プリンスの名曲ベスト10

プリンスは1958年6月7日にアメリカはミネソタ州ミネアポリスで生まれ、1978年にアルバム「フォー・ユー」でデビュー、80年代には刺激的で革新的な音楽をかなりのハイスピードでつくり続けたうえに、ヒットもさせてしまうという驚異的な状態であった。ポップ・ミュージック史にあたえた影響ははかり知れないのだが、今回はこれは特に名曲なのではないだろうかという10曲をあげていきたい。

10. Get Off (1991)

プリンスが1990年代に入ってからリリースした2作目のアルバム「ダイアモンズ・アンド・パールズ」から最初のシングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートでは最高21位、全英シングル・チャートでは最高4位を記録した。1988年のアルバム「ラヴセクシー」に収録されていた「グラム・スラム」のリミックス・バージョンや、1990年のアルバム「グラフィティ・ブリッジ」収録の「ラヴ・マシーン」から派生した楽曲である。ヒップホップがすっかりメインストリーム化して以降の時代を思わせる、新しいファンクネスとでもいうようなものが感じられる。同じアルバムからは「クリーム」が全米シングル・チャートで1位に輝いていた。

9. If I Was Your Girlfriend (1987)

プリンスのアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」から2枚目のシングルとしてカットされ、全米シングル・チャートで最高67位、全英シングル・チャートでは最高20位を記録した。プリンスがボーカルのピッチを上げ、両性具有的な別人格、カミーユとしてレコーディングした曲で、もしも僕が君のガールフレンドだったら、というようなことが歌われている。この時代にして、アンチ有害な男性性(トクシック・マスキュリニティ)的なラヴソングのように聴こえなくもない。

8. I Wanna Be Your Lover (1979)

プリンスの2作目のアルバム「愛のペガサス」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高11位を記録した。ファルセットで歌われるディスコ・ポップ的なラヴソングで、初期の代表曲としても知られる。これ以降、批評家などからの評価は高いものの、全米シングル・チャートではなかなか順位が上がらないという状態がしばらく続き、1983年4月まではこの曲がプリンスにとって最もヒットした曲であった。

7. Raspberry Beret (1985)

プリンス&ザ・レヴォリューションのアルバム「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。アルバムや映画「パープル・レイン」やシングル・カット曲で大ブレイクした翌年、早くもリリースされた次のアルバムはサイケデリック色が濃いサウンドが特徴的だったが、新しいポップ感覚も感じられ、順調にヒットした。同じアルバムからシングル・カットされた「ポップ・ライフ」もとても良い。

6. Little Red Corvette (1982)

プリンスのアルバム「1999」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高6位を記録した。これがプリンスにとって、初めてのトップ10ヒットである。批評家などからの評価は高かったのだが、ロックなのかソウルなのかどっちつかずのようにも感じられる音楽性は時代を先取りすぎていたのかもしれない。MTV、シンセ・ポップ、ニュー・ウェイヴやマイケル・ジャクソン「スリラー」のヒットなどによって、時代がプリンスに追いついたのが、ちょうどこのタイミングだったような気もする。

5. Purple Rain (1984)

プリンスが大ブレイクし、ポップ・アイコン化するきっかけとなった主演映画「パープル・レイン」とそのサウンドトラックのタイトル曲である。全米シングル・チャートでは、最高2位を記録した。ユニークでニュー・ウェイヴ的でもあるダンス・ポップだけではなく、ゴスペル的なフィーリングさえ感じられるエモーショナルなバラードもプリンスにはあるということを強く印象づけた、感動的な楽曲である。

4. 1999 (1982)

プリンスの5作目のアルバム「1999」のタイトル曲にして先行シングルで、最初にリリースされた時の全米シングル・チャートでの最高位は44位だったが、「リトル・レッド・コルヴェット」のヒット後に12位まで上がった。イギリスでは1985年に再発され、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。当時は1999年の夏に世界が滅亡するなどともいわれていたのだが、それをテーマにしたパーティー・ソングでもある。

3. Sign ‘O’ the Times (1987)

プリンスのアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」のタイトル曲にして先行シングルで、全米シングル・チャートで最高3位を記録した。ミニマリスト的なシンプルなサウンドに乗せて、エイズ、ドラッグ、宇宙計画といった社会的イシューなどについて歌われた、エポックメイキングなポップ・シングルである。この頃にはプリンスが新しい音楽を発表することが、すなわちポップ・ミュージック全体の進化をあらわしているような感じもあった。

2. Kiss (1986)

プリンス&ザ・レヴォリューションのアルバム「パレード」からの先行シングルで、全米シングル・チャートで1位に輝いた。贅肉を徹底的に削ぎ落としたかのようなシンプルなサウンドであるにもかかわらず、強靭なファンクネスが息づいているという驚異的にカッコいい曲である。

1. When Doves Cry (1984)

プリンスの主演映画「パープル・レイン」のサウンドトラック・アルバムから先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで4週連続1位、この年の年間1位にも輝いた。邦題は「ビートに抱かれて」である。マルチトラック・レコーディング的な密室的でありながらポップでキャッチー、しかもベースの音が入っていないというとてもユニークなヒット曲である。