邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1973, Part.1

女の子なんだもん/麻丘めぐみ(1973)

麻丘めぐみの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。アルバム「あこがれ」からのシングルカットなので、初めて世に出たのは厳密には1972年なのだが、個人的になんとなく1973年をこの曲からはじめたかった。

作詞・作曲はデビューシングル「芽ばえ」からずっと千家和也、筒美京平のコンビなのだが、このシングルでは初めて筒美京平が編曲も手がけている。グルーヴィーで最高な上に、まず「女の子なんだもん」というタイトルがとても良い。

そして、「口にだすのは ルールー 恥ずかしいから ルールー」といったフレーズの「ルールー」とは一体何なのだろうかと考えてもしまうのだが、実際に聴いてみたならば、それがとても良いものであることだけはよく分かる。

他人の関係/金井克子(1973)

金井克子の31枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位、「第15回日本レコード大賞」では企画賞を受賞している。

「逢う時にはいつでも他人の2人」というわけで、もしかするとアンモラルな大人の関係をテーマにしているかもしれないこの曲は、「パッパッパヤッパ」と聴こえがちだが実際には「バンバンババンバン」と歌われているあやしげなスキャットや指さし確認的なアクションも含め、当時の子供たちにも大いに受けた。意味もよく分からず真似をしていたのだが、大人たちからは明らかに眉をひそめられていた。

フレッシュなアイドルポップスとより大衆化したフォークが支持されがちな当時ではあったが、このような大人向けのポップスも売れてはいたわけである。

心の旅/チューリップ(1973)

チューリップの3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングでは7位を記録した。

ビートルズからの影響が強く感じられるようなタイプの音楽性が特徴だったチューリップは、福岡から上京し、レコードデビューするもののあまり売れず、背水の陣的な状態でリリースしたこのシングルが大ヒットした。

「あー明日の今頃は僕は汽車の中」というわけで、恋人との別れや汽車で旅をすることにまつわるロマンが歌われた不朽の名曲である。インディーロックバンド、有頂天や当時、若手俳優としてアイドル的ともいえる人気があった吉田栄作をはじめ、様々なアーティストたちによってカバーされている。

危険なふたり/沢田研二(1973)

沢田研二の6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは3週にわたる1位、「第4回日本歌謡大賞」で大賞に選ばれたりもしている。

序盤では印象的なギターのフレーズが繰り返され、それに合わせて沢田研二がマイルドにセクシーなボーカルで年上の女性との危うげなロマンスについて歌っている。

赤い風船/浅田美代子(1973)

浅田美代子のデビューシングルでオリコン週間シングルランキングで1位、「第15回日本レコード大賞」では新人賞を受賞した。

出演していたテレビドラマ「時間ですよ」で挿入歌として歌われ、大ヒットした。歌唱力はけして高くはないが、そこがまた良いというタイプのアイドルポップスの先駆けだったようにも思える。

作詞は安井かずみで作曲・編曲がノリにノッていた筒美京平なのだが、お得意のグルーヴィーな感じとはやや異なって、どこか懐かしさも感じさせる楽曲である。

ファンキー・モンキー・ベイビー/キャロル(1973)

キャロルの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高57位を記録した。

矢沢永吉やジョニー大倉が在籍したロックンロールバンド、キャロルで最も有名な楽曲で、オリコン週間シングルランキングでの最高位はそれほど高くはないが、当時のこのタイプの音楽としてはかなり売れた方である。

タイトルの「ファンキー・モンキー・ベイビー」にそれほど意味はなく、作詞をしたジョニー大倉に突然、降りてきたのだという。理屈よりもフィーリングが肝心、とでもいうべき素晴らしい楽曲であり、ロックンロールの不良性をこの時代において次世代に橋渡しした功績はかなり大きいようにも思える。

恋する夏の日/天地真理(1973)

天地真理の7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、年間シングルランキングでは8位を記録した。

この頃、麻丘めぐみ、浅田美代子、アグネス・チャンといった女性アイドル歌手がデビューし、ヒットを記録していたが、一般大衆的に最も人気があったのは天地真理である。何せ「真理ちゃんとデイト」「となりの真理ちゃん」といったテレビの冠番組がゴールデンタイムに放送されていたり、ブリヂストンのドレミまりちゃんなる女の子向けの自転車まで発売されていたのだ。ちなみに男の子向けは、仮面ライダーの自転車であった。

オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた楽曲も5曲あり、中でもこの「恋する夏の日」は「あなたを待つの テニスコート」の歌い出しも印象的で、テレビでは健康的なテニスルックで歌われたりもしていた。作詞を山上路夫、作曲を森田公一が手がけている。

わたしの彼は左きき/麻丘めぐみ(1973)

麻丘めぐみの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、「第15回日本レコード大賞」では大衆賞を受賞した。

作詞は千家和也で作曲・編曲が筒美京平、この頃の麻丘めぐみの楽曲はいずれも素晴らしく、元祖「楽曲派」アイドルといっても良いのではないかというような気もするのだが、特にこの曲は当時まだネガティブなイメージもわりと強かったといわれる「左きき」という特徴をマイルドな憧れのレベルにまで押し上げるほどの強度を保持していたようにも感じられる。

正統派アイドルのイメージがひじょうに強く、そのヘアスタイルは当時の少女漫画のヒロイン像にも近いものがあったのだが、それでいて「ブラックコーヒー」などという少し大人びた単語が歌詞に入っていたり、実は全体的に無自覚なエロスのようなものが感じられなくもない仕様になっているところも素晴らしい。

てんとう虫のサンバ/チェリッシュ(1973)

チェリッシュの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルで最高5位のヒットを記録した。

元々はアルバム「春のロマンス」収録曲で、しかも制作サイドからは、それほど気合いが入っていない、埋め合わせ的な楽曲として認識されていたようだ。

男女デュオによるメルヘンチックな世界観が炸裂したようなこの楽曲は、作詞がさいとう大三で、作曲・編曲が馬飼野俊一によるものである。

ラジオで流したところ評判となり、シングルカットされることになった。結婚披露宴で主に新婦友人数名によって歌われがちな楽曲として知られるようになり、特にオルガン奏者と打ち合わせをして、「くちづけせよと」のところを新郎新婦が実際にキスをするまで繰り返し歌い続けるという場面を、個人的にも結婚式場の配膳のアルバイトをしていた頃に幾度と見た記憶がある。