スウィング・アウト・シスター「ブレイクアウト」
「ブレイクアウト」はイギリスのポップユニット、スウィング・アウト・シスターが2枚目のシングルとしてリリースした楽曲で、全英シングルチャートで最高4位、全米シングルチャートで最高6位を記録した。
イギリスではリリースされた1986年、アメリカでは翌年がヒットのピークであり、少しだけタイムラグはあるわけなのだが、どちらでもヒットしたわけではある。そして、日本ではオリコン週間シングルランキングの100位以内にもランクインしていないのだが、こういったタイプの音楽を好むリスナーたちの間ではかなり人気があったということができる。
そして、女性ボーカリストと2名の男性メンバーによる3人組という編成は、後に日本で大人気となるドリカムことドリームズ・カム・トゥルーやELTことEvery Little Thingと男性メンバーが1人脱退して結果的に男女2人組になるというところまで一致している。
この曲を収録したスウィング・アウト・シスターのデビューアルバム「ベター・トゥ・トラベル」の次にリリースされたのが1989年のアルバム「カレイドスコープ・ワールド」なのだが、翌年にリリースされたフリッパーズ・ギターのアルバム「カメラ・トーク」収録の「ビッグ・バッド・ビンゴ」における「ひとりきりカレイドスコープ・ワールドで 待つのさ世界の終わり」というような歌詞にどれだけの影響をあたえたかについては定かではない。
日本での人気はひじょうに高く、1996年には織田裕二と常盤貴子が主演したTBS系のテレビドラマ「真昼の月」のテーマソングとしてリリースされたシングル「あなたにいてほしい」がオリコン週間シングルランキングで最高10位のヒットを記録したり、2024年にも東京、横浜、大阪で来日公演を行っている。
とはいえ、はじめから順風満帆だったわけではなく、マーキュリーレコードと2曲の契約を結んでいたものの最初のシングル「ブルー・ムード」は全英シングルチャートにランクインすらしなく、この曲がヒットしなければそこで終わってしまうかもしれないという状況下で制作された。
スウィング・アウト・シスターは後にデュオとなるのだが当初は3人組であり、元サーティン・レイシオのアンディ・コーネルと元マガジンのマーティン・ジャクソンにファッションデザイナーのコリーン・ドリュリーを加え、マンチェスターで結成された。
コリーヌ・ドリュリーにはファッションデザイナーを辞めて歌手を本業にしたいという願望があったうえに、当時の切迫した状況が「成功か失敗かのときが来た。迷わず前に進み、ブレイクアウトしよう」というような歌詞に影響をあたえたのかもしれない。
ミュージックビデオではコリーヌ・ドリュリーがファッションデザイナー役を演じ、メンバーの強力を得てドレスを完成されるのだが、自らがモデルとしてファッションショーでそれを披露するという内容になっている。メンバーは成功を祝ってシャンパンのボトルを開けるのだが、この曲がグループそのものを成功に導くことにもなった。