邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:210-201
210. 九月の雨/太田裕美 (1977)
太田裕美の9枚目のシングルで、オリコン週間ランキングで最高7位を記録した。
「車のワイパー透かして見てた 都会にうず巻くイリュミネーション」というわけで、松本隆と筒美京平の黄金コンビによるシティ感覚溢れる切ない楽曲で、渋谷の公園通りも登場する。秋の訪れと恋の終わりというテーマが都会的なセンスで表現されていて、「愛はこんなに辛いものなら 私ひとりで生きていけない」というベタなフレーズにすらいたいけさを感じ、「さっきの電話であなたの肩の近くで笑った女性(ひと)」に対して憎しみすら覚える。
209. 愛しのロージー/松尾清憲 (1984)
松尾清憲のソロデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高56位を記録した。
ムーンライダーズの鈴木慶一がプロデュースしたCINEMAというニュー・ウェイヴバンドで活動していたり、後に杉真理とポップユニット、BOXを結成したりするのだが、ソロアーティストとしてのこの楽曲はブリティッシュポップ的なテイストの日本語ポップスで、個人的にも当時、NHK-FM旭川放送局のローカル番組「夕べのひととき」で聴いて度肝を抜かれた記憶がある。
208. チョコレイト・ディスコ/Perfume (2007)
Perfumeの4枚目のシングル「Fan Service [sweet]」のA面に収録されていた曲である。オリコン週間シングルランキングでは、最高31位を記録した。
広島出身のローカルアイドルグループ、Perfumeが中田ヤスタカの作詞・作曲・プロデュースのテクノポップ的な楽曲で全国的にブレイクし、国民的人気アーティストなるのはこの少し後である。
国生さゆり「バレンタイン・キッス」に代わって、バレンタインシーズンの定番曲になったような印象もある。それにしても、「計算する女の子 期待してる男の子 ときめいてる女の子 気にしないふり男の子」というフレーズにはお見事という以外にない。
207. 君は薔薇より美しい/布施明 (1979)
布施明の42枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高8位、「ザ・ベストテン」では最高4位のヒットを記録した。
カネボウ化粧品のCMソングでもあり、久しぶりに会った女性が美しく変わっていた状況がゴージャスなサウンドにのせて歌われている。作曲・編曲は当時、ニューミュージックブームで人気絶頂だったゴダイゴのミッキー吉野で、タケカワユキヒデ以外のメンバーは演奏でも参加している。
後にECDによってカバーされたり、お笑い芸人のエハラマサヒロがアダルトな替え歌バージョンを持ちネタにしたりもした。
206. SEASONS/浜崎あゆみ (2000)
浜崎あゆみの16枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで2週連続1位、2000年の年間シングルランキングでは、サザンオールスターズ「TSUNAMI」、福山雅治「桜坂」、宇多田ヒカル「Wait & See~リスク~」、倉木麻衣「Love, Day After Tomorrow」に次ぐ5位を記録した。
「ロッキング・オンJAPAN」の2万字インタヴューや、スマッシング・パンプキンズ「メロン・コリーそして終りのない悲しみ」について語っていたことが思い出される浜崎あゆみだが、この曲における「今日がとても楽しいと 明日もきっと楽しくて そんな日々が続いてく そう思っていたあの頃」というフレーズは聴く者が置かれた状況によっては深く刺さるものがあるのみならず、この国そのもののある時代についても無意識に表現してしまっているようにも思える。
情緒的なピアノの演奏と終りのない悲しみを必然的に感じさせてしまうボーカルとが絶妙にマッチしていて、とても良い。
205. これは恋ではない/ピチカート・ファイヴ (1988)
ピチカート・ファイヴのアルバム「ベリッシマ」に収録されていた曲で、シングルカットはされていない(2017年に「ベリッシマep」として、「惑星」とのカップリングで7インチ・シングル化されたが)。
この頃のリードボーカルはOriginal Loveの田島貴男、1990年のアルバム「月面軟着陸」の初回盤には奥田民生をフィーチャーしたバージョンが収録されていた。
「これは恋ではなくてただの痛み」「きみは天使じゃなくてただの娘」というフレーズには、個人的に過去に何百回共感させられたか分からないほどである。「渋谷系」楽曲としては小沢健二「愛し愛され生きるのさ」と同様に、サザンオールスターズ「いとしのエリー」に言及している。
204. ファーストデイト/岡田有希子 (1984)
岡田有希子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録した。
竹内まりやの作詞・作曲によるキャンパスポップ的なアイドルソングでもあるが、クラスで一番目立たないタイプであるにもかかわらずデートに誘われた不安と期待とがヴィヴィッドに表現されている。
生前最後にリリースされオリコン週間シングルランキングで1位に輝いた「くちびるNetwork」(作詞をSEIKOこと松田聖子、作曲を坂本龍一が手がけた)が代表曲とされがちではあるが、実際に愛知県でもトップクラスの優等生であった岡田有希子のキャラクターともマッチしたこの曲こそが至高ではないかと個人的には思う。
203. やさしい気持ち/Chara (1997)
Charaの14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。
1991年のデビュー以来、ネクストブレイク的な期待をずっとかけられてきたが、YEN TOWN BANDのメンバーとして「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」が大ヒットしたのに続いて、ソロアーティストとしてもこの曲で完全にブレイクを果たした。
個性的なボーカルの魅力がフルに生かされた、普遍的なラヴソングとなっている。「手をつなごう 手を ずっとこうしてたいの」というのは、もう本当にそうだと共感することしかできない。収録アルバムの「Junior Sweet」も大いに売れて、オリコン週間アルバムランキングで1位に輝いた。
202. THE SUN IS MY ENEMY 太陽は僕の敵/Cornelius (1993)
Corneliusこと小山田圭吾のソロデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高15位と、フリッパーズ・ギター「恋とマシンガン」や小沢健二「天気読み」の17位よりも高い。
あまりにも軽すぎるのではないかというような感想も持たれがちだったような気がしなくもないのだが、個人的にはこの軽さがとても良く、それでいて歌詞はわりと皮肉まじりというか批評的でもありながら、アンセミックでもあり、フリッパーズ・ギターについて自己言及的(「2つに分かれたストーリーが新しい世界を開くだろう」)だと思えるようなところもある。
個人的に渋谷や幡ヶ谷や笹塚のカラオケボックスでこの曲や「(YOU CAN’T ALWAYS GET) WHAT YOU WANT」などを歌うことが当時まあまああり、「街に明かりが昇る頃に僕は眠るのだろう」「僕等の莫迦らしい話朝まで続くはずさ」というようなフレーズにそういった意味で共感したりもしていた。
201. 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ/サンボマスター (2005)
サンボマスターの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。
アニメオタクを主人公とした2ちゃんねるのスレッドを原作とするテレビドラマ「電車男」のエンディングテーマとして使われたことが、ヒットの要因となった。
ドラマの内容に沿ってもいるのだが、熱くストレートなラヴソングとしても聴くことができ、「愛と平和!」という普遍的なメッセージが歌われていたりもする。