洋楽ロック&ポップス名曲1001:1955
Fats Domino, ‘Ain’t That a Shame’
ファッツ・ドミノがデイヴ・バーソロミューと共作した失恋ソングで、ビルボードのR&Bチャートで1位、ポップチャートでも最高10位を記録した。
R&Bの楽曲がポップマーケットでもヒットした初期の例の1つだが、これはパット・ブーンによるカバーバージョンがヒットして、ファッツ・ドミノのオリジナルも注目されるようになったためである。
他にもフォー・シーズンズ、ジョン・レノン、ポール・マッカートニーらがこの曲をカバーしているのだが、チープ・トリックのアルバム「チープ・トリックat武道館」からシングルカットされたバージョンが特に有名である。
Bo Diddley, ‘Bo Diddley’
ボ・ディドリー自身の名前をタイトルにした楽曲で、ビルボードのR&Bチャートで2週連続1位を記録したが、ポップチャートにはランクインしていない。
とはいえ、この曲がその後のポップミュージックにあたえた影響はひじょうに大きく、特にボ・ディドリー・ビートと呼ばれる独特のリズムが有名である。
アフリカのハムボーンと呼ばれる体のいろいろなところを叩いてリズムを生み出す技法を取り入れ、マラカスやギターの演奏を組み合わせたものと解釈されている。
イギリスではバディ・ホリーの没後にリリースされたカバーバージョンが全英シングルチャートで最高4位のヒットを記録した。
The Platters, ‘Only You (And You Alone)’
アメリカのコーラスグループ、プラターズによるラヴバラードで、ビルボードのR&Bチャートで7週連続1位、ポップチャートでは最高5位を記録した。
当初はレコーディングされたもののリリースされていなかったのだが、レーベル移籍後に再録音したバージョンを発売したところ大ヒットした。
「オーオーオー、オンリー・ユー」という印象的な部分はリハーサル中にリードボーカリスト、トニー・ウィリアムズのボーカルが途切れたハプニングをそのまま採用したものだという。
Chuck Berry, ‘Maybellene’
チャック・ベリーにとって最初のヒット曲であり、全米シングルチャートで最高5位、R&Bチャートでは1位に輝いている。ボブ・ウィルス&テキサステキサス・ブルーボーイズが1938年にレコーディングした「アイダ・レッド」という曲がベースになってはいるのだが、この曲においてはまさに発明ともいえるチャック・ベリーのロックンロールギターサウンドが最大の特徴となっている。
不誠実な恋人をめぐってのカーチェイスという若者文化をも取り入れた内容は、後にビーチ・ボーイズのサーフィンやホットロッドをテーマにした楽曲にも影響をあたえたと思われる。タイトルはチェスレコードの創設者、レナード・チェスがスタジオの床に転がっていたマスカラの箱のブランド名にインスパイアされたようだ。
共作者としてDJ、アラン・フリードの名前がクレジットされているが、実際には作曲にかかわってはいなく、ラジオ番組でレコードをかける見返りに印税が入るというからくりになっていて、後にペイオラ・スキャンダルとして問題視されることになる。
Elvis Presley, ‘Mystery Train’
メンフィス出身のブルースミュージシャン、ジュニア・パーカーが作曲し、サンレコードからリリースした楽曲だが、後にエルヴィス・プレスリーがシングル「アイ・フォーガット・トゥ・リメンバー・トゥ・フォーゲット」のB面としてリリースしたバージョンが有名になった。
特に大きくヒットしたわけでもないのだが、ミステリアスなムードとエルヴィス・プレスリーの素晴らしいボーカルパフォーマンスが高く評価されている。
音楽評論家、グリール・マーカスの名著「ミステリー・トレイン: ロック音楽にみるアメリカ像」や永瀬正敏と工藤夕貴も出演したジム・ジャームッシュ監督の映画「ミステリー・トレイン」のタイトルになったりもした。
Little Richard, ‘Tutti Frutti’
ロックンロール界の偉大なるレジェンド、リトル・リチャードの最初のヒット曲で、全米シングル・チャートでは最高18位を記録している。
「アワッバッパルバッパワッバンブーン」というように聴こえなくもないフレーズの意味はほよく分からないのだが、ロックンロール史上最もエキサイティングな瞬間の1つであることは間違いないだろう。
リトル・リチャードがまだ売れず皿洗いをして生計を立てていた頃、次から次へと洗うべき食器が運ばれてくる状況にブチ切れて思わず発せられたフレーズだともいわれている。
元々はより性的な内容の曲だったのだが、レコード化するにあたり、歌詞がマイルドに書きかえられたようだ。
Johnny Cash, ‘Folsom Prison Blues’
ジョニー・キャッシュの初期のレコーディングでビルボードのカントリーチャートで最高4位を記録したが、後にフォルサム州立刑務所の囚人たちを前にしての演奏を収録した「アット・フォルサム・プリズン」収録のバージョンがより有名になった。
アメリカ空軍に所属して西ドイツに駐留していたときに見た映画「インサイド・ザ・ウォール・オブ・フォルサム・プリズン」にインスパイアされたというこの曲で特に印象的な「リノで男を撃ったのはただ死ぬのを見るためだった」という歌詞は、人を殺す最悪の理由というのは何だろうかと考えた末に書かれたものだという。