ダスティ・スプリングフィールドの名曲ベスト10

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ダスティ・スプリングフィールドは1939年4月16日にロンドンで生まれ、2人の兄と共に結成したザ・スプリングフィールズで活躍した後、ソロ・シンガーに転向、60年代にはティーン・ポップ、ドラマティックなバラード、ブルーアイド・ソウルなど、様々なタイプのヒット曲を世に送り出し、ポップ・ミュージック界のレジェンドと化した後、80年代にはシンセポップでカムバックも果たした。テレビ番組「レディ・ステディ・ゴー」のモータウン特集など、アメリカの良質なポップスをイギリスで広めることにも貢献したといわれる。今回はそんなダスティ・スプリングフィールドの楽曲の中から、特に名曲なのではないかと思える10曲をあげていきたい。

10. Spooky (1970)

1968年の時点ですでにレコーディングはされていたのだが、1970年のシングル「高鳴る心(原題:How Can I Be sure)」のB面に収録され、初めて日の目を見た。とはいえこのシングル自体、全英シングル・チャートでの最高位が36位とそれほど大きくヒットしたわけではなく、この次にダスティ・スプリングフィールドが歌ったシングルがトップ40にランクイン」するのは、実にこの約17年後のことであった。

A面の「高鳴る心」はヤング・ラスカルズのカバーだが、B面に収録されたこの曲も1967年にクラシックス・フォーというグループがリリースし、全米シング・チャートで最高3位のヒットを記録した曲がオリジナルである。元々はサックス奏者のマイク・シャープによるインストゥルメンタル曲だったのだが、それに歌詞をつけたバージョンにはホラー要素もあり、ハロウィンシーズンのクラシックとしても知られているようだ。ダスティ・スプリングスティーンのこのバージョンは特にヒットはしなかったものの、ひじょうに人気があり、2022年にはBPI(英国レコード産業協会)によってシルバー認定もされている。マイルドにホラー要素もあるラヴソングなのに加え、サックスも最高でとても良い感じである。

9. Some Of Your Lovin’ (1965)

1965年にシングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高8位を記録した曲である。60年代のダスティ・スプリングフィールドは様々なタイプのヒット曲を出し続け、しかもイギリスとアメリカでは別々の曲がヒットしていたりもして、なかなかすごいことになっていたようである。アメリカではビートルズなどと共に、ブリティッシュ・インヴェイジョンの一派としても見られていたようである。この曲はキャロル・キングとジェリー・ゴフィンによってつくられていて、ウォール・オブ・サウンド的でもある美しいサウンドと、ダスティ・スプリングフィールドの繊細でありながら力強いボーカルとが絶妙なマッチングを実現しているように思える。

8. I Only Want To Be With You (1963)

ダスティ・スプリングフィールドの記念すべきソロ・デビュー・シングルで、全英シングル・チャートで最高4位のヒットを記録した。「二人だけのデート」の邦題でも知られ、ベイ・シティ・ローラーズやサマンサ・フォックスのカバーバージョンもヒットした。当時、新婚であったマイク・ホーカーが、妻に対する熱い想いをテーマにつくった曲だともいわれている。ダスティ・スプリングフィールドのデビューシングルは絶対にヒットさせたいと意気込んでいたものの、それまでにレコーディングしていた何曲かにはいま一つピンときていないところに、この曲が舞い込み、ダスティ・スプリングスティーン本人もすぐに気に入ったのだという。

7. Wishin’ And Hopin’ (1963)

バート・バカラックとハル・デイヴィットによる楽曲で、ディオンヌ・ワーウィックのシングルB面としてリリースされていたものをダスティ・スプリングフィールドがカバーし、全米シングル・チャートで最高6位を記録した。イギリスではマージービーツによるカバーバージョンがヒットしたが、人気テレビ番組「レディ・ステディ・ゴー」でマージービーツとの共演で歌ったり、ダスティ・スプリングスティーンがホストを務めたモータウン特集でもマーサ&ザ・ヴァンデラスをフィーチャーして歌ったりもしたので、ダスティ・スプリングスティーンの曲としてもしっかり認知されているという。

6. Goin’ Back (1966)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンによる楽曲で、全英シングル・チャートで最高10位のヒットを記録した。イノセンスの喪失と再生という、わりと深いテーマを持った楽曲だが、ダスティ・スプリングスティーンの歌唱はこれを重くなりすぎず、内容のあるものとしてしっかり表現している。後半になるにつれ、どんどん盛り上がっていき、最後は静かに余韻を残して終わるところなどもとても良い。バーズもアルバム「名うてのバード兄弟」でカバーしている。

