洋楽ロック&ポップス名曲1001:1967, Part.3
Van Morrison, ‘Brown Eyed Girl’
ロックバンドのゼムを脱退したヴァン・モリソンのソロデビューシングルで、全米シングルチャートで最高10位を記録した。
異人種間のロマンスをテーマにした楽曲という点で当時としてはかなり攻めてもいたのだが、サウンド的にはポップ寄りすぎてヴァン・モリソン自身がかなり気に入っていないことでも知られる。
とはいえポップミュージックの魅力というのはアーティスト自身や制作サイドの意図はさておき、一般大衆的なリスナーの評価というよりは趣味嗜好によってその価値が決まるというところにもあり、そういった意味でやはりこの曲はヴァン・モリソンの代表曲の1つであることに間違いはない。
The Beatles, ‘All You Need Is Love’
世界各国を中継で結んで放送されたテレビ番組「OUR WORLD~われらの世界~」のために書き起こされ、シングルとしてリリースされるとイギリスやアメリカをはじめ多くの国々のシングルチャートで1位に輝いた。
「愛こそはすべて」の邦題でも知られ、ベトナム戦争に対する抗議行動から広がった「サマー・オブ・ラヴ」を象徴する楽曲となっている。
ジョン・レノンによって書かれた楽曲だが、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」からはじまり、グレン・ミラー楽団「イン・ザ・ムード」、バッハ「2声のインヴェンション8番 BWV779」、イギリス民謡の「グリーンスリーブス」からビートルズの「シー・ラヴズ・ユー」「イエスタデイ」など、様々な曲のフレーズが引用されてもいる。
Small Faces, ‘Itchycoo Park’
スモール・フェイセズがシングルとしてリリースした楽曲で、全英シングルチャートで最高3位、全米シングルチャートで最高16位を記録した。イギリスではトップ10ヒットを連発していたスモール・フェイセズだが、アメリカではこの曲が唯一のトップ40ヒットであった。
すべてが美しすぎると繰り返し歌われる公園のモデルとなっているのは、ロンドンのリトル・イルフォード・パークなのではといわれているのだが、他にも説はある。
学校の授業をサボって公園に行きハイになったというようなことが歌われているが、ドラッグとは関係がないとメンバーは主張している。
90年代に流行したブリットポップに強い影響をあたえたバンドの1つだが、当時、この曲をカバーしてヒットさせたのはマンチェスター出身のダンスミュージックバンド、Mピープルで、全英シングルチャートで最高11位を記録した。
Smokey Robinson and The Miracles, ‘The Tears of a Clown’
スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのアルバム「メイク・イット・ハプン」に収録された楽曲で、後にシングルカットされ、アメリカでもイギリスでもシングルチャートの1位に輝いた。邦題は「涙のクラウン」である。
ザ・ミラクルズのロニー・ホワイトに見いだされたというスティーヴィー・ワンダーがプロデューサーのハンク・コスビーと共作したのだが、歌詞ができていない状態でモータウンのクリスマスパーティーに持っていったのだが、その曲にどこかサーカス的なフィーリングを感じたスモーキー・ロビンソンがピエロの涙をテーマにした歌詞をつけた。
当時はシングルカットされなかったのだが、1970年にイギリスでの人気が高まり、ニューシングルのリリースが求められたものの新曲のストックがなかったときに、過去の作品からこの曲がピックアップされ、シングルでリリースしたところ大ヒットした。
顔では笑っているのだが、心では泣いているというような悲しい歌詞がスモーキー・ロビンソンの甘いボーカルとおもちゃ箱のようなサウンドと絶妙にマッチしている。
スカリバイバルバンド、ザ・ビートのカバーバージョンでも知られる。
Jackie Wilson, ‘(Your Love Keeps Lifting Me) Higher and Higher’
ジャッキー・ウィルソンがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングルチャートで最高6位を記録した。全英シングル・チャートでは1969年に最高11位、1987年にもリバイバルして最高15位のヒットを記録している。
モータウンのバックバンドとして知られるファンク・ブラザーズのメンバーが参加しているだけあって、それらしいノリの良いサウンドになっている。また、後にアース・ウィンド&ファイアーのボーカリストとして有名になるモーリス・ホワイトがドラマーとしてレコーディングに参加していた。
Louis Armstrong, ‘What a Wonderful World’
「この素晴らしき世界」の邦題で知られているルイ・アームストロングによるスタンダードナンバーで、全米シングルチャートでは意外にも圏外だったのだが、全英シングルチャートでは1位を記録した。1987年に映画「グッドモーニング、ベトナム」で使われ、全米シングルチャートで最高32位を記録している。
作詞・作曲のジョージ・ダグラスは音楽プロデューサー、ボブ・シールのペンネームで、ベトナム戦争を嘆き、世界平和の祈りを込めて書いたこの曲は、当時66歳のルイ・アームストロングによってレコーディングされることになった。
オーケストラの演奏と豊かでしわがれた歌声が印象的なこの曲は、1995年には映画「12モンキーズ」のエンディングテーマにもなったほかに、日本でもホンダシビック、東海東京証券、東京海上日動火災保険、ソニー、ソフトバンクモバイルなど様々な企業のテレビCMで使われることになった。
The Who, ‘I Can See for Miles’
ザ・フーのアルバム「セル・アウト」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高10位、全米シングルチャートでは最高9位を記録した。ピート・タウンゼントはこの曲にひじょうに自信があったため、イギリスで思ったよりも売れず悔しい思いをしたという。一方、アメリカでは意外にもこの曲がザ・フーにとって唯一のトップ10ヒットとなっている。
邦題は「恋のマジック・アイ」で、恋人と離れていても行動はすべて見えている、というようなことが歌われている。ピート・タウンゼントが当時付き合っていて、後に結婚、離婚する女性に対する思いがモチーフになっているようだ。
オーバーダビングが繰り返され、当時としてはひじょうにヘヴィーなサウンドになっているのだが、それゆえにライブでの再現は難しかったという。ポール・マッカートニーはピート・タウンゼントがこの曲について語っている雑誌のインタヴューに触発されて、「ヘルター・スケルター」を書いたといわれている。
Aretha Franklin, ‘(You Make Me Feel Like) A Natural Woman’
アレサ・フランクリンがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングルチャートで最高8位を記録した。
プロデューサーのジェリー・ウェクスラーが街で偶然に出会ったキャロル・キングに直々に依頼して、つくられた楽曲ともいわれている。アレサ・フランクリンといえばパワフルなボーカルが印象的だが、繊細さも同時に持ち合わせていて、その魅力がじゅうぶんに発揮されている。
後にキャロル・キングが自身のアルバム「つづれおり」でセルフカバーしている。2015年度ケネディ・センター賞授賞式では、アレサ・フランクリンが受賞者であるキャロル・キングのためにこの曲を歌い、客席にいたバラク・オバマ大統領も思わず涙ぐむという場面もあった。