洋楽ロック&ポップス名曲1001:1966, Part.1

The Walker Brothers, ‘The Sun Ain’t Gonna Shine Anymore’

ウォーカー・ブラザーズの代表曲で、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高13位を記録した。邦題は「太陽はもう輝かない」である。

元々はフォー・シーズンズのフランキー・ヴァリに提供された楽曲だったがそれほど売れず、翌年にウォーカー・ブラザーズがカバーしたところ大ヒットしたようだ。

フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドから影響を受けていると思われ、愛を失った状態における孤独と絶望のようなものがドラマティックに表現されていてとても良い。大滝詠一「恋するカレン」はこの曲にもインスパイアされていると思われる。

日本ではアイドル的な人気も高かったようだ、というようなことをFM TOKYOのラジオ番組でスピッツの草野マサムネが「ミュージック・ライフ」のバックナンバーを見ながら言っていた。

The Who, ‘Substitute’

ザ・フーのヒットシングルで、全英シングルはチャートで最高5位を記録した。邦題は「恋のピンチヒッター」である。

ピート・タウンゼントがスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」にインスパイアされて書いたというこの曲はとてもカッコいいロックチューンなのだが、歌詞の内容は僕は彼女が本当に望んでいる男の代役にすぎない、となかなか自虐的でもあるところがとても良い。

CDが普及しはじめた頃に最も手に入れやすいザ・フーのベストアルバムだったような気がする「ザ・シングルズ」のは、1曲目に収録されていた。

セックス・ピストルズ、ラモーンズ、ブラーなどがこの曲をカバーしている。

The Byrds, ‘Eight Miles High’

ザ・バーズがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングル・チャートで最高14位、全英シングル・チャートで最高24位を記録した。邦題は「霧の8マイル」で後にアルバム「霧の5次元」にも収録された。

シタール奏者のラヴィ・シャンカールやジョン・コルトレーンの音楽からも影響を受けたといわれるこの曲は、サイケデリックロックの代表曲としても知られている。

ロンドンへのフライトやイギリスツアーでの体験にインスパイアされた楽曲だが、ドラッグの影響を連想させるところもあり、アメリカのラジオで放送禁止になったりもしていたようだ。

Percy Sledge, ‘When a Man Loves a Woman’

アメリカはアラバマ州出身のR&Bシンガー、パーシー・スレッジのデビューシングルで、全米シングル・チャートで1位に輝いた。全英シングルチャートでは最高4位だったが、1987年にリバイバルしたときには最高位を2位に更新している。邦題は「男が女を愛する時」である。

パーシー・スレッジ自身の失恋をモチーフにしたというソウルフルでエモーショナルなバラードで、様々な映画やテレビ番組で使われたこともあって、時代を超えて親しまれている。

日本では上田正樹、世良公則、西城秀樹などによってもカバーされている。

The Troggs, ‘Wild Thing’

イギリスのロックバンド、トロッグスのヒット曲で全英シングル・チャートで最高2位、全米シングルチャートで2週連続1位を記録した。邦題は「恋はワイルド・シング」である。

この曲を最初にレコーディングしたのはニューヨークのザ・ワイルド・ワンズというバンドだったが、これはあまり売れなかった。

トロッグスはヒットしなかったのだが、マネージャーに紹介されたこの曲を聴いて、あまりにも奇妙でレコーディングせずにはいられなくなり、カバーバージョンをリリースしたところ大ヒットした。

アメリカではいろいろあって2つのレーベルからリリースされていたのだが、チャートではこれらの売り上げが合算されていた。

オリジナルでは口笛でレコーディングされていたパートがオカリナで演奏され、それがまた印象的であった。

ジミ・ヘンドリックスがモントレー・ポップ・フェスティバルでこの曲を演奏中にギターに火をつけて燃やしたことや、日本ではロサンゼルスのロックバンド、Xのカバーバージョンがプロレスラー、大仁田厚の入場テーマ曲として使われたことでも知られる。

James Brown, ‘It’s a Man’s Man’s Man’s World’

ジェームス・ブラウンがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングルチャートで最高8位、R&Bチャートでは1位を記録した。

男性優位の社会ではあるが、女性がいなければまったく意味がない、というような歌詞は、ジェームス・ブラウンの共作者でかつての恋人でもあったベティ・ジーン・ニューサムによって書かれている。

タイトルは1963年公開のコメディー映画「おかしなおかしなおかしな世界」(原題「It’s a Mad, Mad, Mad, Mad World」)にちなんでもいる。

The Rolling Stones, ‘Paint It Black’

ローリング・ストーンズがシングルとしてリリースした楽曲で、イギリスやアメリカのシングルチャートで1位に輝いた。邦題は「黒くぬれ!」である。

すべてを黒く塗りつぶしたいというような、厭世的で絶望的な気分が表現されていて、ローリング・ストーンズの不良性のようなものがあらわれた楽曲だということもできる。

ブライアン・ジョーンズによるシタールのサウンドも、楽曲に不穏な感じをあたえていてとても良い。

The Beach Boys, ‘Wouldn’t It Be Nice’

ビーチ・ボーイズのアルバム「ペット・サウンズ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高8位を記録した。邦題は「素敵じゃないか」である。

カップルが結婚をして愛を育んでいくことについてのロマンティックな想像をウォール・オブ・サウンド的な演奏をバックに歌ったラブソングで、ポップミュージック史上最も優れたアルバムと評されることもある「ペット・サウンズ」の1曲目に収録されている。

ブライアン・ウィルソンが義理の妹にたいして抱いていた混乱した恋心にインスパイアされ、書かれた楽曲だともいわれる。

The Beach Boys, ‘God Only Knows’

ビーチ・ボーイズのアルバム「ペット・サウンズ」の収録曲で、「素敵じゃないか」のB面としてシングルカットもされた。全米シングルチャートでは最高39位を記録し、邦題は「神のみぞ知る」である。「渋谷系」的な音楽リスナーには「ドルフィン・ソング」案件としても知られる。

ブライアン・ウィルソンによる楽曲とアレンジ、カール・ウィルソンのボーカルももちろんなのだが、ピーター・アッシャーによる歌詞がとても良い。人を愛することはとても素敵ではあるのだが、それが深くなっていくと、失うことがとても不安になる。その感覚がとても巧く表現されているように思える。

美しさと狂気とは紙一重である、というような真実を思い起こさせてくれたりもする、ポップミュージック史上最高のラブソングの1つである。