カイリー・ミノーグの名曲ベスト10

カイリー・ミノーグは1968年5月28日にオーストラリアのメルボルンで生まれ、子役として活動した後に80年代後半には出演したテレビドラマ「ネイバーズ」でブレイク、歌手デビューも果たして本国だけではなくイギリスやアメリカなどでも大ヒットを記録した。全英アルバム・チャートにおいては、1980年代から2020年代まで、すべての年代において1位を記録するというなかなかすごいことをやってのけてもいる。とはいえ、カイリー・ミノーグの真骨頂といえばシングル・ヒットの数々であろう。今回はこれは特に名曲なのではないだろうかと思える10曲をあげていきたい。

10. Confide In Me (1994)

初期にヒット曲を連発したPWLレーベルを離れ、ディコンストラクション・レコーズに移籍し、最初のアルバム「カイリー・ミノーグ」からの先行シングルで、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。ブラザーズ・イン・リズムがかかわったエレクトロニック・ミュージック的なサウンドにオリエンタルなムードも漂い、カイリーミノーグのボーカルもより妖しげである。アイドル的なポップ・シンガーを脱し、よりアダルトでシリアスな路線を模索したことが功を奏した例の1つだといえる。シングルのカップリングでは、セイント・エティエンヌ「ナッシング・キャン・ストップ・アス」とプリファブ・スプラウト「イフ・ユー・ドント・ラヴ・ミー」をカバーしていた。

9. On A Night Like This (2000)

カイリー・ミノーグの7作目のアルバム「ライト・イヤーズ」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。元々はスウェーデンのシンガー、パンドラのためにつくられ、レコーディングもされていた曲である。デコンストラクション・レコーズの後期はマニック・ストリート・プリーチャーズのメンバーによる楽曲を歌ったインディー・カイリー期もあったりもしたのだが、セールス的には低迷し、プライベートでも悲しいことがあったりもした。そして、パーロフォンに移籍し、フューチャー・ノスタルジックなダンス・ポップに振り切ることによって、ふたたびヒットが生まれるようになった。そんな時期のヒット曲である。ユーロポップ風味もあってとても良い。

8. What Do I Have To Do (1990)

ストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースによるダンス・ポップだが、絶妙に大人な雰囲気も加わってきて、とても良い感じである。全英シングル・チャートでの最高位は9位だが、アルバム「リズム・オブ・ラヴ」から「ステップ・バック・イン・ラヴ」よりも先に先行リリースされていれば、もっと売れたような気もする。邦題は「愛のメッセージ」である。

7. Slow (2003)

9作目のアルバム「ボディ・ランゲージ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで1位い輝いた。エレクトロニック・ミュージック色が強くなり、より実験的なサウンドではあるのだが、それよりも意図的に官能的なカイリー・ミノーグのボーカルがとても良い。バルセロナで撮影されたミュージック・ビデオもセクシー路線に振り切れている。

6. I Should Be So Lucky (1987)

「ラッキー・ラヴ」の邦題でも知られるカイリー・ミノーグにとって初の世界的大ヒット曲で、全英シングル・チャートで1位に輝いた。とてもラッキーで最高、というような曲ではなく、とにかくツイていないのだが、もっとラッキーでも良いのではないか、というようなことが歌われている。天真爛漫なガール・ネクスト・ドア的なイメージがこの頃はまだ強かったのだが、ここからどんどんトレンディーでセクシーになっていく過程をリアルタイムで追うことができたのは、それこそとてもラッキーだったと言わざるをえない。

5. Come Into My World (2001)

8作目のアルバム「フィーヴァー」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高8位を記録した。エレクトロニックなダンス・ポップとしてとても良く、カイリー・ミノーグのセクシーなボーカルもハマっている。私の世界にいらっしゃいというタイトルの通り、パリで撮影されたミシェル・ゴンドリー監督のミュージック・ビデオでは、カイリー・ミノーグがどんどん増殖していって、とても楽しい。

4. Better The Devil You Know (1990)

ストック・エイトキン・ウォーターマンがプロデュースしていたPWL時代でも、特に90年代初期のカイリー・ミノーグと言えば、健全なお色気が神がかっていて素晴らしいのだが、楽曲のクオリティーも高いのだからたまらないというものである。「悪魔に抱かれて」の邦題も最高なこの曲などは、その真骨頂ともいえるだろう。アルバム「リズム・オブ・ラヴ」からの先行シングルにあたり、全英シングル・チャートでは最高2位を記録した。

3. Spinning Around (2000)

カイリー・ミノーグの90年代後半は音楽的にもやや試行錯誤していた感じだが、プライベートでも悲しいことがあり、低迷した感じであった。池袋のメトロポリタンプラザにあったHMVで行われたプロモーションでもかなり元気がなく、胸が痛くなった。それだけに、パーロフォンに移籍し、この曲のヒットで本格的なカムバックを印象づけた時にはとてもうれしかった。ディスコ・クラシック的なポップ感覚をコンテンポラリーなサウンドで甦らせたようなフューチャー・ノスタルジックな音楽はずっとトレンドであり続けているような印象があるが、カイリー・ミノーグのこの辺りの曲などはとても重要なのではないかというような気もする。

2. Love At First Sight (2001)

アルバム「フィーヴァー」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。タイトルは日本語でいうところの一目惚れのことであり、その魔法的な感覚について、夢見心地でありながらもリアルでヴィヴィッドにあらわされているように思える。コンテンポラリーなポップ・ミュージックにおけるフューチャー・ノスタルジックのトレンド化においては、ダフト・パンクと共にカイリー・ミノーグがやはりとても重要なのではないだろうかというような気が、この曲を聴いたりビデオを見ていると、俄然強めになってくるのである。

1. Can’t Get You Out Of My Head (2001)

「フィーバー」のアルバムからトップ5に3曲というのはやや偏りすぎている自覚もあるのだが、やはりとても良いのだから仕方がない。「熱く胸を焦がして」というのが邦題であり、イギリスをはじめヨーロッパの多くの国や、オーストラリアなどのシングル・チャートで1位に輝いていて、全米シングル・チャートでも最高7位のヒットを記録している。中毒性のひじょうに高いエレクトロニック・サウンドにカイリー・ミノーグのセクシーなボーカル、さらには未来派なエロス全開のミュージック・ビデオなど、ポップソングとしてパーフェクトに近いクオリティーだといえる。ニュー・オーダー「ブルー・マンデー」とのマッシュアップもとても良い。カイリー・ミノーグはやはり最高である、ということに尽きる。