Lazarus – The Boo Radleys (1992)
リバプール出身のインディー・ロック・バンド、ブー・ラドリーズのシングルで、後にアルバム「ジャイアント・ステップス」にも収録された。初期はシューゲイザー的な音楽を得意としていたが、この曲においてはレゲエ/ダブ的なベースラインにシューゲイザー的な轟音ギター、カーペンターズかビー・ジーズあたりを思い起こさせるキャッチーなコーラスの組み合わせというかなりユニークなことをやっている。こういった実験の成果ともいえる「ジャイアント・ステップス」は「NME」の年間ベスト・アルバムでは2位、「SELECT」では1位に選ばれるなど高評価を得た。1995年にはブリットポップ的な「ウェイク・アップ・ブー!」でトップ10ヒットも記録することになる。
Killing In The Name – Rage Against The Machine (1992)
ヘヴィーでラウドなロックにラップ的なボーカルを取り入れた音楽性が特徴のレイジ・アゲインスト・ザ・マシンの代表曲で、連呼される「Fuck you, I won’t do what you tell me」のフレーズが印象的なプロテストソングである。2009年のクリスマスシーズンにはイギリスのオーディション番組「Xファクター」からの曲に抵抗するキャンペーンによって、全英シングル・チャートで1位に輝いている。
It Was A Good Day – Ice Cube (1992)
アイス・キューブのアルバム「略奪者」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高15位を記録した。レイドバックしたトラックに乗せて、今日がいかに良い日だったかということについて語られるのだが、その中には仲間が誰も殺されなかったことも挙げられている。この年、警官の人種差別的な暴力を原因とした暴動が起こり、社会問題となっていた。
Nuthin’ But A ‘G’ Thang – Dr. Dre (1992)
元N.W.A.のラッパーにして音楽プロデューサー、ドクター・ドレーのソロ・デビュー・アルバム「ザ・クロニック」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。ソロ・デビュー前のラッパー、スヌープ・ドッグをフィーチャーしている。Gファンクと呼ばれるヒップホップの新しいサブジャンルを象徴する楽曲として知られる。
Animal Nitrate – Suede (1993)
スウェードの3枚目のシングルで、全英シングル・チャートで最高7位と初のトップ10入りを果たした。この曲を収録したデビュー・アルバム「スウェード」は全英アルバム・チャートで初登場1位に輝き、この時点でUKインディー・ロックシーンにおいて最も旬なバンドとして広く認知される。この年、「Yanks go home!」の見出しも踊る雑誌「SELECT」のいわゆるブリットポップ特集号(他にはセイント・エティエンヌ、デニム、パルプ、ジ・オトゥールズを掲載)の表紙も飾る。
Rebel Girl – Bikini Kill (1993)
この頃、女性をメンバーとするパンク・ロックバンドなどによるライオット・ガールのシーンも注目をあつめ、ビキニ・キルはその中心的なバンドであった。この曲にはいくつかのバージョンが存在するが、いずれも知的でエネルギッシュなポップ感覚に溢れていてとても良い。シングル・バージョンでは元ランナウェイズのメンバーでザ・ブラックハーツとの「アイ・ラヴ・ロックンロール」でも知られるジョーン・ジェットがプロデュースし、ギターとコーラスで参加もしている。
Marbles – Tindersticks (1993)
ノッティンガム出身のインディー・ロックバンド、ティンダースティックスの音楽性はストリングスやホーンなども効果的に用いたチャンバー・ポップなどとも呼ばれるタイプのもので、盛り上がりつつあったブリットポップ勢とは、またかなり異なっていた。この曲を収録したデビュー・アルバム「ティンダースティックス」は、雑誌「メロディ・メイカー」で年間ベスト・アルバムの1位に選ばれていた。
Loser – Beck (1993)
ベックの音楽性はヒップホップとカントリーやフォークをミックスしたようなひじょうにユニークなものであり、ローファイというのもキーワードの1つとなっていた。そして、初期の代表曲となったこのシングルのタイトル「Loser」とはすなわち負け犬のことであり、高度資本主義社会の成れの果てが生んだ分断を浮き彫りにしつつあったのかもしれない。
Regret – New Order (1993)
ニュー・オーダーの約4年ぶりのアルバム「リパブリック」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高4位のヒットを記録した。大人になったニュー・オーダーという感じでもあり、ひじょうに明るくてキャッチーである。それでいて、ニュー・オーダー以外の何ものでもありえない特別な個性はじゅうぶんに感じられる。
Human Behaviour – Bjork (1993)
アイスランド出身のインディー・ロックバンド、シュガーキューブスからとても個性的なボーカリスト、ビョークがソロ・デビューということで大いに話題になった。しかも、元ソウル・Ⅱ・ソウルのネリー・フーパーがプロデュースにかかわったトレンディーなクラブ・ミュージック仕様で、「NME」や「メロディ・メイカー」よりも「i-D」や「THE FACE」などが似合いそうな感じである。とはいえ、個性的すぎるボーカルはじゅうぶんに生かされている。この曲も収録したソロ・デビュー・アルバム、その名も「デビュー」は「NME」の年間ベスト・アルバム1位に選ばれた。