャートで1位を記録したのをはじめ、多くのアーティストによってカバーされている。

Van Morrison, ‘Moondance’

ヴァン・モリソンのアルバム「ムーンダンス」のタイトル曲で、代表曲としても知られるのだが、当時はシングルカットされず、7年後にようやくシングルがリリースされたときにも全米シングルチャートでの最高位は92位にとどまっている。

サックスのインストゥルメンタル曲としてつくりはじめられたというだけあって、ジャズの要素を取り入れてソフィスティケイトされた楽曲となっている。

1981年のコメディホラー映画「狼男アメリカン」のロマンティックなシーンで効果的に使用されたことでも知られる。

James Taylor, ‘Fire and Rain’

ジェームス・テイラーのアルバム「スウィート・ベイビー・ジェームス」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位を記録した。

友人であったスザンヌ・シュナーの自殺、ダニー・コーチマーらと組んでいたバンド、ザ・フライング・マシーンの崩壊とそれにともなう抑うつやアルコール依存症などについて歌われた楽曲である。

この曲でピアノを弾いているキャロル・キングは「友達を見つけられない寂しい時期があった」という一節に対してのアンサーソングとして、後に自身のアルバム「つづれおり」やジェームス・テイラーによるカバーバージョンで有名になる「君の友だち」を書いたといわれる。

John Lennon, ‘Instant Karma! (We All Shine On)’

ジョン・レノンがプラスティック・オノ・バンド名義でリリースした最後のシングルで、全英シングルチャートで最高5位、全米シングルチャートでは最高3位(サイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」、ビートルズ「レット・イット・ビー」、ジャクソン5「ABC」がその間、1位か2位にランクインしていた)のヒットを記録した。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコがデンマークでヨーコの前夫と彼の妻、ヨーコとの間の娘にあったときに、行動の因果関係は生涯にわたってではなくインスタントに生じるというようなことを語り合ったことから、帰国後にアイデアを発展させこの曲を完成させた。

プロデューサーはフィル・スペクターで、レコーディングにはジョージ・ハリスンやビリー・プレストン、近所のバーにいた常連客なども参加している。1950年のサン・レコードの作品と同様のエコーを使うことによって、ウォール・オブ・サウンドの発展型とでもいうべきサウンドが実現されている。

Freda Payne, ‘Band of Gold’

デトロイト出身のソウルシンガー、フリーダ・ペインのヒット曲で、全米シングルチャートで最高3位、全英シングルチャートで6週連続1位のヒットを記録した。

作詞作曲はモータウンで数々のヒット曲を生み出したホランド=ドジャー=ホランド(クレジットでは変名のクリス・ウェインとなっている)とロン・ダンバーで、レコーディングにはモータウンのハウスバンド、ファンク・ブラザーズのメンバーやセッションシンガーたちも参加している。

結婚をするのだが最初の夜にして何らかの問題が生じて別々のベッドで寝ることになり、すぐに別れてしまうのだが、それを悔やんでいるというような内容になっている。

チャーリー・マクレイン、ベリンダ・カーライル、ボニー・タイラー、キンバリー・ロックなど様々なアーティストによってカバーされているが、異色なところでは1992年にリリースされたアメリカのオルタナティブロックバンド、アフガン・ウィッグスのバージョンもとても良い。

The Beatles, ‘Let It Be’

ビートルズがシングルとしてリリースした楽曲で、全英シングルチャートで最高2位、全米シングルチャートでは1位を記録した。同タイトルのアルバムにはフィル・スペクターがプロデュースした別バージョンが収録されている。

ポール・マッカートニーによって書かれた楽曲で、歌詞に登場する「Mother Mary」は亡き母であるメアリー・マッカートニーのことであるとされたり、聖母マリアのことだと解釈されたりする。

タイトルにはメンバーの意識がバラバラになっていたビートルズの状態について、「なすがままに」というお告げを聞いたというような意味がある、といわれていた。

ビートルズの楽曲の中でも一般的に特に有名なうちの1曲で、英語の学習教材テープによく分からない人が歌っているバージョンが収録されていることもあった。

Paul McCartney, ‘Maybe I’m Amazed’

ポール・マッカートニーのソロデビューアルバム「マッカートニー」に収録された楽曲で、邦題は「恋することのもどかしさ」である。このときにはシングルとしてリリースされなかったのだが、1977年のライブアルバム「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」からカットされ、全米シングルチャートで最高10位を記録した(このときには邦題が「ハートのささやき」になっている)。

ビートルズが解散した直後に書かれた楽曲であり、困難のときを支えてもくれていた妻のリンダ・マッカートニーに対する想いを歌ったストレートなラヴソングになっている。楽曲のクオリティとエモーショナルなボーカルパフォーマンスが感動的である。

Joni Mitchell, ‘Big Yellow Taxi’

ジョニ・ミッチェルのアルバム「レディズ・オブ・ザ・キャニオン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高67位、全英シングルチャートで最高11位を記録した。

ジョニ・ミッチェルがハワイを訪れたときに美しい自然が破壊され、駐車場ばかりが造られていることに心を痛めて書いた楽曲だといわれる。

曲の終盤で、ジョニ・ミッチェルが通常よりも高低差がある音程で歌った後で笑っているところもとても良い。

1974年にはアルバム「マイルズ・オブ・アイルズ」からライブバージョンがシングルカットされ、全米シングルチャートで最高24位を記録した。

Free, ‘All Right Now’

イギリスのロックバンド、フリーのアルバム「ファイアー・アンド・ウォーター」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位、全米シングルチャートで最高4位を記録した。

ダラムの大学で行われたライブに30人ぐらいしか観客があつまらず、演奏もいまひとつ楽しめないまま終わったときに、メンバーのアンディ・フレイザーが悪い雰囲気を払拭するために「オール・ライト・ナウ」と歌ったことから生まれた楽曲だといわれる。

全英シングルチャートでは1973年に最高15位、1991年に最高8位とリバイバルヒットを記録している。