1972年の洋楽アルバム名盤ベスト20 (20-11)

1972年にリリースされた洋楽アルバムから、これは名盤なのではないかと思える20タイトルを挙げていきたい。

20. Paul Simon – Paul Simon

ポール・サイモンの2作目(サイモン&ガーファンクル解散後では初)のソロアルバムで、イギリスや日本のアルバム・チャートで1位に輝いた。

フォークロック的なシンガーソングライターのアルバムとしてひじょうに充実しているのみならず、ラテンやジャズ、レゲエなどからの影響も取り入れられている。

ジャマイカでレコーディングされた「母と子の絆」や、ブラジルの打楽器であるクイーカを用いた「僕とフリオと校庭で」がヒットした。

19. Honky Château – Elton John

エルトン・ジョンの5作目のアルバムで、タイトルはパリの古城を改築したレコーディングスタジオに由来する。エルトン・ジョンが全米アルバム・チャートで7作連続1位を記録したうちの最初の作品である。

バーニー・トーピンとの共作による楽曲はいずれもクオリティーが高く、バラエティーにとんでいる。アルバムタイトルにも影響しているホンキートンク調のピアノが全体的にとても良い味を出している。全英シングル・チャートで最高2位のヒットとなった「ロケット・マン」を収録している。

18. No Secrets – Carly Simon

カーリー・サイモンの3作目のアルバムで、全米アルバム・チャートで5週にわたり1位を記録した。先行シングルとしてリリースされた「うつろな愛(原題:You’re So Vain)」にはクレジットはされていないが、ミック・ジャガーがバッキングボーカルで参加していて、こちらも全米シングル・チャートで1位に輝いている。

ビートルズ「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」、デヴィッド・ボウイ「ハンキー・ドリー」などでも知られるロンドンのトライデント・スタジオでレコーディングされ、ジェームス・テイラーのカバーである「ナイト・アウル」にはポール・マッカートニーが妻のリンダと共にバッキングボーカルで参加している。

17. Young, Gifted And Black – Aretha Franklin

アレサ・フランクリンの18作目のアルバムで、全米アルバム・チャートで最高11位を記録した。クイーン・オブ・ソウルとしてのパワフルなボーカルと洗練されたサウンドとが絶妙にマッチした作品である。

タイトルトラックはニーナ・シモンのカバーだが、これ以外にもビートルズ「ロング・アンド・ワインディング・ロード」なども取り上げている。ファンキーな「ロック・ステディ」もとても人気の曲である。

アレサ・フランクリンはこのアルバムによって、グラミー賞の最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞を受賞した。

16. Let’s Stay Together – Al Green

アル・グリーンの4作目のアルバムで、全米アルバム・チャートで最高8位を記録した。タイトルトラックは90年代には映画「パルプ・フィクション」のサウンドトラックにも使われた、ラヴバラードの名曲である。

素晴らしい演奏に乗せて、アル・グリーンの様々なニュアンスを表現するボーカリストとしての魅力が堪能できる。ビー・ジーズ「傷心の日々(原題:How Can You Mend A Broken Heart?)」のカバーもとても良い。

15. I’m Still In Love With You – Al Green

アル・グリーンの5作目のアルバムで、前作から約9ヶ月後にリリースされ、全米アルバム・チャートでは最高4位を記録した。タイトルトラックや「ラヴ・アンド・ハピネス」といった名曲や、ロイ・オービソン「プリティ・ウーマン」などのカバーも収録している。

ボーカルパフォーマンスがやはり素晴らしく、より洗練された印象のサウンドにもマッチしている。

14. The Slider – T. Rex

T・レックスのティラノザウルス・レックス時代から数えると7作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高4位を記録した。

「テレグラム・サム」「メタル・グールー」という2曲を収録し、これぞグラムロックという感じのグラマラスでユニークな魅力に溢れている。シングル曲以外がいま一つというような評価もされがちではあるのだが、それも含めていかにもティーニーボッパー的で最高であり、そもそも唯一無二のポップ感覚は群を抜いている。

リンゴ・スターによって撮影されたというジャケット写真も、カッコよくてとても良い。

13. #1 Record – Big Star

ビッグ・スターのデビューアルバムで、当時はプロモーション不足などの要因であまり売れていなく、アルバム・チャートにランクインしたという記録もない。

キャッチーなメロディーと美しいハーモニーが特徴で、パワーポップの名盤として後に評価されている。ティーンエイジ・ファンクラブなどが特に影響を受けているといわれていて、1993年のアルバム「サーティーン」はタイトルをこのビッグ・スターのデビューアルバム収録曲から取っている。

12. Pink Moon – Nick Drake

ニック・ドレイクの3作目にして最後のアルバムで、レーベルはわりと熱心にプロモーションしたものの、当時はあまり売れなかったらしく、アルバム・チャートにランクインした記録はない。

やはりあまり売れなかったが後に高評価されることになる「ファイヴ・リーヴズ・レフト」「ブライター・レイター」とは異なり、このアルバムはニック・ドレイクによるボーカル、ギター、曲によってはピアノの演奏のみによってレコーディングされていて、収録時間は約28分22秒である。この2年後に、ニック・ドレイクは26歳の若さで亡くなっている。

後に高く評価され、1999年にはフォルクスワーゲンのCMに使われることによって、多くの人々に知られるようにもなった。

11. Neu! – Neu!

ノイ!のデビューアルバムで、当時の売上は約3万枚でアルバム・チャートにランクインした記録もないのだが、こういったタイプのレコードとしては売れた方だったという。

クラフトワークを脱退したクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターによって結成された旧西ドイツのバンドがノイ!であり、その音楽性は後のニュー・ウェイヴやアンビエント音楽に大きな影響をあたえたといわれる。

収録曲の「ネガティヴランド」では、日本の大正琴がひじょうにユニークな使われ方をされている。