the 50 best songs of 2023: 20-11

20. そんなbitterな話/Vaundy

ABAMAの恋愛リアリティ番組「花束とオオカミちゃんには騙されない」の主題歌に起用されたVaundyの楽曲で、後に2枚組35曲入アルバム「replica」にも収録された。

恋愛のほろ苦い側面をテーマにしたロック調の楽曲で、「こんなことじゃあ 出会わなきゃよかったな」というようなことは思いがちではあるのだが、人生にそれ以上濃密な時間というのもなかなか無かったりもするわけで、そのような気分に寄り添っているようでなかなか味わい深い。

19. ケセラセラ/Mrs. GREEN APPLE

Mrs. GREEN APPLEのシングルでテレビ朝日系のドラマ「日曜の夜ぐらいは…」の主題歌として書き下ろされ、SpotifyのCMソングに起用されたりもした。Billboard JAPAN Hot 100では最高4位を記録している。

「ケセラセラ」というタイトルからは「なるようになる」とか「明日は明日の風が吹く」的な少しお気楽なイメージを受けがちでもあるのだが、本来は「人生は自分しだいでどうにでもできる」的な意味合いであり、この曲もそういったことについて歌われているようである。

ベーシックにしんどい日常や現実をあらかじめ生きざるをえない人たち、特に若者にとって音楽的にも才能が溢れまくったこのバンドの作品がある種の救いのようなものとしても機能しがちだということがなんとなく分かる気がする楽曲である。

18. Seven/JUNG KOOK & Latto

韓国の世界的大人気グループ、BTSのメンバーであるJUNG KOOKがアメリカのラッパー、Lattoをフィーチャーしたシングルで、韓国や日本といったアジア圏のみならず、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで3位などグローバルなヒットを記録した。

涼しげなギターのイントロに続いてUKガラージ的にスタイリッシュなサウンドにのせて歌われるのは、月曜から日曜まで毎日愛していたいというような、ロマンティックで情熱的な思いのたけである。

個人的にはほとんど毎日、渋谷に通っていた真夏によく聴いていた曲として強く印象に残っているし、当時の気分を思い起こさせてもくれる日常のサウンドトラック的な楽曲でもあった。

17. SPECIALZ/King Gnu

King Gnuがテレビアニメ「呪術廻戦 渋谷事変」のオープニングテーマ曲としてリリースした楽曲で、Billboard Japan Hot 100で最高2位、バンドにとって過去最速となるストリーミング累計再生回数1億回を達成した。

暗澹とした世界観とミクスチャーロック的なサウンドが特徴で、エモーショナルな王道J-POP的な楽曲とはまた違ったKing Gnuの魅力が堪能できる楽曲となっている。

16. vampire/Olivia Rodrigo

オリヴィア・ロドリゴの2作目のアルバム「GUTS」からの先行シングルとしてリリースされ、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど様々な国々のシングルチャートで1位に輝いた。「第66回グラミー賞」ではレコード・オブ・ジ・イヤー、ソング・オブ・ジ・イヤーなどにノミネートされている。

2021に「drivers license」「good 4 u」やデビューアルバム「SOUR」が大ヒットすると共に高評価もされて、一躍ポップセンセーション化したオリヴィア・ロドリゴだが約2年ぶりの新作も素晴らしく、すっかりトップアーティストの仲間入りを果たした印象である。

そして、これはまたしても失恋ソングに分類されるわけだが、恋愛的に酷い仕打ちをしてきたと思われるおそらく年上の男性のことを「Vampire」すなわち「吸血鬼」にたとえ、辛辣に批判した内容となっている。

これについては有名人の宿命としてゴシップ的な詮索もされたりはしているのだが、そのような状況さえも利用して、楽曲それ自体の良さを広めているようにも感じられるところも含め、きわめて現在的で素晴らしいのである。

15. Not Strong Enough/boygenius

それぞれがソロアーティストとして活動する3人のシンガーソングライター、Julian Baker、Lucy Dacus、Phobe Bridgeによって結成されたユニットが、そのネーミングそのものが男性優位的な社会に対してのレジスタンスになっているboygeniusである。

最初のEPをリリースしたのはもうすでに5年前のことになるのだが、今回ついに満を持してアルバム「the record」をリリースするなど活動を本格化させたのだが、その成果がもう本当に最高すぎる。全体的にクオリティーが高いアルバム収録曲の中でも白眉の1曲といえるのがこの「Not Strong Enough」であり、アメリカの良質なフォークロック、カントリーロック、インディーロックなどの特に良いところを継承すると共に、アティテュード的にはアップデートしているようなところもとても良い。

14. A&W/Lana Del Rey

ラナ・デル・レイの9作目のアルバム「Did You Know That There’s a Tunnel Under Ocean Blvd」から先行シングルとしてリリースされ、それほどヒットはしていないのだが、批評家などからの評価はやたらと高く、Pitchfork、NME、The Guardianといったアメリカやイギリスのメディアによって年間ベストソングの1位に選ばれたり、「第66回グラミー賞」においてはソング・オブ・ジ・イヤーにノミネートされたりもしている。

約7分間におよぶこの楽曲はラナ・デル・レイらしいノスタルジックなトーンを基調にフォークロック的なバラードとしてはじまるが、途中からトラップ的なビートが入ってきたりとエクスペリメンタルでもあるのが特徴である。

13. Boy’s a liar, Pt. 2/PinkPantheress & Ice Spice

ピンク・パンサレスとアイス・スパイスとのコラボレーション曲で、全米シングルチャートで最高3位を記録した。

元々はピンク・パンサレスがソロアーティストとして2022年にリリースした「Boy’s a liar」があり、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。

そして、このコラボレーションはアイス・スパイスがピンク・パンサレスのInstagramアカウントをフォローしたことがきかっけで実現したという。ピンク・パンサレスはロンドン、アイス・スパイスはニューヨークの出身で共にX世代、SNSをきっかけにブレイクしたところなどが共通している。

プロデューサーはムラ・マサで、トレンドであるジャージークラブを取り入れ、ポップでキャッチーな上にテンポがたまらなく、曲が短いところもとても良い。男の子は嘘つきというタイトルがあらわしているような、ガールズトーク的な内容も最高である。

12. Queencard/(G)I-DLE

韓国のポップグループ、(G)I-DLE(ジー・アイドゥル)の6作目のEP「I feel」の1曲目に収録された楽曲である。

結成は2018年とまあまあ長くやっていて、これまでに紆余曲折があったりもしたのだが、ここにきて過去最高の初動売上枚数を記録したり、韓国の配信サイトすべてにおいて1位に輝いたりもしている。

本当の美しさは自分自身を愛することから生まれる、というようなセルフエンパワメント的なメッセージ性はこのグループの特徴ではあるのだが、音楽的にややライトな感じにシフトしてきているところに絶妙なトレンド感が見受けられなくもない。

11. Padam Padam/Kylie Minogue

カイリー・ミノーグの16作目のアルバム「Tension」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

シンセサウンドをベースとしたキャッチーで中毒性も高めなサマーアンセムであり、ソフトにセクシーでありながら絶妙に乙女チックな感じがとても良い。

これでカイリー・ミノーグは1980年代から2020年代まで、ずっとヒット曲を出し続けていることになり、キャリア的には超ベテランに違いないのだが、いまだにポップクイーンというよりはプリンセスと呼びたくなってしまう存在感が素晴らしい。