洋楽ロック&ポップス名曲1001:1960

Sam Cooke, ‘Wonderful World’

歴史や生物学や科学やフランス語についてはよく分からないのだが、あなたを愛しているということは分かっているし、もしもあなたも同じだとしたらなんて素晴らしい世界だろう、というようなことが歌われたサム・クックのヒット曲である。忌野清志郎がこの曲を歌詞の意味も含め、ラジオ番組で紹介するのを聴いた記憶がある。

ルー・アドラーとハーブ・アルパートのコンビによって書かれ、サム・クックが歌詞をより教育寄りにしたという。ハーマンズ・ハーミッツ、ジェームス・テイラー、ポール・サイモンにカバーされたり映画「アニマルハウス」で使われたりするが、1986年には前年の映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」やリーバイスのCMに使われたことによってリバイバルし、全英シングルチャートで最高2位を記録した。

The Drifters, ‘There Goes My Baby’

ドリフターズのマネージャーでグループ名の所有者であるジョージ・トレッドウェルがメンバー全員を解雇し、リードボーカリストのベン・E・キングをはじめまったく新しいラインナップで初めてリリースしたシングルで、全米シングルチャートで最高2位、R&Bチャートでは1位を記録した。

稀代のソングライターチーム、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーがプロデュースしていて、オーケストラやストリングスをフィーチャーしたアレンジは当時としては画期的であった。

後にウォール・オブ・サウンドで有名になるフィル・スペクターは、リーバーとストーラーのもとで音楽制作の手法などを習得した。

Roy Orbison, ‘Only the Lonely (Know the Way I Feel)’

ロイ・オービソンにとって最初のヒット曲で全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートで1位を記録した。

ロイ・オービソンとジョー・メルソンが共作したこの曲はエルヴィス・プレスリーとエヴァリー・ブラザーズに売り込んだのだが、断られたため自分たちでレコーディングすることになった。

ストリングセクションとドゥーワップのバックシンガーを起用したユニークなサウンドとロイ・オービソンの力強くも悲しげなボーカルは、孤独とはどのようなものかについて歌ったこの曲の魅力を最大限に増強しているといえる。

The Ventures, ‘Walk – Don’t Run’

「急がば廻れ」の邦題でも知られるこの曲はジャズギタリストのジミー・スミスが作曲したインストゥルメンタル曲だが、ザ・ベンチャーズがサーフロック的なアレンジでカバーしたバージョンが全米シングルチャートで最高2位のヒットを記録して、とても有名になった。

ザ・ベンチャーズはアメリカやイギリスなどでももちろんとても人気があったのだが、60年代に日本の若者たちの間で起こったエレキブームを象徴する存在として知られる。

欧陽菲菲「雨の御堂筋」、渚ゆう子「京都の恋」といったベンチャーズ歌謡といわれるものまでヒットするようになるのだが、洋楽ロック&ポップス的にはやはりこれが代表曲ということになるような気がする。

Chubby Checker, ‘The Twist’

ハンク・バラードとミッドナイターズがシングル「ティアドロップス・オン・ユア・レター」のB面としてリリースしたのが最初だが、ファッツ・ドミノによるカバーバージョンが全米シングルチャートで1位を記録する大ヒットとなった。

ツイストダンスの流行を反映した楽曲であり、続編ともいえる「レッツ・ツイスト・アゲイン」も後にヒットした。

1988年にはヒップホップグループのファット・ボーイズがチャビー・チェッカーをフィーチャーしたカバーバージョンをリリースし、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。

Ray Charles, ‘Georgia on My Mind’

ホーギー・カーマイケルとステュアート・ゴレルによって1930年に作詞作曲されたスタンダードナンバーのレイ・チャールズによるカバーバージョンで、全米シングルチャートで1位を記録した。

邦題が「我が心のジョージア」であるように、アメリカ合衆国ジョージア州をイメージした楽曲になっていて、後にジョージア州歌にもなった。

レイ・チャールズもジョージア州出身であり、この曲は代表作の1つとして広く知られる。

Etta James, ‘At Last’

1941年公開のミュージカル映画「銀嶺セレナーデ」のために書かれた曲らしく、グレン・ミラーのオーケストラがレコーディングしていたようなのだが、エタ・ジェームスによってカバーされたバージョンがスタンダード的によく知られている。

タイトルの「アット・ラスト」とは「ついに」とか「やっと」を意味することを、日本の英語教育では中学生あたりで教えることになっているような気がするが確証はない。それはそうとして、やっと遂に恋が成就して一人ぼっちの寂しい日々は終わるという喜びがドラマティックに歌われているのでとても良い。

The Shirelles, ‘Will You Love Me Tomorrow’

シレルズと表記されていたこともあったような気もするのだが、最近ではシュレルズで統一されているのだろうか、いずれにしてもガールズポップグループである。曲はジェリー・ゴフィンとキャロル・キングによるもので、後にキャロル・キングの歴史的名盤アルバム「つづれおり」にもセルフカバーバージョンが収録された。

恋人との関係性について、これはひと時の快楽にすぎないのか、それとも永続性のある宝物なのか、というような悩みは古今東西にかかわらず深刻かつ共感されやすいテーマである。しかし、当時のラジオではセクシーすぎるという理由で放送禁止になるケースも一部ではあったようだ。全米シングルチャートでは1961年1月30日付から2週連続で1位に輝いている。