10. Combat Rock – The Clash
ザ・クラッシュの5作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高2位を記録した。
「ロンドン・コーリング」「サンディニスタ!」といったいろいろな音楽から影響を受けた曲数が多く収録時間も長いアルバムに比べるとシンプルになったような印象は受けるのだが、それでもひじょうにユニークな音楽性であることは間違いない。
そして、「ロック・ザ・カスバ」が全米シングル・チャートで最高8位のヒットを記録したのも印象的であった。バンドが存続していた期間に限っていえば、ザ・クラッシュの全英シングル・チャートでの最高位は「ロンドン・コーリング」で記録した11位で、トップ10ヒットは1曲もなかったこともあり、このアメリカでのヒットにはインパクトがあった。
解散からしばらく経った1991年にこのアルバムからのシングルであった「ステイ・オア・ゴー(原題:Should I Stay Or Should I Go)」リーバイスのCMに使われたことによってリバイバルし、全英シングル・チャートで1位に輝いた。
「80s ディスク・ガイド」という本が1998年にリブロポートから出版されていて、小山田圭吾と常盤響の「青春放談」が掲載されている。小山田圭吾は80年代のお気に入りアルバム10枚で真っ先にこのアルバムを挙げているのだが、よく見ると一旦「ロンドン・コーリング」と書いてから消して「コンバット・ロック」に直していたようである。
「ロンドン・コーリング」は1979年の年末にリリースされたので70年代のアルバムなのだが、アメリカ盤は80年になってからリリースされたからといって「ローリング・ストーン」が80年代ベストアルバムの1位に選んでいたりていろいろややこしい。
9. English Settlement – XTC
XTCの5作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高5位を記録した。
イギリスを代表するロックバンドの1つともいえるXTCだが、全英アルバム・チャートで10位以内にランクインしたのはこのアルバムのみである。また、唯一のトップ10ヒットである「センシズ・ワーキング・オーヴァータイム」もこのアルバムに収録されている。
初期のニューウェイヴ的な音楽性から脱し、バロックポップ的になっていく過程のアルバムともいえ、いずれもの良さが程よいバランスで楽しむことができる。
アコースティックなサウンドや工夫が凝らされたアレンジが特徴で、ブリティッシュポップとしての魅力もフルに発揮されている。
8. Shoot Out The Lights – Richard & Linda Thompson
イギリスの夫婦デュオ、リチャード&リンダ・トンプソンの6作目にして最後のアルバムである。
レーベルとの契約を失った状態でジェリー・ラファティーが出資とプロデュースを行うが、やはりリリースには至らなかった。それからしばらくして再レコーディングしたバージョンに新曲を加えたものが小さなレーベルからリリースされると、フォークロック的な楽曲と演奏の素晴らしさが批評家から絶賛されたりもする。
しかし、その頃には夫婦はすでに離婚していて、デュオとしてはこれが最後のアルバムとなった。
7. Midnight Love – Marvin Gaye
マーヴィン・ゲイの17作目にして最後のアルバムで、全米アルバム・チャートで最高7位を記録した。
ソウル/R&Bにドラムマシンやシンセサイザーを効果的に用いたという点において画期的であり、後のこのジャンルに大きな影響をあたえたと思われる。
長年在籍していたモータウンからCBSに移籍して最初のアルバムであり、一般大衆に確実に届くことを意図して制作されていたともいわれている。
6. The Lexicon Of Love – ABC
ABCのデビューアルバムで、全英アルバム・チャートで1位に輝いた。
ロマンスやそれにまつわる傷心などをテーマにしたコンセプトアルバムでもあり、優雅で上品でありながらファンキーでポップな音楽性が大絶賛されていた。
「ルック・オブ・ラヴ」「ポイズン・アロウ」「ショウ・ミー」「涙まだまだ(Tears Are Not Enough)」がヒットし、日本では「バレンタイン・デイ」も独自にシングルカットされていた。
パーフェクトなポップミュージックの一例ともいえるアルバムで、かつてシーケンサーを購入すると明らかに「ルック・オブ・ラヴ」をベースにしていると思われるパターンがプリセットされていたりもした。
5. Imperial Bedroom – Elvis Costello & The Attractions
エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズの6作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高6位を記録した。
プロデューサーにビートルズのエンジニアとしてジェフ・エメリックを起用し、音楽性はそれまでの作品に比べ、よりバラエティーにとんだものになっている。
また、ボーカルスタイルにも曲によって様々なパターンが試みられていて、特に哀愁を帯びたタイプの楽曲がとても良い。
4. 1999 – Prince
プリンスの5作目のアルバムで、全米アルバム・チャートでの最高位は9位だったのだが、1983年の年間チャートでは5位だったことから、いかにロングセラーだったかが分かる。また、2016年にプリンスが亡くなった際には再度ランクインし、最高位を7位に更新している。
「リトル・レッド・コルヴェット」が全米シングル・チャートで初のトップ10入りを果たし、プリンスの時代が到来するきっかけとなった。
シンセサイザーとドラムマシンを効果的に用いたサウンドはひじょうにユニークであり、ソウル/R&Bがベースにありながら、シンセポップやニューウェイヴ的な気分をも感じさせ、時代のトレンドにもマッチしていたように思える。
3. The Nightfly – Donald Fagen
スティーリー・ダンを解散したドナルド・フェイゲンのソロアーティストとして初のアルバムで、全米アルバム・チャートで最高11位を記録した。
AORの名盤として知られるこのアルバムは、ドナルド・フェイゲンにとってひじょうに個人的な内容でもあるという。
ジャケットにはディスクジョッキーに扮したドナルド・フェイゲンが写っていて、時計の針は午前4時9分を指している。
音楽的にはドナルド・フェイゲンが少年時代に聴いていた深夜のラジオ放送をイメージしていて、ノスタルジックでイノセントな気分が感じられる。
2. Nebraska – Bruce Springsteen
ブルース・スプリングスティーンの6作目のアルバムで、全米アルバム・チャートで最高3位を記録した。
「ザ・リバー」「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」というメジャーに大ヒットしたアルバムの間にリリースされた、きわけてローファイで聴きようによっては地味にも感じられる作品である。
4トラックのカセットレコーダーで録音されたというだけあって、サウンド的にもアンセミックな感じではまったくないのだが、そのぶんシンガーソイングライターとしての魅力をヴィヴィッドに味わうことができるアルバムとなっている。
1. Thriller – Michael Jackson
マイケル・ジャクソンの6作目のソロアルバムで、アメリカやイギリスをはじめ多くの国々のアルバムチャートで1位に輝いている。年間アルバムチャートではアメリカで1983年から2年連続、日本でも1984年に1位となっている。
「オフ・ザ・ウォール」に続いてクインシー・ジョーンズがプロデュースしているが、先行シングル「ガール・イズ・マイン」でのポール・マッカートニーとのデュエットや「今夜はビート・イット」でのエディー・ヴァン・ヘイレンの起用など、ソウル/R&Bのみならずロックやポップスのマーケットをも意図的にターゲットにしたことがメガヒットにつながったと思われる。
1981年に開局したMTVはヒットチャートにも影響をおよぼしてきていたが、このアルバムからの「ビリー・ジーン」「今夜もビート・イット」など以前にはほとんど白人アーティストのビデオしか流さなかった。そこに風穴を開けたという点でも画期的だが、ジョン・ランディス監督による「スリラー」の短編映画的でもあるミュージックビデオによって、ポップミュージックにおける映像表現のレベルを引き上げたという功績もある。
収録された9曲中7曲がシングルカットされ、そのすべてが全米シングル・チャートで10位以内にランクインした。