Alvvays (オールウェイズ)「Blue Rev」【Album Review】

カナダのインディーロックバンド、オールウェイズが3作目のアルバム「Blue Rev」を2022年10月7日にリリースした。前作「Antisocialites」から約5年ぶりだということなのだが、デビューアルバム「Alvvays」に収録されシングルでもリリースされていた「Archie, Marry Me」があまりにもクラシックすぎるせいか、それほど久々という気がしない。というか、そもそもこのバンドはいまどきC86というかエバーグリーン気味なインディーポップをやっていながらいまどき感もあるというタイプであるため、それほどコンスタントにアルバムをリリースするものでもない、というような思い込みがマイルドにあったことは否めない。というか、実際のところはそれほど気にしてはいなかった。

まずはオールウェイズというバンド名そのものがノスタルジックでエバーグリーンな本質をあらわしたものであり、スペリングがAlwaysではなくAlvvaysになっているのは、Alwaysという別のバンドがすでにソニーと契約していたための苦肉の策である。それで、今回のアルバムアートワークなのだが、ボーカリストでソングライターのモリー・ランキンが新型コロナウィルスのパンデミックなどの影響でカナダのプリンスエドワードアイランド州というところにある実家に帰っていた時に、家族のアルバムをながめていた時に見つけた、5歳ぐらいの頃に両親と写った写真がモチーフになっているということである。さらにはアルバムタイトルの「Blue Rev」だが、これはモリー・ランキンが若かりし頃に地元では流行っていたウォッカベースのコーラ飲料にガラナを含有したものであり、青春時代の思い出の味だという。

つまり、今回もノスタルジックがさらに加速しているのかと思いきや、いろいろ新しいこともやっている。しかも、アラバマ・シェイクス、ケイシー・マスグレイヴス、ウォー・オン・ドラッグスなどの作品を手がけたショーン・エヴァレットを新たにプロデューサーに迎えたことにより、サウンドがよりヴィヴィッドでエネルギッシュになっている。それでいて、楽曲はこのバンドの最大の魅力である良質なインディーポップであり、イントロで一瞬、オレンジ・ジュースを思わせる曲があったりもするという具合なので、さらになかなか素敵なことになっている。

とはいえ、余裕を持ってマイペースで制作していた結果、前作から5年ぶりになったのかというとそんなことはまったくなく、わりと早くからつくりはじめてはいたのだが、モリー・ランキンの家に空き巣が入ってでも音源が盗まれたり、その後は地下のスタジオが水浸しになって機材がほとんどダメになりかけたり、さらには新型コロナウィルスのパンデミックによって、バンドでの練習ができなくなったり、いろいろトラブル続きではあったのだという。それもあってか、ドラマーとベーシストは新しいメンバーに変わっている。それも音楽性の変化に影響をあたえたのかもしれないが、最も大きかったのはプロデューサーのアイデアで一発録りに近いかたちでレコーディングが行われたことらしい。

1曲目の「Pharmacist」などはこのバンドが得意とするところの典型的なインディーポップかと思いきや、演奏が明らかに骨太になっていることを感じさせ、それでいてメロディーにはどこかセンチメンタルなところもあって、シューゲイザー的なサウンドからの途中からは歪んだギターソロが続くという情報量でわずか約2分4秒という素晴らしさである。アルバム全体が14曲入りで約38分52秒というのもとても良い。

「ヴェリー・オンライン・ガイ」はインターネットでしか知らない存在という、いかにも現代的なテーマを扱っているのだが、とてもチープでローファイなシンセポップになっていて、オールウェイズにとっての新機軸であるのと同時に、アイロニカルなセンスも感じられる楽曲である。テレヴィジョンの中心メンバーなどとして知られるトム・ヴァーレインをタイトルにした楽曲があったり、「Belinda Says」のベリンダとはベリンダ・カーライルのことである。1987年の全米NO.1ヒット「ヘブン・イズ・プレイス・オン・アース」を引用して、天国だけではなく地獄もまた地球上にある、と歌う。このセンスが最高である。

楽曲はポップでキャッチーなものが多く、キュートなボーカルが時にはパンキッシュになるあたりも最高なのだが、やはりインディーポップの良いところを継承してもいて、とにかくなかなかクオリティーが高い。インディーポップ的な良い意味での脆弱さがとても良いのだが、いまひとつ突き抜けられないところでもあったような気もするのだが、このアルバムではその点もクリアされているので、今後に対しての期待も高まるというものである。