邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1974, Part.1

襟裳岬/森進一(1974)

森進一の29枚目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高6位、「第16回日本レコード大賞」「第5回日本歌謡大賞」で共に大賞を受賞した。

フォークの吉田拓郎の楽曲を演歌歌手の森進一が歌ったことは、当時としては画期的であった。吉田拓郎の大ヒット曲「旅の宿」の作詞も手がけていた岡本おさみが北海道の襟裳岬に旅行した時の記憶をベースに書いた歌詞に、吉田拓郎が曲をつけたものである。森進一は特徴であるビブラートをきかせた唱法をやや抑えて歌っているが、それがまた楽曲の素朴な感じにマッチしていてとても良かった。

古い日記/和田アキ子(1974)

和田アキ子の18枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高44位を記録した。作詞が安井かずみで、作曲・編曲は馬飼野康二である。

バラエティー番組「金曜10時!うわさのチャンネル!!」への出演で「ゴッド姉ちゃん」のイメージが一般大衆的にも広く知られるようになり、この曲はものまねをされる際にも取り上げられがちなのだが、オリコン週間シングルランキングでの最高位はそれほど高くはなかった。

ファンキーでありながら大衆性もある楽曲、ソウルフルなボーカルパフォーマンス、「ハッ!」という掛け声的なものは、スティーヴィー・ワンダーを意識したものだという。

2023年にはこの曲にインスパイアされたという新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(リリースは2020年)のバイラルヒットによって再注目され、世代を超えた共演も話題になった。

学園天国/フィンガー5(1974)

フィンガー5の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

「アー・ユー・レディ?」のかけ声から「ヘーイヘイヘイヘーイヘイ」のコール&レスポンス、学園生活をテーマにした歌詞やソウル・ミュージック的でキャッチーな曲調が大いに受けまくった。作詞は阿久悠、作曲・編曲は井上忠夫である。

1989年には小泉今日子、2001年には慎吾ママ(香取慎吾)によるカバーバージョンが、オリコン週間シングルランキングでそれぞれ最高3位と2位にランクインしている。

花とみつばち/郷ひろみ(1974)

郷ひろみの8枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。作詞が岩谷時子で、作曲・編曲が筒美京平である。

「君と僕のふたりがおぼえたての蜜の味」と、おそらく性愛的なことが歌われているのだが、湿っぽさが一切感じられず、ポップでキャッチーな曲調と郷ひろみの中性的でユニークなボーカルが、まったく新しいポップ感覚を生み出しているように感じられる。

近田春夫&ハルヲフォンが1977年のアルバム「ハルヲフォン・レコード」収録の「ポップス・メドレー」で、洋楽ポップソングスと共にこの曲もカバーしていた。

グッド・バイ・マイ・ラブ/アン・ルイス(1974)

アン・ルイスの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高14位を記録した。作詞はなかにし礼で、作曲が平尾昌晃である。

恋人との別れを爽やかに歌った、ロッカバラード的な名曲である。間奏に入っている英語のセリフパートもとても良い。

やさしさに包まれたなら/荒井由実(1974)

荒井由実の3枚目のシングルとしてリリースされ、後に別バージョンがアルバム「MISSLIM」にも収録された初期の代表曲である。元々は不二家のキャンディー、ソフトエクレアのCMのためにつくった楽曲だったという。

「やさしさに包まれたならきっと 目にうつる全てのことはメッセージ」という歌詞がとても印象的だが、ソフトエクレアのCMでは「メッセージ」のところが「君のもの」と歌われていた。

1989年にはスタジオジブリ制作のアニメ映画「魔女の宅急便」のエンディングテーマに使われ、CDシングルがリリースされたりもした。

精霊流し/グレープ(1974)

グレープの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録し、「第16回日本レコード大賞」ではさだまさしが作詞賞を受賞した。

さだまさしの出身地である長崎市などで行われるお盆に行われる精霊流しという行事のことが歌われていて、親戚が水難事故で亡くなった時の記憶がモチーフになっているという。

発売当初はそれほど売れなかったが、東海ラジオの深夜番組「ミッドナイト東海」で繰り返しかけていたところ、少しずつ人気が高まっていき、ヒットにつながっていったようだ。