5. What Have I Done To Deserve This? (with Pet Shop Boys) (1987)

ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントはダスティ・スプリングフィールドの1969年のアルバム「ダスティ・イン・メンフィス」をずっとフェイヴァリットに挙げていて、わりと初期にできていたこの曲でもデュエットの相手として希望していた。しかし、当時のダスティ・スプリングフィールドはレジェンドではあるがしばらくヒット曲もなく、アメリカに移り住んでもいた。当初はオファーに対して返事もなかったのだが、しばらくするとついに共演が実現し、そのボーカルは衰えていなかった。

ペット・ショップ・ボーイズの2作目のアルバム「哀しみの天使」から先行シングルとしてリリースされたこの曲は、「とどかぬ想い」の邦題でも知られ、イギリス、アメリカにおいていずれもシングル・チャートで最高2位の大ヒットを記録した。1位を阻んだのはイギリスではリック・アストリー「ギヴ・ユー・アップ」、アメリカではエクスポゼ「シーズン・チェンジ」、ジョージ・マイケル「ファーザー・フィギュア」であった。

4. I Just Don’t Know What To Do With Myself (1964)

バート・バカラックとハル・デイヴィッドによる楽曲で、全英シングル・チャートで最高3位を記録した。恋人と別れた寂しさから立ち直れないという、ハートブレイクな名曲で、多くの人々の共感を得るに相応しいのだが、ダスティ・スプリングフィールドの弱っていながらもエモーショナルなボーカルがまたとても良い。ディオンヌ・ワーウィックやアイザック・ヘイズなど、様々なアーティストによってカバーされているが、ザ・ホワイト・ストライプスのガレージロック的なバージョンのインパクトがひじょうに強く、この曲の本質にもマッチしているように思える。

3. The Look Of Love (1967)

「ルック・オブ・ラヴ」というタイトルだと80年代の洋楽ファンはシンセポップ・バンド、ABCによる名曲を思い出してもしまうのだが、これは「恋の面影」という邦題もついたこれもまたバート・バカラックとハル・デイヴィッドによる楽曲で、映画「007/カジノロワイヤル」の主題歌としてアカデミー賞にもノミネートされた。ボサノバ的な小洒落たサウンドにアダルトなボーカルとマイルドにセクシーな内容で、モテそうなところがとても良い。

2. You Don’t Have To Say You Love Me (1966)

「この胸のときめきを」の邦題で知られる曲で、ある世代の日本人にとってはビジー・フォーがエルヴィス・プレスリーのものまねをする時に歌っていた曲というイメージも強いのだが、元々はイタリアの曲で、サンレモ音楽祭で聴いて感動して最初に英語で歌ったのは、ダスティ・スプリングフィールドであった。とにかくひじょうにドラマティックな楽曲なのだが、ダスティ・スプリングスティーンはこれをトゥーマッチにならない程度のちょうどよさで歌いこなしている。全英シングル・チャートでは1位に輝き、ダスティ・スプリングフィールドにとって最大のヒット曲となっている。

1. Son Of A Preacher Man (1968)

ダスティ・スプリングスティーンのアルバム「ダスティ・イン・メンフィス」は歴代ベスト・アルバム的なリストでもよくあげられがちな歴史的名盤の1つとしての評価がいまや定着しているわけだが、当時は全英アルバム・チャートでランキング圏外、全米アルバム・チャートでは最高99位と驚くほど売れていない。それでも、先行シングルとしてリリースされたこのシングルは、全英シングル・チャートで最高9位を記録している。元々はアレサ・フランクリンに提供されたが、イメージに合わないとかでダスティ・スプリングフィールドが歌うことになったようだ。アメリカでアトランティック・レコードと契約し、R&Bのメッカでもあるテネシー州メンフィスでレコーディングされただけあって、それまでのダスティ・スプリングフィールドのレコードと比べても、ひじょうにR&B色が濃くなっていてとても良い。1994年にクエンティン・タランティーノ監督の映画「パルプ・フィクション」のサウンドトラックでも使われ、新たなファンを獲得することにもなったが、サウンドトラックアルバムのヒットはこの曲によるところも大きいといわれているようだ。「ダスティ・イン・メンフィス」には他にも良い曲がたくさん入っているのだが、いろいろなタイプを取り上げたかったこともあり、ここではこの1曲に代表させた次第である。

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