The 500 Greatest Songs of All Time : 130-121
130. All Along the Watchtower – The Jimi Hendrix Experience (1968)
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのアルバム「エレクトリック・レディランド」から先行シングルとしてリリーズされたボブ・ディランのカバーで、全英シングル・チャートで5位、全米シングル・チャートで最高20位を記録した。
ボブ・ディランによるオリジナル・バージョンは1967年のアルバム「ジョン・ウェズリー・ハーディング」に収録され、邦題は「見張塔からずっと」だが、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスによるカバーの邦題は「ウォッチタワー」である。
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのカバーはその卓越したギターの演奏を大々的にフィーチャーするなど、アレンジが大胆に変更されているが、作者のボブ・ディランのこれを絶賛し、ライブではこちらのバージョンで演奏することもあった。ボブ・ディランがライブで最も多く演奏した楽曲としても記録されている。
129. Cigarettes & Alcohol – Oasis (1994)
オアシスのデビュー・アルバム「オアシス」から4枚目にして最後のシングルとしてカットされ、全英シングル・チャートでは最高7位とこの時点での最高位を更新していた。
この曲も収録したデビュー・アルバムがすでに売れまくっていたのだが、この曲のシングルにはビートルズ「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のカバーがライブ・バージョンで収録されてもいたことが、セールスを伸ばすことにつながったようにも思える。
デビュー・シングル「スーパーソニック」が発売される以前に、「NME」の付録として付いてきたクリエイション・レコーズのカセットテープにこの曲の初期のバージョンが収録されていた。ギターのリフはよりT・レックス「ゲット・イット・オン」によく似ていた。
ノエル・ギャラガーのソングライターとしての素晴らしさから、オアシスはよりバラード的な楽曲で高く評価されがちな印象も強いが、特に初期においてはこの曲に象徴されるロックンロール的な快楽主義のようなものを再びクールに感じさせたところも大きな魅力だった。
128. Lust for Life – Iggy Pop (1977)
イギー・ポップのアルバム「ラスト・フォー・ライフ」の表題曲で、リリース当時には特にヒットしなかったのだが、19年後の1996年に映画「トレインスポッティング」のオープニングシーンで使われた後、全英シングル・チャートで最高26位を記録した。
ベルリンでデヴィッド・ボウイと共作した曲で、印象的なベースラインはアメリカ軍放送網のジングルから引用しているが、いわゆるモータウンビートともよく似ている。デヴィッド・ボウイがウクレレで作曲したようだ。
歌詞はドラッグやストリップティーズなどを題材にし、冒頭に出てくるジョニー・イェンはウィリアム・S・バロウズの小説「爆発する切符」の登場人物である。
127. Hyper-Ballad – Bjork (1995)
ビョークのアルバム「ポスト」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高8位を記録した。
当時はビョークの数あるヒット曲の中でもそれほど飛び抜けて目立つほどでもなかったのだが、時が経つにつれボーカル・パフォーマンスの素晴らしさやサウンドの革新性、歌詞のユニークさなど、総合的にビョークのベスト・ソングなのではないかと評価されることもあふぃ、ピッチフォーク・メディアが2022年に発表した1990年代のベスト・ソングではマライア・キャリー「ファンタジー」に次ぐ2位に選ばれていた。
恋人との関係が安定している時に、バランスを取るためにあえて危険な行動を取ったりするというような、絶妙な心理状態がテーマになっている。
ミシェル・ゴンドリーが監督したミュージック・ビデオではビョークがコンピュータゲームのキャラクターのように動き回るなど、ひじょうに凝っていて見応えがある。
126. Eleanor Rigby – The Beatles (1966)
ビートルズのアルバム「リボルバー」に収録された楽曲で、「イエロー・サブマリン」とのカップリングでシングルもリリースされた。
レノン=マッカートニー名義だが実際には主にポール・マッカートニーによって書かれた曲で、老人の孤独や死という当時のポップソングとしてはひじょうにユニークなテーマを扱っていることが特徴である。
サウンド面では弦楽八重奏が導入され、ビートルズがライブを行わなくなり、よりスタジオワークに凝るようになっていく過渡期を象徴する楽曲のようでもある。
125. She Bangs the Drums – The Stone Roses (1989)
