邦楽ポップ・ソングス・オール・タイム・ベスト500:350-341

350. 横須賀ストーリー/山口百恵(1976)

山口百恵の13枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

この後、山口百恵のヒット曲をいくつも手がけていくことになる阿木燿子、宇崎竜童のコンビが提供した最初のシングル曲であり、やはり同じコンビによってこの前の年に大ヒットしたダウン・タウン・ブギウギ・バンド「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」と同様にタイトルや歌詞に横須賀の地名が入っている。横須賀はこの曲を作詞した阿木燿子の両親が暮らしている街であるのと同時に、山口百恵にとってもかつて生活をしたことがあるゆかりの地であった。

「これっきり これっきり もう これっきり」ですかの歌いだしがあまりにもキャッチーであり、当時の一般大衆にも強いインパクトを与えたのと同時に、山口百恵のより大人のイメージ(といっても当時まだ17歳なのだが)を確立した楽曲だともいえる。

349. ビッグ・バッド・ビンゴ/フリッパーズ・ギター(1990)

フリッパーズ・ギターの2作目のアルバム「カメラ・トーク」の収録曲で、マキシシングル「カメラ!カメラ!カメラ!」にはこの曲を再構築した「ビッグ・バッド・ディスコ」が収録された。

ネオアコ・バンドというイメージが強かったフリッパーズ・ギターが初めて日本語の歌詞を歌い、一般大衆的にもブレイクを果たしたのがこのアルバムにも収録された「恋のマシンガン」だったのだが、実際にはネオアコだけに留まらぬエクレクティックな音楽性が特徴であり、打ち込みのリズムが印象的なこの曲も人気があった。

「ハイファイないたずらさ きっと意味なんてないさ」というフレーズはこのグループのチャーミングな本質をコンパクトに表現しているようにも思える。学校で使われる教科書のいろいろな音楽のジャンルを説明したページで、フリッパーズ・ギターではこの曲が挙げられていたことも少し前に話題になっていた。

348. 渋谷で5時/鈴木雅之、菊池桃子(1993)

鈴木雅之と菊池桃子のデュエット曲で、まずは鈴木雅之のアルバム「Perfume」に収録された後、「違う、そうじゃない」とのカップリングでシングル・カットされた。オリコン週間シングルランキングでは最高9位を記録した。

90年代の渋谷をテーマにはしていたものの、当時は「渋谷系」とはまた別の音楽として認識されていたような気がするのだが、2016年に元ピチカート・ファイヴの野宮真貴がアルバム「男と女〜野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。」でカバーしていたので、いまや「渋谷系」ということにしてもいいのかもしれない。

仕事が終わってから渋谷で待ち合わせをしている会社員のカップルがテーマになっているようだ。1996年には新たにミックスされたバージョンが、東京テレメッセージのCMにも使用されていた。

347. 待つ男/エレファントカシマシ(1988)

エレファントカシマシの2作目アルバム「エレファントカシマシⅡ」に収録されていた曲である。当時のエレファントカシマシは「ロッキング・オンJAPAN」では猛烈に高評価されていて、当時はバンドブームであったにもかかわらず、セールス的にはなかなか苦戦していて、孤高の天才的なイメージがすでにかなり強かったといえる。

バブル景気と「純愛」ブームに浮き足だった日本において明らかに異彩を放つ表現であり、「ちょっと見てみろこの俺を 何んにも知らないんだこの俺は ぼーっと働くやからも おまえこういう男をわらえるか」「おまえはただいま幸せかい」と問いかける。その上で、「富士に太陽ちゃんとある」と高らかに歌ってもいる。

個人的に1988年は岡村靖幸「DATE」とエレファントカシマシ「エレファントカシマシⅡ」ばかり聴いていたような気がしなくもないのだが、その割にはその他にも覚えている曲がたくさんあったりもする。

346. LOVE TOGETHER/NONA REEVES(2000)

ノーナ・リーヴスが2000年にリリースした切なくて甘くご機嫌なダンス・チューンで、状況によっては思わず泣き出したくなってしまうようなところもある。

Negicco「さよならMusic」がオマージュを捧げていた曲でもあるのだが、誰かのことを忘れるために踊り続けた夜の悲しみを知っている人たちにとってはたまらないものがあるのではないだろうか。

345. 気絶するほど悩ましい/Char(1977)

Charの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高12位を記録した。

原田真二、世良公則と共にロック御三家などと呼ばれていた頃の歌謡ポップス的でありながらシティ・ポップ的でもある名曲である。

個人的に「気絶するほど悩ましい」というタイトルに対し、それはそうだと大きくうなずき、このようにいろいろな曲について冷静なふりをして語っている場合ではないような状況なのだが、それだけにこの偶然にさえ必然性を感じずにはいられない。

そして、「うまくいく恋なんて恋じゃない」という負け惜しみ的なフレーズも、状況によってはより深い意味にも感じられる、ということを納得させられる。

343. You/木村カエラ(2006)

木村カエラの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位を記録した。

それほど派手さはないような気もするのだが、じんわりと効いてくるとても良い曲である。「思いを伝えてよ 何も始まらないからね」「ひとりぼっちを受け入れて涙が流れた」というようなフレーズについて、客観的にああ良いなぁと思っていられるのと、切実すぎてどうにかなってしまいそうな状況とでは、どちらの方がよりしあわせなのだろう。

後者だとすれば、この痛みもそれほど悪くはないのかもしれない。

343. First Love/宇多田ヒカル(1999)

宇多田ヒカルのデビューアルバム「First Love」のタイトルトラックで、シングルカットもされた。オリコン週間シングルランキングでは、8cm盤が最高6位、12cm盤が最高2位を記録した。この頃には混在していて、別々に集計されていた。

「最後のキスはタバコのflavorがした」という歌いだしからしてすでにつかみはOKという感じなのだが、この甘い痛みとでもいうべきものを、たとえ天才であったとしても、10代の感性で描いているところがとても良い。

この曲をモチーフにしたドラマシリーズが2022年にNetflixで配信され、個人的にも真夜中や午前中に号泣したり嗚咽しながら見ていたわけだが、恋とはまったくもってありふれていてくだらないものではあるのだが、人生においてそれ以外に花はない、というようなことを言っていたかもしれない日本の文豪、坂口安吾はまったくもって正しかった。

342. ドゥー・ユー・リメンバー・ミー/岡崎友紀(1980)

1970年にアイドル歌手などとして活躍した岡崎友紀が1980年にYUKIとしてリリースしたシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高18位を記録した。

1980年にはYMOことイエロー・マジック・オーケストラ的な未来的なイメージが強いとも思われがちだが、一方でシャネルズ「ランナウェイ」などオールディーズ的な音楽にも人気があった。

この曲もそういったタイプの曲であり、フィル・スペクターがプロデュースした女性グループなどを思わせたりもするのだが、「あなたに一日会えないと それだけで人生にはぐれた」というフレーズが懐かしい思い出や他人事にしか思えないうちはなかなか良いのだが、リアルだと結構しんどいのではないか、というようなことを感じたりもする。

341. Diamonds/プリンセス・プリンセス(1989)

プリンセス・プリンセスの7枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングや「ザ・ベストテン」のみならず、平成最初のオリコン年間シングルランキングでも1位に輝いた曲である。

モータウンビート的なリズムを採用し、過去を美しいものとじて回想する内容である。輝きは永遠に取り戻されるべきものとして存在し続けるのかどうかもまた、課題になっているような気がする。