洋楽ロック&ポップス名曲1001:1967, Part.2
The Velvet Underground, ‘I’m Waiting for the Man’
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」の収録曲で、邦題は「僕は待ち人」である。
アルバム自体がポップミュージック史上ひじょうに重要であり、インディーロックとかオルタナティヴロックと呼ばれるすべての音楽に影響を与えているといっても過言ではないのだが、当時はあまり売れなかったことでおなじみなので、この曲もヒットはしていない。
ハーレムでヘロインを調達するというごく一般的な小市民にはそれほどリアリティーのないテーマを扱っているのだが、ニューヨーク的でアートなクールネスとでもいうべきセンスが凝縮した楽曲のようにも思える。
The Velvet Underground, ‘Venus in Furs’
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」に収録された楽曲で、フランスの作家、レオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」にインスパイアされている。
サドマゾヒズムという概念の一部はマゾッホに由来しているだけあって、この曲も性的倒錯をテーマにしている。ジョン・ケイルのビオラとルー・リードのギターが怪しげなムードを掻き立てていて、もちろん当時の感覚におけるポップソングとは程遠いのだが、その後のオルタナティブ的なポップミュージックにあたえた影響の大きさから、現在ではユニークなポップ感覚を感じ取ることもできる。
The Velvet Underground, ‘Heroin’
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」に収録された楽曲であり、タイトルのとおり依存性が高いドラッグとして知られるヘロインのことを歌っている。
ルー・リードがレコード会社のソングライターとして雇われていて、サーフィンソングを量産するようにという指示にたいしてこの曲を提出し、絶望的な気分にさせたというエピソードが語られている。
ドラッグを推奨しているわけでも非難しているわけでもなく、ただ日常的にリアルなトピックとして扱っているのだが、ヘロインのことを自身の妻であり人生であると歌った後でやや自嘲的に笑っているようでもある。
もちろん当時のポップソングの概念とはかなりかけ離れていて、まったくヒットもしていないのだが、これもまたその後のオルタナティブ的な音楽にたいするあまりにも大きな影響などからクラシックとしての評価が定着している。
The Jimi Hendrix Experience, ‘Purple Haze’
「紫のけむり」の邦題でも知られるジミ・ヘンドリックスの代表曲で、全英シングルチャートで最高3位を記録した。
サイケデリックなドラッグソングとして知られ、タイトルはマリファナのことを指しているようだ。とにかくギターのサウンドにオリジナリティーがあって、とてもカッコいい。
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・アルバム「アー・ユー・エクスペリエンス?」はイギリス盤とアメリカ盤とでは内容に違いがあり、この曲はアメリカ盤の方にだけ収録されていた。
Marvin Gaye & Tammi Terrell, ‘Ain’t No Mountain High Enough’
マーヴィン・ゲイとタミー・テレルによるデュエットソングで、全米シングルチャートで最高19位、R&Bチャートで最高3位を記録した。
後に夫婦デュオ、アシュフォード&シンプソンとして活動する2人によって作詞作曲されたこの曲は、ダスティ・スプリングフィールドもレコーディングすることを希望していたのだが、モータウンの入口となるべき曲という考えから断られることになった。
タミー・テレルはマーヴィン・ゲイとデュエットアルバムもリリースするのだが、やがて病を患い24歳の若さで亡くなった。マーヴィン・ゲイはこのショックから完全に立ち直ることはできず、鬱病や薬物依存に苦しまされることになる。
1970年にはダイアナ・ロスによるドラマティックなカバーバージョンが全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高6位のヒットを記録した。
The Kinks, ‘Waterloo Sunset’
キンクスがシングルとしてリリースした楽曲で、全英シングルチャートで最高2位を記録したが、全米シングルチャートにはランクインしていない。
レイ・デイヴィスの頭の中に2、3年ぐらいずっとあったメロディーがベースになっていて、当初は「リヴァプール・サンセット」という曲だったのだが、ビートルズがリヴァプールをテーマにした「ペニー・レイン」を出したので、舞台をロンドンのウォータールー駅やテムズ川に変更した。
情緒溢れるご当地ソングとしてひじょうに味わい深く、多くの音楽リスナーやアーティストからお気に入りの曲として挙げられることも多い。
Procol Harum, ‘A Whiter Shade of Pale’
イギリスのロックバンド、プロコル・ハルムのデビューシングルで、全英シングルチャートでは6週連続1位の大ヒットを記録した。
バッハの管弦楽組曲第3番「G線上のアリア」に似ているといわれたりもするオルガンのイントロが、なんといっても印象的である。日本では「青い影」の邦題で知られ、70年代前半にはディスコのチークタイムには欠かせない楽曲だったらしい。
また、ユーミンこと松任谷(荒井)由実はこの曲から強く影響を受けていて、カバーバージョンを発表したりライブで共演したりもしている。
The Beatles, ‘A Day in the Life’
ビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の最後に収録され、シングルとしてヒットしたわけではないのだが、ビートルズで最も優れた楽曲として評価されることもある。
ジョン・レノンが新聞で読んだニュースをモチーフに曲のほとんどを書いたが、途中の朝に目を覚ましてから出かける準備をしてバスに乗ったりするくだりは、ポール・マッカートニーによるものである。サウンド面ではオーケストラの演奏がとても印象的である。
このアルバムは当時、ロックを若者向けの未熟な音楽として見なしがちなクラシック音楽のリスナーやエスタブリッシュメントな人たちをも納得させ、ロックを芸術の域にまで高めた、などと高く評価されていた。
Pink Floyd, ‘See Emily Play’
ピンク・フロイドの2枚目のシングルで、全英シングルチャートで最高6位を記録した。かつては「エミリーはプレイ・ガール」という邦題がついていた。
作詞作曲はシド・ヴァレットで、精神的にいろいろ問題があったことなどにより、後にバンドを脱退するのだが、それから音楽性がかなり変わっていった。
この曲の歌詞に登場するエミリーという女性はUFOクラブの常連でサイケデリックな女子高生の異名も持つエミリー・ヤング卿なのではないかという考察もあれば、シド・ヴァレットの当時のガールフレンドは結婚して子供ができたらつけようと話し合っていた名前だと主張していたりと諸説がある。
ピンク・フロイドといえばプログレッシブロックの代表的バンドだが、シド・ヴァレットが在籍していたこの頃はまだサイケデリックポップという形容の方がよりふさわしいとも思われ、まだモテそうでもあるため、ここで取り上げるに値する価値はじゅうぶんにある(なんのこっちゃ)。