ザ・ストーン・ローゼズのデビュー・アルバム「ザ・ストーン・ローゼズ」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高36位を記録した。翌年に再リリースされた際には順位を2つ上げて、最高34位を記録している。バンドにとって、40位以内にランクインした最初のシングルである。
ポップでキャッチーでエナジーとポジティヴィテーに溢れたとても良い曲であり、ひじょうに聴きやすくもある。地球が動きはじめるのを感じたり、針がレコードの溝に下りるのが聴こえたり、彼女がドラムを叩くというような表現が、恋のはじまりかあるいはまたもっと別の何かをあらわしているようにも聴こえるのだが、いずれにしてもマッドチェスターとブリットポップとを橋渡しするような、素晴らしいインディー・ポップであることには間違いがない。
124. Ashes to Ashes – David Bowie (1980)
デヴィッド・ボウイのアルバム「スケアリー・モンスターズ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで1位に輝いたが、全米シングル・チャートでは100位入りを逃している。
「スペース・オディティ」の続きのようにもなっていて、架空のキャラクターであるトム少佐も再び歌詞に登場している。デヴィッド・ボウイ自身のドラッグからの脱却がテーマになっているのではないか、という解釈もある。
デヴィッド・ボウイがピエロに扮したミュージック・ビデオには何とも不思議な味わいもあるのだが、制作には約25万ポンドと当時としてはかなりの巨額が投じられていたようだ。MTVが開局するのは約1年後であり、ミュージック・ビデオが本格的にブームになる少し前のことである。
個人的には「ベストヒットUSA」の過去のミュージック・ビデオを紹介するコーナーで初めて見て、そのオリジナリティーと不思議な感覚に驚愕させられた記憶がある。
123. Ms. Jackson – OutKast (2000)
アウトキャストのアルバム「スタンコニア」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで1位、全英シングル・チャートでは最高2位を記録した。
メンバーのアンドレ・2000はエリカ・バドゥと付き合っていて、息子も生まれたのだが、結局のところ破局してしまい、それにまつわる謝罪の気持ちをエリカ・バドゥの母に対して歌った曲となっている。
エリカ・バドゥの母の本名はけして「ミス・ジャクソン」ではないのだが、この曲をとても気に入り、「ミス・ジャクソン」という車のナンバーを取得したり、グッズを身に付けたりしていたらしい。
いろいろな動物がこの曲のリズムにノッている姿が可愛いミュージック・ビデオもとても良い。
122. Time to Pretend – MGMT (2007)
MGMTのデビュー・アルバム「オラキュラー・スペクタキュラー」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高35位を記録した。以前のバージョンは2005年に「タイム・トゥ・プリテンドEP」の表題曲としてインディー・レーベルからリリースされていた。
キーボードのメロディーは、メンバーが家で飼っていたカマキリが音楽に合わせて踊る様子にインスパイアされたものだという。この曲は大学生だった頃に書かれたものであり、歌詞ではロックスターやセレブリティとしての生活が憧れと皮肉まじりに描かれている。
個人的にはこのバンドの音楽をまったく聴いたことがない状態で海外の音楽雑誌の記事を読んで、トッド・ラングレンなどが引き合いに出されているところにひじょうに興味を持った。
121. Into the Groove – Madonna (1985)
マドンナの主演映画「マドンナのスーザンを探して」の主題歌としてイギリスなどではシングルがリリースされ、全英シングル・チャートではマドンナにとって初の1位に輝いていた。アメリカではアルバム「ライク・ア・ヴァージン」からシングルカットされた「エンジェル」のB面としてリリースされている。
マドンナはこの年の夏に行われたチャリティー・ライヴ・イベント「ライヴエイド」にも出演し、この曲やデビュー・アルバム「バーニング・アップ」から「ホリデイ」などをパフォーマンスしていた。この影響もあってかイギリスでは「ホリデイ」もこのタイミングでヒットして、1985年8月17日の全英シングル・チャートでは1位と2位をマドンナが独占することになった。全英シングル・チャート史上、ビートルズ、ジョン・レノン、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドに続く4組目の記録であった。
楽曲はいかにも80年代的なダンスポップという感じで、ノリノリなところがとても良い。2003年にはアルバム「アメリカン・ライフ」収録の「ハリウッド」とミックスした「イントゥ・ハリウッド・グルーヴ」が、ミッシー・エリオットと共演したGAPのCMで使われていた。