邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1974, Part.2

激しい恋/西城秀樹(1974)

西城秀樹の9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。作詞は安井かずみで、作曲・編曲が馬飼野康二である。

ブラスサウンドを大胆に用いたファンキーなトラックにのせて、西城秀樹が恋の激情について熱く歌う。「やめろと言われても 今では遅すぎた」のフレーズは、テレビでのパフォーマンスなどでのアクションと共に、鮮烈な印象をあたえた。

ひと夏の経験/山口百恵(1974)

山口百恵の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位、「第16回日本レコード大賞」では大衆賞を受賞した。作詞は千家和也で、作曲が都倉俊一である。

「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」と、当時15歳の山口百恵が歌ったことで話題になり、性典ソングとして知られるが、「こわれてもいい 捨ててもいい」の後に「愛は尊いわ」と歌われているところなどもとても良い。

ポケットいっぱいの秘密/アグネス・チャン(1974)

アグネス・チャンの6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。作詞は松本隆で、作曲が穂口雄右である。

松本隆はこれがアイドルに提供した最初の歌詞であり、「あなた草のうえ ぐっすり眠ってた 寝顔やさしくて ”好きよ”ってささやいたの」を縦読みすると「アグネス」になるという仕掛けも仕込まれていた。

編曲は東海林修とキャラメルママによるものであり、アグネス・チャンのボーカルの魅力を生かしながら、洋楽的なセンスも楽しめるポップスに仕上がっている。

よろしく哀愁/郷ひろみ(1974)

郷ひろみの10枚目のシングルで、オリコン週間シングルで1位に輝いた。出演していたテレビドラマ「ちょっとしあわせ」の主題歌でもあり、作詞を安井かずみ、作曲を筒美京平が手がけている。

「会えない時間が 愛育てるのさ」というわけで、タイトルの通り哀愁が感じられるラヴソングであり、郷ひろみのより大人なポップス歌手としての魅力をひきだしているともいえる。

タイトルの「よろしく哀愁」はフレーズとしても使い勝手が良く、全国的に大ブレイクする前の松山千春もラジオ番組で使っていたような気がする。

ピンク・シャドウ/ブレッド&バター(1974)

ブレッド&バターのアルバム「Barbecue」からのシングルカット曲で、当時、大きくヒットしたわけではないのだが、シティポップの名曲として知られるようになる。

ブレッド&バターは湘南出身の兄弟デュオで、シティポップ的な音楽性が特徴なのだが、特にこの曲はグルーヴやソウルフルな女性コーラスも含め素晴らしく、山下達郎もライブでカバーしていた(1978年のライブアルバム「IT’ A POPPIN’ TIME」に収録)。

2020年に「レコード・コレクターズ」が発表した「シティ・ポップの名曲ベスト100 1972-1979」では、その山下達郎らのシュガー・ベイブ「DOWN TOWN」に次ぐ2位に選ばれていた。1982年には三田寛子がシングル「色づく街」(南沙織のカバー)のB面でカバーしたりもしていた。

タイムマシンにおねがい/サディスティック・ミカ・バンド(1974)

サディスティック・ミカ・バンドの2作目のアルバム「黒船」からの先行シングルである。当時、大きくヒットしたわけではないのだが、アルバムは日本のロック名盤として知られ、この曲もかなり有名である。

加藤和彦、高橋幸宏、高中正義をはじめ、錚々たるメンバーから成るバンドで音楽的にも評価が高く、この曲も収録した「黒船」はファーストアルバムを気に入ったイギリスの大御所、クリス・トーマスによってプロデュースされた。

グラムロック的なサウンドとSFチックでナンセンスな歌詞、ミカのポップなボーカルなど、楽しくてとてもカッコいい。後に桐島かれんや木村カエラをボーカリストに迎えるなどして、何度か再結成もしている。

はじめての出来事/桜田淳子(1974)

桜田淳子の8枚目のシングルで、オリコン週間シングルで1位に輝いた。作詞は阿久悠で、作曲が森田公一である。

「くちづけのその後でおしゃべりはしないで 泣き出してしまうかも それほど心はゆれている」と、ファーストキスの衝撃や動揺について、爽やかでキャッチーに歌われている。

オーディション番組「スター誕生!」出身で同世代の森昌子、山口百恵と共にデビュー当時の「花の中三トリオ」から学年が上がる毎に呼称が変わっていたが、この頃は「高一」だったはずである。