洋楽ロック&ポップス名曲1001:2002, Part.3

t.A.T.u., ‘All the Things She Said’

ロシアのポップデュオ、t.A.T.u.が「ヤー・サシュラー・ス・ウマー」という曲の英語バージョンとしてリリースし、イギリスなどいくつかの国のシングルチャートで1位に輝いた。全米シングルチャートでも最高20位のヒットを記録していて、これはロシアのアーティストとしては史上初めてのことであった。

トレヴァー・ホーンのプロデュースによるこの楽曲は、ミュージックビデオを含めティーンエイジャーのレズビアンカップル的なイメージを前面に押し出し、話題になっていた。

日本では実はマネージャーの指示であったことが後に明かされる、テレビ朝日系「ミュージックステーション」への出演ドタキャン事件でも有名である。

センセーショナルなイメージが先行しがちではあるのだが、ティーンエイジャーの苦悩をテーマにしたポップミュージックとしてのクオリティーはひじょうに高く、ザ・スミス「ハウ・スーン・イズ・ナウ?」のカバーもとても良かった。

Missy Elliott, ‘Work It’

ミッシー・エリオットのアルバム「アンダー・コンストラクション」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高2位、全英シングルチャートでは最高6位を記録した。

RUN D.M.C.「ピーター・パイパー」がサンプリングされていたり、ブロンディ「ハート・オブ・グラス」のイントロで使われているシンプルでチープなリズムパターンが低速化されていたり、オールドヒップホップ的でニューウェイヴ的な気分を感じさせながらも、新しくてとてもカッコいい楽曲である。

とてもセクシーな内容が扱われていたりもして、オノマトペのみならず、象の鳴き声的なサウンドをピー音的に使用する工夫などもとても良い。

The Libertines, ‘Time for Heroes’

リバティーンズのデビューアルバム「リバティーンズ宣言」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高20位を記録した。

ザ・ストロークスのブレイクをきっかけとしたインディーロックの復権はアメリカ国内のみならぬトレンドであったが、イギリスにおける代表格といえばリバティーンズであり、ひじょうに強固なファンダムを形成していたということができる。

ファンの間で特に人気が高かったこの曲は、メーデーに参加したピート・ドハーティの実体験に基づいているという。

Johnny Cash, ‘Hurt’

50年代から活躍するポップミュージック界のレジェンド、ジョニー・キャッシュはリック・ルービンがプロデュースするカバーアルバム「アメリカン・レコーディング」シリーズによって再評価されていた。

ナイン・インチ・ネイルズのカバーであるこの曲はアルバム「アメリカンⅣ:ザ・マン・カムズ・アラウンド」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高39位を記録した。

ジョニー・キャッシュ自身の人生を象徴するようなミュージックビデオは特に高く評価され、グラミー賞を受賞しているほか、歴代ベストミュージックビデオ的な企画があるとかなりの頻度で上位にランクインしている。

Girls Aloud, ‘Sound of the Underground’

イギリスのオーディション番組「ポップスターズ:ザ・ライバルズ」で結成されたポップグループ、ガールズ・アラウドのデビューシングルで、全英シングルチャートで初登場1位を記録した。

エレクトロニックビートとサーフギターの組み合わせやポップソングとしてのクオリティーの高さで、批評家からも好意的に評価された。

全英シングルチャートではクリスマスの週を含む4週連続にわたっての1位を記録したが、カップリング曲として1994年のクリスマスシーズンに大ヒットしたイースト17「ステイ・アナザー・デイ」のカバーを収録していた。

The Knife, ‘Heartbeats’

スウェーデンのシンセポップデュオ、ザ・ナイフのアルバム「ディープ・カッツ」から先行シングルとしてリリースされた。

ミニマルなシンセサウンドとビョークを思わせもする女性ボーカルが絶妙にマッチして、新感覚のポップソングという感じになっている。

2004年に再リリースされて以降も全英シングル・チャートでの最高位は119位だが、それ以上にひじょうに評価は高く、00年代のベストソングリスト的なものにはよく選ばれている印象である。