洋楽ロック&ポップス名曲1001:1968, Part.2

The Band, ‘The Weight’

ザ・バンドのデビューアルバム「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高63位、全英シングルチャートで最高21位を記録した。

カントリーやフォーク、R&Bといったルーツ的な音楽からの影響を取り入れた音楽性はひじょうにユニークであり、後にアメリカーナなどと呼ばれる音楽にも強い影響を与えた。

ペンシルバニア州ナザレの地名が歌詞に出てくるのは、マーティンのギター工場がそこにあったことに由来している。他にも歌詞には実在の人物をモデルにしたキャラクターがたくさん登場する。

当時それほど大きくヒットしたというわけではないのだが、クラシックロックの名曲としてよく知られている。マーティン・スコセッシ監督で解散コンサートを映像化した「ラスト・ワルツ」もラジオスポットなどでもこの曲が使われていた。

Harry Nilsson, ‘Everybody’s Talkin’’

ハリー・ニルソンのアルバム「空中バレエ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高6位、全英シングルチャートで最高23位を記録した。邦題は「うわさの男」である。

シンガーソングライターのフレッド・ニールが作詞・作曲し、自身の楽曲としてリリースしていたのがオリジナルだが、映画「真夜中のカーボーイ」でも使われたハリー・ニルソンのカバーバージョンによって有名になった。ハリー・ニルソンはこの曲でグラミー賞を受賞してもいる。

Cream, ‘White Room’

クリームのアルバム「クリームの素晴らしき世界」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高28位、全米シングルチャートで最高6位を記録した。

タイトルはメンバーのジャック・ブルースの友人でこの曲の作詞を手がけたピート・ブラウンが住んでいた白い部屋に由来していて、憂鬱と絶望が歌われている。

ジミ・ヘンドリックスからアイデアを得てワウワウペダルを用いたエリック・クラプトンのギターソロはひじょうに印象的であり、「ギター・ワールド」誌が選んだ史上最高のワウワウソロではジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」に次ぐ2位にランクインした。

Big Brother & The Holding Company, ‘Piece of My Heart’

ジャニス・ジョプリンがリードボーカルを務めたビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのアルバム「チープ・スリル」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高12位を記録した。邦題は「心のカケラ」である。

オリジナルはアレサ・フランクリンの姉でもあるアーマ・フランクリンのヒット曲で、恋をする女性が男性に夢中になるあまり、もしも想いを受け止めてくれるのならば心の一片を切り離してもかまわない、というようなことを歌った内容となっている。

このカバーバージョンではサイケデリックなギターやジャニス・ジョプリンのエモーショナルでアグレッシブなボーカルがひじょうに印象的であり、オリジナルとはテイストがかなり違ったものになっている。

The Beatles, ‘Hey Jude’

ビートルズが1968年8月にリリースしたシングルで、少なくとも12カ国のシングルチャートで1位に輝き、イギリスやアメリカでは年間1位を記録してもいる。全米シングルチャートでは、史上初めて初登場で10位以内にランクインした楽曲となった。

約7分11秒とシングル曲としてはかなり長めであり、重厚なコーラスとオーケストラが印象的である。両親が離婚したばかりで辛い境遇にあるジョン・レノンの息子、ジュリアンを思いやってポール・マッカートニーが書いた楽曲だが、本人がその事実を知ったのはそれよりもかなり後になってからであった。

文学作品で最も言及されるポップソングについての研究では、エルヴィス・プレスリー「ハートブレイク・ホテル」やレッド・ツェッペリン「天国への階段」などを抑えて、この曲が1位に選ばれている。

Marvin Gaye, ‘I Heard It Through the Grapevine’

マーヴィン・ゲイのシングルで、アメリカとイギリスのシングルチャートにおいていずれも1位に輝いている。邦題は「悲しいうわさ」である。

最初にスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズがレコーディングし、その後、グラディス・ナイト&ザ・ピップスのバージョンが全米シングルチャートで最高2位のヒットを記録するが、さらにマーヴィン・ゲイがそれを上回った。

パートナーが以前の恋人とよりを戻し、自分を捨てようとしている可能性が高いという、いかんともしがたい状況について歌われていて、裏切りや疑念をあらわすかのような不穏なサウンドと、悲しくてどうにかなってしまいそうな気持ちを歌うマーヴィン・ゲイのボーカルが激しく心に迫ってくる。

日本のロックバンド、GRAPEVINEがバンド名の由来にした曲としても知られる。